第2話「異能」
「ま、まぁいいですけど」
俺はアヤネの手を取る。
「やったー! てかキミも友達いないんだね」
アヤネは二ヘラ笑う。
余計な一言すぎる。まぁいいか。
「タメ口でいいよー。科学マスターと呼べ〜」
なんかどっかで聞いたことのあるフレーズだな。
「本題に入ろうか。キミの身に起きてる現象を私はアウェイクニングと呼んでいる」
アヤネは指をくるくる回しながら
「今回ので確信した。異能の発現条件が。異能の発動条件は『強い思念を残して死に至ること』だね。キミの場合だと少年を助けたいっていう強い想いを残して死んだ。って感じ。異能は後天性のものだね」
「なるほど。アヤネさんはどうやって異能を手に入れたの?」
「その前にさ名前教えてくれないかな? 正式名称で呼びたいからさ」
本名のこと正式名称って呼んでる人初めて見た。
「カケルです」
「いい名前だね。空飛べそう」
「どこがっ?」
「なんとなく」
この人真面目なのかふざけてるのかわかんないな。
「あー。で。私が能力を手に入れた経緯ね。それがさ。わかんないんだよ。死にかけた記憶もないしね」
「でも私思うんだ。このアウェイクニング現象の裏には誰かがいるんじゃないかって。私の異能を手に入れた経緯が鍵になってくると思うのだけど……」
アヤネさんも俺と同じ異能の手に入れ方をしたと思ってたけどなんだか裏がありそう。
「じゃあ例えば。実験施設で度重なる人体実験の末手に入れたとか?」
アヤネは指をパチンと弾く
「その可能性もあるよね。ちょっとフィクション味を感じるけど」
あの黒い化け物についても気になる。あれもアウェイクニングに関わってるものなのだろうか?
「俺が戦ったあの黒い怪物について何か知ってる?」
「あの怪物ね。私も調べ途中なんだけど急に現れて人間を襲うんだよね。でも決して人間を食べたりしない。何が目的なのだろうか」
アヤネは続けて
「核となる部分を破壊すると人に戻る。それくらいしかわからない」
アヤネはしばらく考えた後ハッとして
「じゃあさ試しに私と戦ってみる? もうそろ身体治ってると思うし」
「異能発言の反動で半日くらい寝てたからねキミ。多分大丈夫だと思う」
そんなこんなで深夜の公園にやってきた。でもアヤネさんってココロに関する能力だからどう戦うのだろう? ビームとか出すのかな?
アヤネはギターケースを地面にそっとおき、ロックを解除する。中から出てきたのは木刀。なるほど。そういえば剣道やってたって言ってたし。
「手加減はする。まぁ。楽しくやろう」
アヤネは木刀を構える。
「じゃあ行くよ!」
アヤネは俺に向かって走って距離を詰めてくる。フィジカルはこっちの方が上なのかな?
俺は身体のにイナズマを巡らせる。バチバチとイナズマは音を立て、帯電していく。
地面を強く蹴る。砂は宙に舞う。拳を振りかぶり距離を詰める。
間合いに入った。
アヤネは足に力を込め。後ろへステップを踏み、拳をかわす。
再び前方向へ跳び拳を振るう。
アヤネの口が少し動く。
胴体を捉えた拳がアヤネの胸部に当たる瞬間、アヤネの姿は消える。
何があった? 何処から来る?
「後ろにも目をつけることをおすすめ」
背中に衝撃が走る。斬られたか。
俺は左足を軸に回し蹴りを放つ。
放った蹴りは空を切る。
なっ? 当たってない!?
アヤネは既に空中にいた。アヤネは木刀を大きく振りかぶる。
予備動作の隙を狙いハイキックをすかさず放つ。
足と木刀が接触する。
体を半回転させ二度目の蹴りを放つ。
その蹴りはあっけなく弾かれる。
アヤネは隙を逃さず首を狙う。
首に木刀が当たる瞬間に木刀は静止する。
「はい。死んだ」
正直舐めてた。ココロを操る異能だからフィジカルはそこまでだと思ってた。怪物と長い間戦ってきた経験の力。圧倒的な実力差を感じた。
地面に横たわる俺にアヤネは手を差し伸べる。
「いい動きだった。まさか蹴りが2回攻撃とはね。一杯食わされたよ」
「ありがとうアヤネさん。あの身のこなしと。瞬間移動。すごかった」
「あれね。瞬間移動むずいんだよ。下手すると自分の脳が焼き切れるからさ。厳密には瞬間移動じゃないんだけどね」
脳が焼き切れるか。異能を使うって簡単なことじゃないんだ。
アヤネは人差し指を立てて
「んー。カケルくんフィジカルはいいんだけどそれに異能を組み合わせられるといいね。例えば……最初に体に電気を溜めてたじゃん。電気を圧縮して放つとか。いいと思う」
アヤネは飲み終わったジュースの空き缶をベンチに置いて
「指先に電気を溜めて放つイメージでやってみて。この間目掛けて」
やってみるか。イナズマの操作
「異能の根源はココロだ。気持ちを乗せるといいよ。例えば技名を口に出すとか」
「わかった」
俺は指を銃を模した形に動かし指に電気を流し始める。
深緑のイナズマはバチバチと音を立てながら光を放つ。その光が最高潮を迎えた時。弾丸のように打ち出す。
「インパルス」
左手を右手の下に添え、反動に耐えうる形をとる。
掛け声とともに人差し指から放たれたイナズマは空気を切り裂き閃光を放ちながら恐ろしいスピードで艦に向かっていく。
イナズマは缶の中心を捉えるが、途中で発散し、消えてしまう。
イナズマのコントロールが思ったより難しい。
アヤネはメガネをかちゃっと押し上げて
「いい感じだね! あとは出力の設定だけだね。インパルス。いいネーミングだ」
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