第9話 タイタンズ庵の閉店

試合での興奮冷めやらぬまま、恭子たちは福岡に戻ってきた。新幹線の中でも、東京での出来事や試合の話題で盛り上がった。


「本当に夢のような時間だったわね。」と奈々が感慨深げに言った。


「そうね。でも、現実に戻らなきゃ。」恭子は笑いながら応じた。


福岡に戻ると、恭子たちはいつものように「タイタンズ庵」に立ち寄った。しかし、店内の雰囲気がいつもと違っていた。常連客たちもどこか沈んだ表情をしている。


「何かあったのかしら?」恭子が友人たちに聞いた。


すると、店主の大石が重い口を開いた。「実は、母の介護のために対馬に戻ることになったんだ。そのため、今週でタイタンズ庵を閉店することに決めた。」


「えっ、それって本当ですか?」恭子は驚きと悲しみで声を震わせた。


「本当に残念だけど、家族のために決断したんだ。」大石はため息をつきながら答えた。


恭子はショックを受けながらも、どうにかしてタイタンズ庵を続けられないかと思った。彼女は友人たちと相談し、何かできることはないかと考え始めた。


「この店は私たちの第二の家だわ。なんとかして続けられる方法を見つけたい。」恭子は強い決意を込めて言った。


「そうね。みんなで力を合わせれば、何か方法があるかもしれない。」奈々も同意した。


恭子たちはインターネットを使って、クラウドファンディングを立ち上げることにした。SNSを駆使し、タイタンズ庵の存続のために寄付を募るキャンペーンを開始した。


「皆さん、タイタンズ庵を救うために力を貸してください!」恭子はSNSで呼びかけ、動画を投稿した。


動画には店の思い出や、店主大石の熱いメッセージが込められていた。ファン仲間たちも協力し、広く拡散してくれた。


キャンペーンは予想以上の反響を呼び、多くのファンからの寄付が集まった。タイタンズの選手たちも応援メッセージを寄せ、さらに注目を集めた。


「これだけの支援が集まるなんて、本当に嬉しいわ。」恭子は涙を浮かべながら感謝の気持ちを述べた。


「みんなの力でタイタンズ庵を守れるかもしれない!」奈々も感激していた。


クラウドファンディングの成功により、タイタンズ庵の存続が見えてきたが、それでも新しい経営者が必要だった。恭子たちは経営者を探すために再びインターネットを活用し、広く呼びかけを行った。


数日後、驚きのニュースが舞い込んできた。なんと、タイタンズの元エースであり、現在は引退して解説者として活動している鈴木直人が、新しい経営者に名乗りを上げたのだ。


「私もタイタンズ庵には思い出がたくさんあります。ここでファンと共に過ごした時間は宝物です。だから、私が経営を引き継ぎたいと思います。」鈴木直人は熱意を込めて語った。


「本当に鈴木さんが…?」恭子は驚きのあまり声を上げた。


「はい。これからもタイタンズ庵をファンのための場所として守り続けたいんです。」鈴木直人は笑顔で応えた。


鈴木直人が新しい経営者として名乗りを上げたことで、タイタンズ庵は再び活気を取り戻した。ファンたちは鈴木との交流を楽しみ、新たな時代を迎えるタイタンズ庵で再び集まり始めた。


「これからも全力で応援するからね、タイタンズ。そしてタイタンズ庵!」恭子は心の中で誓い、新たな一日を迎える準備をするのだった。

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