第2話 歌姫の学校に行く途中
久しぶりに見た外は景色が違っていた。前は緑色だった葉っぱが色づいて黄色や赤色になっていて綺麗だ。私は葉っぱの色を見て、秋になったことを実感した。
「駅に向かうぞ」
「うん」
私達は学校に行くには電車を使っている。その為、今は駅に向かっている。のだが……。なぜか視線を感じる。
私はチラッと、周りを見た。
見てみると、ご近所さんが久しぶりに私の姿を見ていてびっくりしていた。その理由はなぜか。答えは簡単だ。
私が引き籠もりだったから。
そのせいで全く外に出ていない(深夜にコンビニに行ったりはしていたが)為、全く顔を合わせたことがなかった為、驚いている。
なんか、心配かけた気がして悪く思えるよ……。
私は良心にチクチクと針が刺さったような感覚がした。
◇◇◇
駅に行き、電車に揺られること五十分。
私達はようやく、学校のある駅に到着した。すぐさま私達は駅を出て、学校を目指す。
周りを見てみると、私達と同じ制服を着ている人達がここら辺でチラホラ見かける。
あの人達も私達と同じ一年生なのかな?
ある方向を見ると、私達と同じ制服を着て、同じくらいの背丈の子がいた。
その子は綺麗な茶色い髪をポニーテールにしていて、赤いリボンで髪を留めていて、イヤホンを付けていたので何か聞いているのがわかった。
何を聞いているのかな?
私はその子が気になった。……けど、話しかけなかった。
なぜかって?私に言わせるの?わかってるでしょ⁇だって、それは陰キャだからだよ‼︎言わせないでよ。……悲しいんだから。……う、涙が。
私は俯いて、出てきた涙を拭う。そんな時、背中に何かが当たってバランスを崩した。
待って。待って待って⁉︎
私は手を地面に着こうとしたが伸ばしたが、このままだと間に合わず、顔から顔面衝突しそうだ。……私は覚悟を決めた。
目をぎゅっと閉じて、重力に私は身を任せることにした。
そんな時、ぎゅっと手首が握りしめられて、私は顔面から地面に転ばなかった。
あれ?
私は体勢を立て直して、手首を掴んだ人を見ると深緑の髪をショートカットにして、私達と同じ制服を着た男の……いや、女の先輩だった(胸元に黄色いリボンをしているのは二年の人だから)。よく見ると、可愛らしい顔立ちをしていた。
「ごめんね。大丈夫だった?」
先輩は私と背丈を合わせるようにしゃがんで聞いてきた。
「あ、は、は、ひゃい。大丈夫でしゅ」
私の陰キャと長年の家族以外の他の人と喋っていない効果が発動して、二回も噛んだ。それも二回も。
恥ずかしさより、口の中の痛さが私の中では今は、勝った。
痛い……。
私は口を押さえた。
「はは。君、面白いね」
先輩は私が二回も噛んだのが面白かったのか笑ている。
「はぁ。
若葉が夕美先輩の肩に手を置いて、尋ねた。
夕美先輩はクルッと後ろを向いた。
「あれ?若っちいたの?」
「いましたよ。てか、本当に忘れていたんですか?」
「さぁ、どうでしょう?」
夕美先輩は若葉を
「で、若っち何でここに居るの?別に居なくてもいいでしょ?」
今更?と思うような質問を若葉に聞いた。
「それは、春が俺の妹だからですよ」
私の方を指差しして言った。
「へ〜。君、春って言うんだ。じゃあ、春っちか。で、あたしは今、若っちにこんな綺麗な妹がいるなんて知らなかったんだけど、何で?」
綺麗?誰のこと⁇
私は誰のことかわからなかった。
「あれ?これわかっていない系かな……?」
夕美先輩はぼそっと何かを言った。
独り言?
そう思っていると、夕美先輩が思い出したと言わんばかりにパンッと手を鳴らす。
「あ、そういえば、あたしの紹介してよ。若っち」
夕美先輩は手を合わせて、お願いポーズをして若葉に頼んだ。
「え、そのぐらいしてくださいよ」
「え〜。めんどくさいもん」
夕美先輩はぷく〜っと頬を膨らませて言った。
「自己紹介をめんどくさいとか……。はぁ。春、この人は先輩の
あ、やっぱり、若葉は頼まれたことはするんだね。
私はそこが若葉の優しいところだとも思っている。
「紹介、ありがとう。あたしこそが音楽部の部長の浅野夕美だよ。よろしくね」
バチンッと効果音のつきそうなウインクをバッチリ夕美先輩は決めた。
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
私はぺこりと頭を下げた。
「うん。いい子だね。じゃあ、あたしと学校に行こうか」
夕美先輩は笑顔で言った。
私は夕美先輩に誘われたこと、喋れる人ができたことが嬉しく思えた。
「はい」
「あの、夕美先輩俺を忘れないでくださいよ」
「あ……」
「春も忘れてたのかよ……」
若葉は呆れつつも私達と一緒に学校へ向かう。
学校に行くのは悪くないかもしれない。
私は少しそう思った。
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