第6話 無敵のぶべちょぶぶらちょ
いい加減もう限界だ。こんな鳴き声をこれ以上聞き続けたら、頭がおかしくなりそうだ。
だから、ぶべちょぶぶらちょに対して、いろいろ試してみることにした。
まず、ライターの火でコイツを炙ってみる。
「ぶべべ、べべべぶぶ、ぶぶぶぶべべ!」
焦げている様子もやけどしている様子もない。相変わらず元気に鳴き続けている。むしろ、さっきより鳴き声が大きくなったよいおな気さえする。
全然効いていない……。じゃあ、効くとは思わないが、これならどうだ。
コップに水を入れ、やつにかける。
「ぶべべ、ぶ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ! ベベベベベベベベベベベベ!」
やっぱり効かなかった。逆に、喜んでいるかんじがする……。
これなら、これならどうだ!?
トンカチを持ってきて、それでコイツをた叩く。
「ぶぶぶぶぶぶぶぶべべべ! ぶぶぶベベベベベベベベ! ぶぶぶベベぶベベぶぶベベベベベベぶぶベベベベぶベベぶベベぶベベ!」
効いているかんじがしない。もっと強く叩く。
「ぶべべぶべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶべべべ! ぶぶぶベベベベベベぶベベぶベベぶぶベベ!」
思いっきり叩く。
「ぶぶぶぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶべべべぶぶぶべべべべべべべべべべべ! ぶぶベベベベぶぶベベぶベベベベベベベベベベベベぶベベベベぶベベ!」
だめだ。効かない。鳴くのを止めない。
コイツに殴る蹴る叩くなどの攻撃は効かないのか?
なら、最終手段だ。
「恨むなよ……うるさく鳴くおまえが悪いんだ……」
キッチンから包丁を持ってくる。それで、ヤツを真上からぶっさした。
「ぶぶぶぶべべべべべべぶぶべべぶぶぶぶぶぶぶぶべべべべべべぶぶぶぶぶぶぶぶ! ぶぶぶぶぶぶベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベ!」
まさかこれも効いて……いない?
包丁を抜く。すると、なんと刺したことでできた傷が一瞬で塞がっていた。
「う、うわあああ!」
恐怖でみっともなく尻餅をついてしまう。
な、なんだよ、こいつは。
コイツハァッ!
ヤツを刺す、
「ぶぶべべぶぶぶぶぶぶぶぶ! ぶぶぶぶぶぶぶ!」
刺す
「ぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶべべべぶ! ベベベベベベベベベベぶぶ!」
思いっきり刺す、
「ぶぶぶぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶべべべ! ベベベベベベベベぶぶぶ!」
刺して刺して刺しまくる。
「ぶぶぶぶぶ! ぶぶぶぶ! べべべべべべ! ぶぶぶぶぶぶぶぶ! ぶぶぶぶべべべ! ぶぶぶぶぶべべべぶぶぶぶべべべべべ! べぶぶぶぶべべべぶぶべべべ! ぶぶぶぶべべべべべべ! ぶぶぶぶベベベベベベ! ぶベベぶベベぶベベぶ! ベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベ!」
き、か、な、い…………。
「はあ、はあ、はあ……」
疲れた……。くそ、こいつには刃物とかも通用しないのか?
「ぶ、ぶぶ、ぶぶぶぶ、べ、べべべべべべ、ぶぶぶぶぶベベぶベベぶぶベベベベベベぶベベベベベベベベぶぶぶぶぶぶぶベベベベぶベベベベベベベベぶベベベベベベベベベベベベベベ」
あいつは嘲笑しているような目でおれを見ていた。
ふと、思いつく。
そうだ、目はどうだ?
四つの目のうち、左上の目を躊躇なく突き刺した。どうだ?
「ぶべべべべべべべべべべべべべべ! ベベベベベベベベベベベベ! ベベベベベベベベベベベベベベベベ!」
鳴くのを止めない。それどころか、鳴き声が大きくなっている。
そんな……うそだろ?
包丁を抜いた。すると、傷ついていた目がみるみるうちに再生して元通りになる。
「う、うあああああ、ああああああ!」
怖い、怖い。
発狂しそうになりながら、他の三つの目もぶっ刺す。だが、すぐに再生する。
刺す、刺す、何度も刺す。間髪容れずに刺す。だが、すぐに再生する。
「ぶぶぶぶべべべぶぶぶぶべべべ! ぶぶぶぶぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ! ぶぶべべべべべべぶぶぶぶぶぶぶぶ! ぶぶぶぶぶぶぶぶべべべぶぶぶぶべべべべべべ! ぶぶぶベベベベベベベベベベベベ! ぶぶぶベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベベ!」
刺す度に、あいつの鳴き声は大きくなる。
手に力が入らなくなり、包丁を床に落とした。少し床が傷ついてしまうが、気にならなかった。気にすることができる精神状態じゃなかった。
コイツは、なんなんだ?
無敵なのか?
コイツをどうにかする方法はないのか?
「ぶぶぶぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶべべべべべべべべべべべべぶぶぶぶぶぶぶぶべべぶぶぶぶべべ! ぶぶぶベベベベベベベベベベぶぶぶベベぶぶベベぶベベ!」
「うるせえんだよっ! いい加減にしろっ! どっか行けよっ!」
「ぶぶぶぶぶぶぶぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶべべべべべべぶぶぶぶべべべぶぶぶぶべべべぶぶぶぶぶぶぶぶべべべぶぶぶぶべべべべべべべべべべべべ! ぶぶぶベベベベベベベベぶぶぶぶベベぶベベベベベベベベぶベベベベぶベベぶ」
おれを愚かだと笑っているような気がする。
絶望が背後から忍び寄ってくる感覚があった。おれは布団を頭までかぶって、耳を塞いだ。
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