倍速視聴と自然の摂理
「三点リーダー症候群って知ってる?」
彼女は一瞬考え込んだ後、口を開いた。
「
まあ、言ってみれば『察してよ』って意味で使うことよね」
「そうだね。
ひどい言われようだけどね。
僕はあえて使うんだ。僕にとっては、
僕の三点リーダーが、読者の想像力を刺激するんだよ。
もっとも、あなたみたいに動画を倍速視聴している人には、間の大切さが伝わりにくいかもしれないけどさ」
彼の言葉には、棘がありどこか寂しげな響きもあった。
彼女は軽くため息をつき、彼を見つめ返した。
「要するに、私の倍速視聴を責めたいってことね。
でもね、間は、あるかどうかが重要で、時間の長さはあまり問題じゃないと思ってるの。
倍速視聴でも間は感じられるし、私はそれで十分満足してるのよ。
それじゃダメ?」
「いや、そういうことじゃないんだ。
ただ、倍速で観ることで、作品の意図や深みを見逃してしまうんじゃないかって心配してるだけなんだ。
あ、それとさ、三点リーダーは六点打つのが正しいって言われているんだよ……ほら、こうやって」
焦って口を挟んだが、言葉は痛々しく響いた。
彼女は眉をひそめたが、すぐに視線を背けた。
「作品で大切なのは、まず私が楽しめるかどうかだよ。
意図とか深みなんてのは、その後の話。
だから、あんたが正しいと思うなら六点使えばいいわ。
私は状況に応じて三点か六点かを使い分けてるし、それでいいと思ってるの」
彼は静かにうなずいた。
「そうか……『長さは重要じゃない』と言いながらも、あなたは三点と六点を使い分けているんだね。
自分の感覚で選んでるんだ……でも僕は六点打ってしまう。
ただのルールなのに、まるでそれが自然の摂理みたいに……」
諦めとも取れる言葉が漏れたとき、彼が大切にしているものを理解できた気がして、彼女はふっと笑みを浮かべた。
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