第18話:公子の能力(ちから)

ミテルくんの視線を追うこと十数分。


結局、公子にはミテルくんが何に反応しているのか、全く分からなかった。


諦めかけた頃、他校の制服を着た少女が階段を上っていった。大きく遅刻しているにもかかわらず小走りにやってきて、階段を駆け上がった。勢いに揺られスカートの裾が翻った。


「あ、ほら、やっぱり見えてるんじゃん!」


思わず突っ込んでしまった公子だったが、表情一つ変えないままで見続けるミテルくんの無反応さ加減に、ふつふつと苛立ちの感情がわいてきた。


「なにあんた、結局、パンツ見たいの?なに見てるの?」


答えなど返らないと分かっていても、公子の言葉は止まらなかった。

これじゃ傍から見たら、何もないところに向かって叫んでる変な人になっちゃうな、と頭の隅では分かりつつも、公子には自分の想いが止められなくなった。


「もう、嫌なの、私だけが視えて、見られてるって思うのは!自意識過剰だって笑われるかも知れないけど、そんなとこに立ってられたら、気にするなって方が無理よ!私ばっかり変な力があって、私ばっかりが損してんじゃん!この先も、あと3年近くこの歩道橋を通らなきゃならないんだよ、ずっとずっと我慢しないといけないの?毎日毎日、毎日毎日、私だけが、私だけが、こんな憂鬱な気持ちを持ってなきゃいけないの?」


口にしているうちに余計に自分が惨めになってきて、苛立ちが悲しみに変わり始めた。


「もう本当に、ここじゃなきゃダメなの?何でここなの?変態さんなの?もう、何年も何年も、一体何見てんのよ…。何でここなのよ…」


無縁体相手に取り乱してしまった自分が情けなくなり、足元に視線を落とした公子の隣から低く細い声がした。


「コ…ブ…ナイ」

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