第10話:ミテルくんの謎
翌朝。
いつもより晴れやかな顔をした公子の様子に気付いた母親に、
「お母さん、あなたの娘は、今日から学校に行くのが全く嫌ではなくなりました」
と芝居染みた回答を残して公子は上機嫌で家を出た。
変な子ねぇ、と鼻で笑いながら片付けを続ける母の愛子と、何もなかったかのようにスマホをいじりながらパンを口に運ぶ姫子がテーブルに残された。
***
「おはよう!」
公子はいつものように友人たちと合流すると、意気揚々と歩道橋までの通学路を進んでいった。
今日からは私の道を遮るものは何もない、そんな晴れやかな気持ちで例の歩道橋に目をやった。
「!」
急に立ち止まった公子を振り返り「どうしたの?」と驚く千佳と彩芽よりも、さらに驚いた顔の公子が立ち尽くした。
(も、戻ってる・・・)
昨日、確かに商店街まで移動したはずのミテルくんが、歩道橋のいつもの場所でいつものように階段を見上げていた。
(え、なんで?どうして?)
公子の頭の中はパニックになった。
滅霊師の力は絶対であり、自由に霊をコントロールできるのではないのか?
それとも、修行中の姉の力が、まだ未熟だったというオチだろうか。
理由はどうであれ、目の前に”彼”が戻ってきているのは事実である。
成功したと思った昨日の行動への徒労感と、今朝からのハイテンションの反動の疲れが、一気に公子に押し寄せた。
そして何より、公子を憂鬱にさせたのは、また今日もこの試練を超えなければならない、という、まさに目の前にある絶望感。
しかし--。
視えない友の前で、これ以上、不審な行動をするわけにはいかない。
かろうじて常識的な判断力は残っている自分を褒めたいと思った。
公子は大きく息を吸うと、ゆっくりと吐き出しながら、心を無にして友人たちに笑って見せた。
そして、ゆっくりと歩道橋に近づき、そっと両手をスカートの後ろ裾に回した。
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