第3話
スラム、その中でも特に奥まった場所。
そこらへんにあった布をあてがって脇腹の止血を済ませた後、いくつかの廃墟を通って姿をくらませ、ここの住人も寄り付かないような廃墟群の一つで私は大の字に倒れた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ゲホッ」
朝日に炙られるように私の身体が人間になっていく。
それに合わせるように脇腹の傷も小さくなる。
人狼の持つ再生力は、肉体が変化するときに大きく作用する。
脇腹の痛みが引いて、かろうじて動けるほどに体力が回復しても、私の身体はうごかなかった。
着込む余裕もなくて、そこらで拾った止血用の布を除けばぶかぶかな寝間着そのものだ。
それでも、羞恥心を感じる余裕すらなかった。
ニグヘットが馬車を引き連れた。
デヴィンが銃で撃ち抜いた。
セナが剣を向けてきた。
「ヒグ……グスッ……」
蹲る私の目からとめどなく涙が溢れる。
みんなと仲良くなれたのに
何年もかけて、悪い奴じゃないって思ってもらえたのに。
それが、たった一夜でぶち壊されたような気分だった。
「……フゥ……フゥ」
それでも、泣いても、泣き喚くことはしない、しても意味がないこと知っているから。
「……絶対に許さない」
手の甲を擦りつけて涙を落とす。口から出た恨みはあの三人以外に向けられていた。
セナはあの人に殺せと言われたと言っていた。それがおかしい。
そもそも、セナが剣を向けることがおかしい。
アイツは、私を殺せと言われても、私を逃がすことに全力を出す。セナはそういう子だ。
「絶対に許さないよ……!」
裏に、そういう風にさせたやつがいる。そいつを徹底的に潰す。
立ち止まることはしない、したら死んでしまうと知っているから。
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