陰キャの引き籠もり歌姫の学校生活
水見
第一章 秋での第一歩
第1話 歌姫の一歩
とある家の暗い部屋。その部屋は紙やら色々なものが、床や机に散乱していて、足の踏み場も無いほどの散らかりぶり。窓はあるがカーテンに遮られ、光が部屋に入ってこれない。
そんな散らかり、光も入ってこない部屋に紙が散乱している机に頬当てて、寝ている一人の少女がいる。綺麗な銀色のした髪は腰まであり、目を閉じていて今はわからないが、ぱっちりとしていて綺麗な青がかった銀の瞳をしている。そんなこの部屋の主、
今日は九月十日の月曜日の八時。普通なら、もうとっくに学校に向かう時間だ。そう。普通なら……。
「う、うぅん」
春はうっすらと目を開け、部屋を見渡し壁にかけてある、時計を見て時間を確認する。
「……八時。って言うことは朝、か」
春はそう言って立ち上がる。
春の目の下には大丈夫かっと思うほどのクマができていて眠そうにしている。
春は唯一、散らかっていないデスクに近づき椅子に座る。デスクに置いてあるパソコンを立ち上げ、あるサイトを開く。
そのサイトは世界的人気を誇る動画サイトのニャーチューブ。そのトップ画面からVtuberの今、人気の歌姫の『サクラ』のチャンネルを開く。画面に写っているのは春と同じ綺麗な銀色のした髪を腰まであり、ぱっちりとしていて綺麗な青がかった銀色の瞳をしている容姿の整った少女。
というところまでは同じだが、Vtuberの『サクラ』はちゃんとしているのに、春はちゃんとしていない感じがしている。ダボっとしたパーカーを着て、綺麗な銀色のした髪はボサボサなのが主な原因だ。そんな真逆な春は一言で言い表すなら、残念少女だろう。
春が『サクラ』のチャンネルを開いたのは動画を視聴する以外の理由がある。それは動画を投稿するためだ。なぜ、そんなことをするのか。そう聞かれると春は「理由は二つあるから」と言うだろう。
一つ目の理由はこれが日課だからだ。春はこれが一年前からの日課になりつつあるのだ。
二つ目の理由はVtuberの『サクラ』の中身は春だからだ。
そんな大きな秘密を持った、春は呑気に今は動画を投稿した。するとすぐにグッドボタンがついた。それからどんどんと高評価のコメントが送られてきた。中には悲しいコメントもあったけれど、春は気にせず心の中で好評で嬉しく思う。
春が喜んでいるとグ〜っとお腹が鳴った。春の場合の流石に朝食を食べないとお腹が空く時間帯になったからだろう。
春は朝食を食べるため、一旦パソコンの電源を落とし部屋を出る。
春の部屋は二階にあり、二階には春の部屋合わせ、合計四つの部屋がある。一つ目の部屋は母の部屋。春は全く入ったことが無く、どんな感じになっているのかも知らない。
二つ目は父の部屋。こちらの部屋も全く入ったことが無く、どんな感じになっているかも知らない。
春の両親は今年に入り、今は外国に仕事へ行っている。その為、この家には親が居ない。では、春は今は一人暮らしなのか。というとそれは違う。三つ目の部屋の主、双子の兄の真田若葉が居るからだ。
春の兄の
因みに若葉という名前は気に入っていないらしい。理由は女の子っぽいからだそうだ。
もう、わかっていると思うが、若葉と違い春は引き籠もりだ。なぜ春が引き籠もりになったのか。理由は三つある。
一つ目は髪色のせいでいじめられたことがあるからだ。小学一年生の頃はみんな純粋に綺麗とか色々褒めてくれたが、どんどん学年が上がるにつれ、みんなと違う春は髪色が変だと、いじめられるようになってしまったからだ。
二つ目はVtuberとして、人気が出てしまい仕事の都合で学校に行ける日が少なくなったからだ。昨日も仕事に追われて、寝ようとした時間が十一時過ぎだった。
三つ目は極度の方向音痴で陰キャだからだ。春は極度の方向音痴で目的の位置に着いたことが一度しかない。でも、道に迷ったのなら人に聞けばいいのだが、陰キャなので人に道を尋ねる勇気が春にはない。
これ、理由は四つだというツッコミは一切受け付けない。春自身がこれは三つだと言い張っているからだ。
春は一階に降り、リビングに行くとテーブルの上に朝食がラップがかかって置かれている。朝食は苺ジャムを塗った食パン、レタスにプチトマト二つに焼きウインナーが二つ。春の家の朝食はいつも決まってこれだ。変わるところは、ジャムの味が月一に変わるところぐらいだろう。
春はキッチンから、フォークを取り出して、席に着いて朝食を食べ始める。
当然、朝食は冷めていて食パンは冷たい。
十五分後、春は二階に戻りやることもないので、他のVtuberのアーカイブを見ることにした。
春——いや、私はスマホを取り出そうとした時、ふと思った。私はこのままで良いのかな?っと。
別にこの生活に不満を持っている訳じゃない。だけど、学校に通わずこうしてずっと家にいるのも悪くないけど、このまま前に進まずに私は家という籠に閉じこもっているだけでいいの?本当に⁇
そんな時、去年の記憶が蘇った。それは初配信での喋ったこと。
その時はとても緊張していたのを今でも思い出せる。
「初めまして。私はレインスカイ所属、四期生のサクラです。よろしくお願いします」
私は画面に向かって笑顔で言う。
「まず、私がVtuberになった理由ですが——」
そうだ。私が、Vtuberになった理由は、
「陰キャで引き籠もりのこんな私でも……頑張りたい!」
なら、どうするか。それはもう決まった。
◇◇◇
次の日、私は学校の制服に着替えて七時に一階に降り、リビングに向かう。そこには、朝食を作っている若葉が居た。
「若葉、お、おはよう」
私は久しぶりに若葉に挨拶した。若葉は私の挨拶に反応してこっちを見るとびっくりしていた。
それはそうだ。だって、久しぶりに制服に着替えているからね。
「あ、あぁ。おはよう、春。今日は学校に行くのか?」
若葉は目線を手元の料理に戻して尋ねてきた。
「うん。そのつもり」
「そうか」
私が答えると、若葉は優しい声音で言った。
若葉は料理ができたのか、お皿に料理を盛り付けていく。そして、テーブルの上に料理を置く。私は席につく。すると、若葉はフォークを私の置いた。
あ、フォーク忘れてた……。
私は若葉に感謝する。若葉も席につく。
「「いただきます」」
私と若葉は手を合わせて言った。
◇◇◇
「春、行くぞ」
「ちょっと、待って‼︎」
若葉は学校のかばんを持ち、靴を履いて玄関で待っている。私は急いで、階段を降り玄関へ向かう。
かばん、まったく見つからなかったんだよね……。
私は急いで、玄関で靴を履く。その瞬間に若葉はドアを開ける。
「行くぞ」
「う、うん」
私は若葉と逸れないように手を繋ぐ。
私は学校に行くと決めたけど、いざ行こうとすると怖く思える。少し膝が震えているのがわかった。手も震えてる。
「春」
それに気づいたのか、若葉は私に声をかけた。
「大丈夫だ。春をいじめる奴はどこにも居ない」
若葉は優しい声音で私を安心させてくれた。
「うん。大丈夫、だと思う」
久しぶりに出る外は怖い。だけど、私は決めた。頑張ることを!
私は深呼吸をして、光差す外へ一歩踏み出した。
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