第6話 種族
「なぁ、この世界について教えてくれ。105もの魔王城があって人族は無事なのか?」
「人族? そりゃもう、うじゃうじゃいるわよ。特にヒューマンはね」
ヒューマン……おそらく人間のことだろう。
アイリーンに聞くと人族には大きく分けてヒューマン・エルフ・ドワーフ・ホビットの四種族がこの世界では共存しているらしい。
しかもヒューマンは他の三種族と違って寿命が短い分、繁殖力が高いため人族の50%を担っているらしい。
「うじゃうじゃって……人族が増え過ぎなのか?」
「うん、だからダンジョンには多くの冒険者を狩ってもらわなければならないの。人が人を殺すと犯罪になるけど魔獣やトラップで死ねば、ただの事故だからね」
「だから、俺を強くするのか?」
「まぁ、本当のところは違うんだけどね。高難易度ダンジョンの周りには自然と人が集うの。人が集えば町ができ発展し大都市となる。アタシの今の職業は高難易度ダンジョンを見つけて町作りの礎を整えることなの」
なるほど、アイリーンが俺に協力的なのは高難易度ダンジョンを探すより適当なダンジョンを見つけ、そこを育てることで高難易度ダンジョンにすることにあるわけか。
探すより育てたほうが早い……利には適っているよな。
ま、そういうことなら俺はアイリーンの言葉に甘えよう。
「本当はアタシ、エルフに生まれたかったのにまたヒューマンなんだよね。転生ガチャでハズレよ。あーあ……」
転生ガチャって……そういやアイリーンは前世がダンジョンでその前は人間とか言ってたし転生がごくごく当たり前な世界なのかも知れない。
「やっぱりアレか? ヒューマンは全てが平均的で他の三種族は何かに秀でているとか?」
「うん、そうよ。エルフは素早いし視力もめちゃくちゃ良いの。打たれ弱いのが欠点だけど当たらなければどうということはないしね」
ふむ、それぞれの種族の特性を知り狩ることを俺は覚えなければならないみたいだ。
「ドワーフは?」
「ドワーフの長所は筋力があり打たれ強いところかな? 前衛のタンクを務めることが多いわね。中には後衛特化型のドワーフもいるらしいけれど」
魔術師系のドワーフってことか?
ま、人には得手不得手がある。
魔法が得意なドワーフなら自ずと後衛になることも有りうるか。
「短所は? やはり動きが遅いとかか?」
「あら、よく知っているわね。うん、そうよ」
「じゃ、ホビットは? 小人族といえばヒューマンの下位互換でしかないような気がするんだが……」
「ホビットを甘く見ては駄目よ。トラップを見分ける危機管理能力の高さは最早、異常よ。アタシもダンジョンだった時、どれだけ苦汁をなめさせられたことか……」
なるほど、弱い種族なりに特筆すべき点があるということか。
これはパーティーで攻めてこられたら苦戦しそうだな。
「ヒューマンには何か良い点は無いのか?」
「ヒューマン? 無い無い。どれも普通よ普通。でも、個体ごとに大きく差が開くのもヒューマンに多いわね。中にはエルフを超えるほどの素早さを持つ個体もいれば、ドワーフと力比べで勝ってしまう個体もいるし……」
ふむ、種族としては取るに足らなくても個として見れば最も判断に困る相手ってことになる。
アイリーンのおかげでさらに賢くなった気がする。
「よし、いい感じね。できれば3階層も作ってみましょうか。そこにボス部屋を設置して……」
俺はアイリーンの言う通りにダンジョンの構築に取りかかる。
通路と部屋はほぼ自動だし待っている間に新しいトラップの開発だな。
俺はアイテム欄を見て新しいトラップの開発に取り組んだ。
そして、半年が経つ。
「さて……と。うんうん、以前に比べてかなり難しいダンジョンになったわね」
「ありがとう。これもアイリーンのおかげだよ」
「ふふん、感謝しなさい。それじゃ、アタシの役目はこれでおしまいね」
「行くのか?」
「安心なさい。街が発展するまでは付近にいるから。まずは冒険者を呼び込まないとね。ダン、冒険者が多く来るようになったら躊躇わず狩ること。すぐに突破されて滅びても後は知らないわよ」
「ああ、分かってる。俺は魔王城になってみせるさ」
「うん、期待している」
そう言うとアイリーンはダンジョンを出ていった。
それから暫くして二人組の冒険者がやって来た。
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