自分らしさと恋愛小説

「僕は三点リーダーを六点打たずには、いられない」

諦めにも似た、決意のようなものを感じる。


「三点じゃなくて六点打ちたいんでしょ。

あんたらしくていいじゃん。

じゃあ、それがあんたのやりたいことであり、自分らしさっていうことで!」

彼女の言葉には、彼を受け入れる優しさがにじみ出ていた。


「僕は……小説を書こうと思ってカクヨムを始めたのにな。

何だか思うようにいかないな。

どうしてこうなっちゃったんだろう」

他人ひとのせいにするように少し投げやりな口調でつぶやいた。


「えっ⁉︎私のせいってわけ?

ごめんごめん、それなら小説の話をしよう。

あんたは、どんな小説を書きたいの?」

彼女は、穏やかに問いかけた。


「……分からない」


「やっぱりなぁ。

あんたってそういうところがあるからねぇ。

でもさ、書きたいと思ったんでしょ。

じゃあ、何を書くのか決めようよ。

何にする?」

彼女の声には、彼を前向きにさせようとする明るさがあった。


「あ、うん……」

彼は大抵、最初から最後まで決めてもらわなければ自分で何も決められない。


「じゃあ、私は恋愛小説を書いてみようかな!」

彼が答えるよりも先に元気よく宣言した。


「……じゃあ僕は遺書を書く」

そう言った彼の目はどこか一点を見つめていた。


「はっ?は~っ?小説を書きたいんじゃなかったの?」

彼女は軽快なリズムで、しかし至極当然の質問を投げかけた。


「そうだね……あれ?なんでだろう」

彼は自分でも不思議そうに首をかしげた。


すかさず彼女は話し始めた。

「いいよ、じゃあ私が先に書くからさ。

私のを読んでからでも、何を書くか決めればいいよ」

彼女の機転と楽天的な提案が、彼にとっては救いになるだろう。


「じゃあ、そうするよ。

あなたが恋愛小説を書くなんて、楽しみだな」

彼の口調はどこか少し偉そうに見えたが、そこには安心感が漂っていた。

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