花の間に

第1話

摺足で急ぐ神々明易し

過ちて花の間におり梅雨来たる

梅雨深し馬のごとくに頭を垂れて

オフィーリアならば運ばれ梅雨の蝶

夏蝶に撒かれ誰でもない誰か

薔薇にほふ何という重さ

驟雨遍く橋脚を打つ　海へ

虹おそろし　いることいないこと

夕虹や地球はそこで深く裂け

山法師落ちゆく鳥の羽搏かず

分裂はもうしない　白薔薇になる

天道虫放たれ人は瓦礫積む

黒南風やその後を生きるその後の

日常の食器生き継ぐ南風

草いきれ額を狙う石が無い

終幕は楽しと唄い木下闇

日盛りを斜交いに切る薊花

夏薊活けてこの世の部屋暗し

薄月のあらぬ所に夏薊

十薬に夜を教えているところ