第4話
「あのウヨウヨとしてるのは何だ。鉱石か?」
「いいや。あれは異常《バグ》だよ」
俺の隣に立ち
「あれは街や人を飲み込みあり得ないものを作り出す。
「なら危なくないか?あれ、見た感じこの建物の近くだろ?」
そう問うと不審者はにんまりと笑い、
「あれはORDERの戦闘員だよ。
戦闘員に労いの言葉を軽くぼやいているのを聞きながら自身も考え事に浸かる。専用…ということは自衛隊のような立ち位置なのだろうか、警察などは居るのだろうか。ファンタジーにしては良くできているなと眺める。
「よし、じゃあここの説明は終わり!次は蝉ちゃんの今後について話すよ」
手を叩く姿は上機嫌に見え、仕方なく不審者の方を見る。
「君は元の世界に戻りたいんだよね?」
「戻りたいに決まってるだろ。お前が勝手に連れてきたんだからよ、不審者」
なんて酷い憎まれ口だと泣き真似をする不審者のテンションは田澤を思い出して気分が悪くなる。
「でもここから向こうに行くのは世界のタイミングが合わない限り戻れない。だから君にはそれまでORDERの戦闘員として活躍してもらう!!」
この身勝手に決められる事に関してデジャウを感じる。世界のタイミングということに突っ掛かっても今は説明できないと言われて終わった。兎に角、選択肢は二つ。【なにもすることがない1室でいつ来るか分からないタイミングを待つ】か、【外に出られて暇にならないが凄く忙しい】…気が乗らないが狂うよりはましだろう。
「わかった、戦闘員として手を貸そう。けど俺は運動は苦手なんだ」
「あぁ!それは問題ないさ!それじゃあ改めて自己紹介をしよう!!私はアルベルト・ベルブロンド、君の相棒さ!」
そうキメポーズを決めるソイツを見て何となく高校時代の女子を思い出した、ソイツの髪が長いからだろう。握手をしようと差し出された手を握る。
「八代弥櫨だ。よろしく頼む、アルベルト」
そう言うとソイツはにんまりと笑った。
昨日は互いに挨拶をして部屋に戻った。昨日屋上から降りるときに言われたがどうやら屋上は10階だったらしく、俺の部屋が2階。つまり8階分を上がって降りた訳で膝が笑ってる。駅でも殆どエスカレーターで上がっていた罰が来たんだろうか…戦闘員になるのだから散歩からでもゆっくり慣らしていく事にした。ベットから起き上がると机に何か沢山置いてある。手に取ると自分のスマートフォンや勉強道具、服などの元の世界で使っていた生活用品が殆ど置いてある。メモにはとても汚い字で「君の荷物が届いたから置いておいたよ!アルベルトより♡」と書かれていた。荷物という漢字がぐちゃぐちゃ過ぎて合体して新しい文字になっている。そして届いたというのはどういう事だと思い問いただしに行くことにした。
着替えて部屋の外に出る。昨日は階段の方に行ったが部屋らしいものは無かったから今日は反対側を探索することにした。暫く進むと曲がり角の向こうからアルベルトの声が聞こえた。誰かと喋っているらしい。
「やぁやぁ。呼び出して済まないね」
「別に構いませんよ。それにしてもここはよくエレベーターが壊れますね。キャメロンのカウンセリングをするのを勧めますよ」
「確かにそれもいいかもしれないが、彼のは幼児の癇癪と一緒だよ。時期に緩やかに落ち着くさ」
「そうですか。まぁ、ベルブロンドが言うならそうなんでしょうね。ではエレベーターの修理に取りかかりますね」
「よろしくね。終わったら帰っていいからね~」
そう話し終わると修理をする男が角を曲がってきた。すれ違う時に深く帽子を被っており顔は見えないが服装からして駅員のような印象を受ける。無駄に考えずに駅員が来た方向に向かいアルベルトに声をかける。
「おや蝉ちゃん、おはよう。いい目覚めかい?」
「まぁまぁだ。それより荷物の事だが…」
そういいかけるとアルベルトは思い出したかのように「あぁ!」と言い、あれは朝荷物として届いたから置いておいたよ!とメモ通りの話をした。どうやって、どういう理屈で届くかは分からないらしい。
「私はまだ朝ごはんを食べていないのだけれど、君も食べるかい?」
「あぁ、是非とも頂きたい」
アルベルトはこっちだと言い俺を連れて食堂に向かった。
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