230話

サテュロスの有利は戦闘が進むにつれて徐々に明白になってきた。

植物も90:10でサテュロスの方が大幅に多くなっている。

徐々にサテュロスの精霊魔法の威力が上がっていく。

攻撃はまだビルナーに届いていないが、確実に追い込んでいた。


サテュロスの攻撃により、ビルナーの隙が出来る。

そこに今までのものより威力を込めた攻撃を打ち込む。

それは、この優位性からの油断だった。その攻撃はサテュロスの意に反してサテュロスに向かって返ってくる。


予想外の挙動に避けるのが遅れもろに食らってしまう。

幸い致命傷は負わなかったが、戦闘の続行は厳しくなる。

「あれ?力が・・・・・・」

サテュロスがそう感じたのは当然のことで、先程まで90:10だった比率は今0:100でビルナーの植物のみとなっていた。

急にサテュロスの攻撃が意図せず返ってきたのはサテュロスがビルナーの植物を自分の植物に買えることが出来たようにビルナーも同じことが出来たのだ。

精霊魔法特有の植物による攻撃にもその応用が出来た。


ビルナーはまず周りの植物を自分の植物に変え、そしてサテュロスの攻撃に使われた植物をも変えたのである。



後方ではその様子にすぐに気づき、カイはすぐさま移動魔法で一気にビルナーとサテュロスの間に割って入る。

「野生の目を宿す者よ、今度は楽しませてくれることを期待する」

ビルナーはまたカイが目の前に現れたことを驚かずにそう告げる。

「・・・・・・・・・」

カイは無言のまま集中する。

そして、まばたきを一度した瞬間、片目は通常の目、もう片方が死神の目と野生の目が合わさった混沌とした目となっていた。



これまでにないくらい自分の中で物凄い衝動が生まれ、自分を奪おうとしてくる感覚に襲われる。

しかし、先程と違いちゃんと自我を持ったままだった。


自分の体がどういう感覚で動くのかいまいち掴めてないため、軽くジャンプしてみる。

!!

危なかった。軽くジャンプしただけなのに天井にぶっ刺さる所だった。

まだ感覚を掴めてはいないが、これ以上は待ってもらえそうもない。


植物の攻撃が飛んできたため本当に軽く横に飛ぶ。

これでも大袈裟に避ける感じになってしまった。

この感覚になれるには時間がいりそうである。

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