第5話 拡張

 暫く待つとダンジョン入口から大量の巨大蜘蛛が中へ入ってくる。

 うげげげ、すまん!

 俺、蜘蛛とか百足とかゲテモノ系は苦手なんだ。

 でも、こいつらを倒せば少しでも経験値稼ぎになるようだし……。


「ジャイアントスパイダーが侵入。配置済みモンスターで撃破させます」

 

「頼む! トゲ床設置! 落下トゲも設置! うひゃぁ、数が多すぎる。振り子鉄球!」


 トラップには一度使えば消滅してしまうものもあれば、相手に破壊されるまでずっと残っているトラップもある。

 前者の例で言えば落下トゲ、後者ではトゲ床や振り子鉄球も破壊されない限り敵を狩り続ける。

 しかし、敵にもHPというものがあるようで一撃必殺できるものは今のところ落下トゲだけだ。

 一度しか使えないもののほうが威力が強いのか検証してみるも、どうもそうではないらしい。

 振り子鉄球で身体をバラバラにされる蜘蛛も入れば直撃しても耐える個体もある。

 

「スライムが撃破されました。自動補充として肉を1つ消費します」


 ダンジョン内に設置していたスライムも戦ってくれているようだ。

 巨大蜘蛛は冒険者のようにトラップを破壊して進むなんて頭脳は持たないようだし、鉄もかなり使ってしまった。

 鉄は自動補充されるが一旦はここまでにして、スライムと蜘蛛の戦闘を見てみる。

 うーん、地味だな。

 スライムは蜘蛛を体内に取り込んで消化するだけ。

 しかも、相手が巨大なため1体を消化しきるまで何もできない。

 その間に蜘蛛は数の暴力でスライムを食っていく。

 弱肉強食の世界が俺の中で構築されているようで妙な気分だ。

 

「スライムが撃破されました。自動補充として肉を1つ消費します」


 倒された蜘蛛はダンジョンが自動で消化し肉に変える。

 蜘蛛には骨が無いからスケルトンスパイダーとかにさせて使役できないようだ。

 ま、肉を大量にゲットできるのは助かるものの経験値は大したことがない。

 巨大蜘蛛を駆逐するまでまだまだ時間はかかるし長い目で見ていよう。

 

「どう? 少しは足しになったでしょ?」


 暫くするとアイリーンが戻ってきた。


「おーおーやってるねぇ。アタシも少し手伝ってあげる!」


 アイリーンが蜘蛛を倒しても俺の経験値になるようだ。

 もしかして、ダンジョン内で倒された者は俺の経験値になるのか?


「ふぅ、少しはスッキリしたかな。また、部屋に行かせてもらうね」


 まるで自分の家のようにトラップを難なく回避し最奥の部屋に入ってきた。


「ありがとう。この戦闘だけでも色んなことが分かったよ」


「そう? それは良かったわ。ダンジョン拡張の進捗状況は?」


「なかなか複雑な迷路になったぞ。しかし、最奥の部屋が入口から直進した先にあるのは問題だな」


「それじゃ、次は部屋を作りましょ。最も深い場所に出来た部屋がダンジョンの最奥になるの」


「なるほど。ジャイアントワームで道を広げる感じにしていけば良いのか?」


「うん、簡単でしょ。新しい最奥部屋が出来たら2階層も作って……その繰り返しでダンジョンを広げていくの。そして、最終的には……」


「魔王城を作るってか?」


「あはは、大丈夫だって。ダンならなれるよ、魔王城に。だって、この世界には既に105の魔王城があるんだから」


「いや、多すぎない!? それって、まさか前世が人間の?」


「それはどうなんだろ? 最北の大陸、リリセルフィのレジェンド級魔王城は前世が人間だけど、他は知らないわ。あ、レジェンド級ってのは魔王城のランクね。最底辺がカッパーなの。そこから、ブロンズ→アイアン→シルバー→ゴールド→プラチナ→ミスリル→オリハルコン→アダマント→レジェンドね。因みにダンはまだカッパー級でさえ無い唯のダンジョンだから」


 魔王城にもそんなに種類があるのか……ってか、この世界って既に魔界のような状態になってるとか……?

 俺はジャイアントワームをさらに10匹増やしマップを拡張させていく。

 そして、待っている間アイリーンとこの世界について話をした。





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