第10話 タイタンズの祭典

「今年のゴールデンウィークは最高になるわね!」奈々が興奮気味に話した。


「そうね。タイタンズのユニフォームが無料で配布されるなんて、ファンにとっては夢のようなイベントだわ。」恭子は微笑みながら答えた。


恭子たちはこのイベントのために早めにスタジアムに向かい、ユニフォームを受け取った。ドーム内はすでにタイタンズカラーの青と白で埋め尽くされていた。


試合が始まり、タイタンズファンは一体となって応援した。スタンドからは「タイタンズ、がんばれ!」という大きな声援が響き渡り、選手たちの士気を高めた。


「今日の試合、絶対に勝たなきゃ。」恭子は力強く応援しながら言った。


試合は接戦となり、タイタンズは優勢に進めていた。しかし、9回裏にピンチが訪れた。相手チームは一気に反撃し、タイタンズのリードは危うくなった。


タイタンズは満塁の危機に直面していた。観客は緊張感で静まり返り、誰もが固唾を飲んで見守っていた。ここでタイタンズの監督は、新人投手の煌斗陽太をマウンドに送り出すことを決断した。


「陽太、君にかかっているぞ!」監督が鼓舞するように声をかけた。


陽太は深呼吸をし、緊張を振り払うようにマウンドに立った。観客席からは「陽太、がんばれ!」という声援が飛び交った。


陽太は初球を力強く投げ込んだ。相手打者はファウルを打ち、次の球も見逃した。観客は息を呑んで次の投球を見守った。


そして、陽太の放った3球目は、相手打者のバットを空を切らせた。三振。スタジアム全体が歓声と拍手で包まれた。


続く打者も陽太の変化球に翻弄され、見事に三振を奪った。観客の声援はますます大きくなり、タイタンズの選手たちもベンチで陽太を応援した。


最後の打者がバッターボックスに立ち、陽太は冷静にボールを投げた。打者はフライを打ち上げ、センターがキャッチしてアウト。試合終了。タイタンズの勝利が決まった瞬間、スタジアムは歓喜の渦に包まれた。


試合後、陽太はヒーローインタビューを受けた。


「今日の勝利の立役者、煌斗陽太選手です!」アナウンサーがマイクを向けた。


「今日はファンの皆さんの声援が本当に力になりました。ありがとうございます!」陽太は感謝の言葉を述べた。


その後、陽太はマイクを握り直し、観客に向かって真剣な表情で話し始めた。


「実は、皆さんに重大な発表があります。私、煌斗陽太は今シーズン限りでタイタンズを退団し、新たな挑戦をすることを決意しました。」


観客席は一瞬静まり返り、次いでざわめきが広がった。恭子も驚きと戸惑いで言葉を失った。


「次のステージでは、チャンピオンズリーグでプレーすることを目指します。この決断は非常に難しかったですが、タイタンズでの経験を糧に、さらに成長したいと思っています。」


観客席からは応援と惜別の拍手が沸き起こった。


試合後、恭子たちは再び「タイタンズ庵」に集まり、陽太の発表について話し合った。店内は興奮と戸惑いが入り混じった雰囲気だった。


「まさか、陽太がチャンピオンズリーグに挑戦するなんて…」奈々が驚きを隠せずに言った。


「彼の才能を考えれば納得だけど、それでも寂しいわ。」恭子はしみじみと答えた。


他の常連客たちも様々な意見を交わしていた。


「陽太ならきっと成功するさ。彼の決断を応援しよう。」中年の男性がビールジョッキを掲げた。


「でも、タイタンズにとっては大きな損失だわ。彼がいなくなったらどうなるのかしら…」別の女性ファンが不安そうに言った。


店主の大石も加わった。「陽太の決断は確かに驚きだけど、彼の挑戦を応援するのがファンの役目だと思うよ。タイタンズも、陽太も、私たちの応援が必要だ。」


恭子はその言葉に勇気づけられた。「そうね。私たちができるのは、陽太の新たな挑戦を全力で応援すること。そして、タイタンズを引き続きサポートすることよね。」


陽太の発表は多くのファンにとって驚きだったが、彼の新たな挑戦を応援する気持ちが広がった。恭子たちはこれからも陽太の活躍を見守り、タイタンズを全力で応援し続けることを誓った。

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