第232話
それから戦闘は平行線。
カイが守り、ビルナーが攻めの状態が続いていた。
それはカイが体の感覚の違いに慣れてなくいまだに自分から攻めるという行為が難しかったためである。
「つまらん。慣れるまで待ってやる」
ビルナーは一方的にそう告げると眠ったかのように動かなくなる。
少しの間警戒していたが、全く動くことのないビルナー。
警戒を続けながら体をほぐしていく。
◆
後方ではビルナーのその異様な行動に戸惑いを持っていた。
「罠・・・・・・ではないのか?」
「全くわかんねぇ」
「私、近くに行って回復魔法をかけてきます」
レクスは罠を疑い、それに理解不能だと言うノイン。
マイは二人と違い、カイに回復魔法をと動き出す。
「待て、まだ罠でないと決まったわけではない。それに、この状況であればいつでも自分で回復できるだろう」
マイを止めたのはレクスである。
「・・・・・・そう、ですね」
マイとしては何か少しでも役に立ちたいという思いがあったのだろう。
「この状況で力になれないのは私達も同じだ。一人で気に病む事はない」
そのマイの気持ちをしっかりくみ取ったレクスは優しくそう告げるのであった。
内では自分の無力さを悔やみながら。
◆
体を動かしながら徐々に感覚を慣らしていく。警戒を解く事は出来ないが、考えることが少なくなったためかスムーズに慣らしていく事が出来た。
「そろそろか?」
僕がもうそろそろ良いかなと思い始めたタイミングでそう声をかけられた。
「・・・・・・」
僕は無言で頷く。
先制は僕がとらせてもらった。
一気に距離を詰めるとそのまま蹴りを繰り出す。
ビルナーは試すように避けることなくその蹴りを受け止める。
「・・・・・・素の力は落ちてるな。ただ、力の伝わりが良くなっている」
ビルナーがそう言うがカイの耳には届かないほど小さな声だった。
そこからもカイの攻めは続くが、ビルナーは顔色を一切変えない。
カイはその事をそこまで気にしないようにしているが、少しづつ焦りが出ている。
その焦りは一瞬で消え失せた。
ビルナーの攻撃が明らかにマイ達の方向に向けられたのだ。
その地面から大分離れた高い位置を通るその植物を横から殴ることでそれの軌道をずらす。
「狙うだけでは進行しない」
ポツリとビルナーが呟くが、やはりカイには届かない声量だ。
今度こそともう一度攻めに転じるカイだが・・・
「もう、用は済んだ」
その言葉と共にビルナーは動かなくなった。
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