第4話

「分かった。条件は、この国の防衛任務に従事することだ」

「防衛任務?」

「ああ。異世界からの来訪者は皆巨大な力を持っている。それはあなたも例外ではないだろう。その力をイガリオのために役立ててほしい」

「つまり兵士になれということか」

「もちろん入隊にあたっては上位の階級と来訪者だけに特別な待遇を用意している」


(異世界から来た人間を厚遇するんだから、命を賭けろと言われてもおかしくはない。もう腹は括った。)

「条件を飲む。入隊を希望する」

「では、ここからは彼らに進めてもらおう。入りなさい」

私の背後に向かって大臣が声をかけた。

ドアが開く音がして、コツコツと歩いてくる気配がする。

回り込むようにして私の前に2人の男女が現れる。

「防衛隊統合隊長のグリマウンだ」

隊長と言うだけあって立派な軍服に身を包み、凛々しい顔立ちをしている。

「司法省来訪者担当の者です」

長い金髪でメガネを掛け、手には紙とペンらしきモノが握られている。


自己紹介が終わると、私を拘束していた光の輪が消える。

どれだけ拘束されていたか分からないが、肩や腰が凝って仕方がない。

そんな私をよそにグリマウンが話を進める。

「まず、これを腕に着けてもらいたい」

差し出されたのは、どう見ても腕時計である。

しかし、針が一本しかない。それに文字盤にも数字や線が刻まれていない。

不思議に思いながらも、ベルトを調節して腕に卷きつける。

「これは魔法を使うための装置であると同時に、自身の力を測るための大切な道具だ。失くさないように」


そう言ってグリマウンは下がり、司法省の職員が前に出る。

「それでは申請書を書いていきますね。あなたが携行していた身分証から名前や年齢は既に記入しているので、残りの部分の記入をお願いします」

紙とペンを渡される。

職業や人種に加えて、宗教や家系、出身国の地理や経済についても書かされた。


全ての欄を書き終えて、職員に渡すと一行ずつ指でなぞりながら確認し始めた。

数分かけてじっくり確認すると、大臣に手渡した。

「ご確認よろしくお願い致します」

大臣も頷きながら軽く確認する。

それを終えると、申請書を職員に返し新たな紙を受け取る

「では、最後に意思確認をしよう」

大臣が椅子に座り、真剣な眼差しで問う。

「異世界からの来訪者であるあなたは、イガリオ国防衛隊に入隊し防衛の任務に就くことを条件として、イガリオ国による保護を申請しますか」

一呼吸して、はっきりと私は答える。

「はい」


私の返事に大臣の表情が和らぐ。

「一応やることになっているものでね」

咳払いして姿勢を正す。

「イガリオ国防衛大臣は、以下のことを異世界来訪者法に基づき通知する」


そうして表彰状を渡すように、私に紙を授ける。

紙には次のように書かれていた。


1. イガリオ国憲法における国民の諸権利と同等の権利を認める

2. 防衛隊に入隊することを許可し、防衛の任にあたることを命ずる

3. 国家奉仕の姿勢を鑑みて、全ての租税を免除する

4. この決定は防衛大臣によってのみ取り消すことができる


これらは国王による命を妨げない


一通り読み終えて、立ち上がる。

大臣も立ち上がる。

「ようこそイガリオ国に」

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