第231話

「使いこなせてないぞ?」

ビルナーはそう言いながら多方向から植物による攻撃を行う。

カイは力を抑えることを意識しながら向かってくる攻撃の一つ一つを殴るか蹴るかで対応していく。

まだ慣れていないためか大振りになることもあったが、その攻撃を全て防ぐ。



その後方で彼の戦闘を見守る3つの影。

レクス、ノイン、マイである。

彼らは移動魔法をもちい一瞬でサテュロスを救出すると、一旦元々いた場所に戻りサテュロスのことを任せてからもう一度見えやすいところまで来ていた。


元の場所からでも見えるが、何かあったときに助けるには近ければ近いほど早く反応出来る。

それに、自分達だけ安全地帯で待っているのはもう嫌だったのだ。


「なんかまだ慣れ無さそうだな」

「そうだな・・・・・・私にもっと力があれば・・・・・・」

ノインの言葉に同意しつつ力の無さを悔やむレクス。

彼は本来守られる側の立場のため、力を求める必要はないのだが、彼の思考の中に自分の立場というものは端の方からも追いやられていた。

「大丈夫ですよ。私はカイ君を信じます」

「・・・・・・そうだったな。私たちが弱気になっていたらダメだな」


「どんな感じや?」

後ろからのその声に3人とも驚いて後ろを振り向く。

すると、先ほどまで力尽きて横になっていたリーセスがそこにいた。

当然、看病をしていたレイもその横に立っている。とても心配そうにリーセスを見ているが。

「・・・・・・カイならば心配ない。だから休んでいろ」

「そうですか。ほんなら休ましてもらいますわ」

レクスの答えにリーセスは移動魔法で元の場所に戻る。

レイはレクスに深いお辞儀をしてからリーセスの後を追うように移動魔法を使った。


「お優しいですね」

マイがそう言うのはレクスが心配ないと断言したところにある。

リーセスをもし安心させなければ彼は無理をしてでもまた戦おうと前に出ただろう。

「それが出来たのも私よりもカイのことを信じている者が居てこそだがな」

「確かに自分よりも信じている人がいると安心するよな」

レクスが言う自分よりも信じている者というのがマイであることを理解したノインも付け加える。



カイは後方に新たな気配が2つ増えたことに気づいた。

これも野生の目の効果だろう。周囲への感知能力が上がっている。


その2つの気配がリーセスとレイであることも突然現れたためわかった。


それを感じつつも、ビルナーからは目を離さない。

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