第239話
「大丈夫?」
卒業式から帰ってから結構落ち込んでいる様子のカイを心配するマイ。
「マイこそ大丈夫?」
カイがそういうのは帰ってからも度々顔を赤くしているためである。
「私は・・・・・・大丈夫だよ」
その間は大丈夫じゃないやつじゃん。
「どうしたの?」
確かにマイにも飛び火はしていたが、それは卒業式前の話。
今はそれも終わり家に帰って来ているのだ。
今も時々顔を赤くしているのはおかしい。
「よくよく考えたら、もう新婚生活みたいで・・・・・・」
「それ、自分で言い出しちゃったら終わりだって」
それもこれもあの時あんなことを言われたのが原因だろうな。
◆
これは亜人の聖地から帰ってきてカイが目覚めた翌日の夜のこと。
久しぶりにスタール亭でロヴァイトさんたちと一緒に夕食を食べた時の話だ。
「結婚しても今と変わることあまりないんじゃないか?」
ロヴァイトさんのその言葉から始まる。
「確かに、もう同棲してるし自立もしてるものね」
ロヴァイトさんに同意するミサリーさん。
今更ながら、改めて同棲していると言われると少し恥ずかしくなる。
「変わることは多分ありますよ」
「例えば?」
変わるところはあると思うが例を出せと言われると・・・・・・
「子供」
答えたのは隣のマイだった。
思い付いたものをなにも考えずに言ったものだから、後から恥ずかしさを感じているようだ。
そして、それはもちろん僕にも飛び火しており僕も恥ずかしい。
それに相手の親がいる前でそういう話は余計に気まずい。
「孫か・・・・・・俺も年をとるわけだな」
「まだまだ、現役じゃないですか」
「まあな。全盛期は過ぎたけどまだ退くつもりはない」
頼もしいな。
「強がって、最近は体が痛いってしょっちゅう言ってるくせに」
ミサリーさんそんなこと言ったらさっきの頼もしいって感想が真逆なものになりますって。
でも、仲良いな。
「マイ、先に孫が見たいって言ったのは私たちなんだからそんなに恥ずかしがることはないわよ」
ミサリーさんが顔を赤くしてうつむいているマイにそう言い、マイもそれでようやく顔をあげた。
「孫を楽しみにしてるわよ」
その言葉にさらに顔を赤くしてうつむいてしまうマイであった。
◆
このときに結婚してもなにも変わらないと言われたことから新婚生活みたいだと感じたのだろう。
そして、赤くなっているのはそれを思い出す度にこの話を思い出すからだろう。
そんな明るそうな未来を想像する一方でやはり魔族の動きであったり旧帝国領の事件が気になってしまうのだった。
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