last scene:我はランラク朝将軍
〇日本庭園、夜
月光が照らすなかで相対する依満と麟太郎。互いに得物はサムライマルのみ。
ランラク朝とサムライジャー、決着の時が近づいている。
麟太郎「……ああ、前にもこんなことがあったな。私が、父の仇討ちをと躍起になっていた時、あなたがこうして、止めてくれた」
依満「あの時からお前は変わらないな。勝手に突っ走って、勝手に抱え込んで、全部ひとりでなんとかしようとする」
依満、ホウオウディスクをサムライマルにセットし、正眼に構える。
依満「約束しただろ。お前が道を外れたら、斬ってでも止めるって」
麟太郎、モノノケの姿に変身する。
麟太郎「来い、サムライレッド!」
依満と麟太郎のサムライマルが互いに鎬を削る。
何度かの拮抗の果てに、依満のサムライマルが麟太郎の心臓を貫く。
依満「約束は守ったぞ、麟太郎」
麟太郎「……大義である。火神依満、サムライレッド」
麟太郎の身体が炎に包まれ、消滅する。
にわかに雲が広がり、雨が降り始める。
依満「……麟太郎、お前があんな暗くて寂しい場所に行く必要は無いんだ。道を外れるのは、俺だけでいい」
滝のような雨がサムライマルについた血を洗い流す。
依満「サムライジャーのままじゃ、此岸にいたままじゃ世界を救えない。人が死ぬ限り、人が憎み嫉み妬む限りモノノケが生まれ続けるなら、誰かが彼岸でモノノケを殺し続けなければならない」
サムライマルを握る依満の手が徐々にモノノケへと変身していく。
依満「俺が最後のランラク朝将軍になって、この世界を守る。サムライジャーがいらない世界を作る。何十年、何百年かかってもいい。末武が、金時が、菜綱が、貞光が、普通の人として生きられる世界を」
雷光がモノノケと化した依満を照らす。
依満「我は、ランラク朝第311代将軍――」
雷鳴が夜の闇に鳴り響く。
〈了〉
カムバックヒーロー 黒井咲夜 @kuroisakuya
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