2017.5.25 狐禅寺玻璃クランクイン/クランクアップ

 3日間でほぼすべてのアクションシーンを撮るという地獄のようなスケジューリングでクタクタになっていた俺に、早朝集合はあまりにも酷すぎる。

紫蘇野が出れない分当初のスケジュールを調整しないといけないとはいえ、何をどうやったらこんな殺人的スケジュールが思いつくんだ?帝映ていえいのP達は俺らがまだピチピチの20代だと思っているんだろうか。


「クッソ、俺の身体能力を過信しすぎなんだよ阪本監督……俺だけ素面アクション倍ぐらいあったぞ……」


 まあできないわけじゃないが、さすがにこうも連日だと体に堪える。愛する妻・りんちゃんに湿布を貼って慰めてもらってなかったらとっくに撮影降りてたと思う。ありがとうりんちゃん。愛してる。

 憎しみを覚えつつ集合場所のスタジオに到着すると、既に央士がスタジオ入り口に立っていた。


「おはよう、央士。入らないのか?」


 挨拶をするが返事がない。寝ぼけているのか、ぼーっと開閉する自動ドアを見つめている。


(朝早いし、他の仕事もあるから疲れてんのかね)


「殿!お早いご到着ですね!」


 様子を見てたら後ろから来たヤスがいきなり金時モードのデカい声を出してビビった。まだ衣装すら着てないってのにもう役に入ってやがる。


「……ああ、行こうか、金時」


 対する央士も既に依満モードだ。朝から気合い入ってんなコイツら……


 *****


 今日は有明で一日ロケ。夜のシーンも撮るので長丁場だ。


「シュツライ役狐禅寺こぜんじ玻璃はりさん入りまーす」


 狐禅寺玻璃。元セクシー女優で『サムライジャー』当時新人だった俺たちを引っ張ってくれたベテラン女優。今は芸能事務所「MIRAI creative entertainment」社長兼タレントというスーパーウーマンだ。

年齢?……命が惜しいのでノーコメント。


「お久しぶりね白蓮君。今日はよろしくね」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


玻璃さんのスケジュールの都合でシュツライの登場シーンを全て今日一日で撮らなくてはいけない。絶対に失敗できないな……

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