第4話:姫子

「あぁ、ミテル君ねぇ…」


公子が買ってきたカップのストロベリークッキーのアイスを食べながら、姉の姫子が興味なさそうに呟いた。


オーバーサイズのTシャツ姿で、履いているミニパンは見えない。


「まぁ、分かってると思うけど、”無縁体”を消すのは難しいよ?」


勉強机の椅子を傾けて座り、すらりと伸びた日焼けした足を窓枠にのせてゆらゆらとバランスをとっている。


受験勉強の合間に、アイスクリーム(貢ぎ物)と交換で、公子に滅霊のアドバイスを買って出た。


”無縁体”というのは、いわゆる”無念”により地縛霊となっている霊ではなく、なぜこの世に残っているのか定かでない、その名の通り”縁もゆかりもない霊”のことである。


無害ゆえに放置されている霊は、この”無縁体”であることが多かった。


「それでも、何とかしたいのよぉ。」


外面だけは優等生な姉に頼みごとをすると、後が面倒くさいのだが、背に腹は代えられない。


「姫子様のお力で、ミテルくんを消すなりなんなりできないものでしょうか?」


土下座まではしないものの、姫子の足元に座って上目遣いで必死に頼み込む公子。


霊をこの世から消し去ることを”滅霊めつれい”と言う。


霊能力を持ち、この世とあの世をつなぐ役割を担う登和家は、この世にとどまる霊をこの世から消し去る、この”滅霊”を得意な生業としていた。

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