第220話

「な!」

「どういうことだ!?」

精霊王の力をも越える化物が生まれているかもしれないという発言にその場には動揺が広がっていく。

「精霊とエルフが御神木というものを用いてずっと関係を続けてきたのはあまりにも精霊王の力が強すぎることにある」

「そんな話聞いたことがないぞ」

エルフの族長であるウィルマスさんも知らなかったようだ。

「なるほど、知らないのか。これでようやく話が繋がったよ。でもまずはなぜ御神木で関係を保ってきたのかを話そう。これは初代の精霊王が自分の力を制御することが出来なかったのが始まりだった・・・・・・」

サテュロスさんの話によると、その時代この大陸は全てエルフが管理していたらしい。

その初代の精霊王が力を制御できない状態でいると、意図せず周りに植物を生んでしまうそうだ。

それは生態系を崩す行為であり精霊王としても本意ではなかった。

それをなんとかするため初代の精霊王はエルフを頼った。

ちょうどその頃エルフ達が長く信仰してきた御神木が枯れかけていたことからその時のエルフの族長は制御しきれない力を使って御神木を維持することを提案した。

その提案通りにすると御神木は枯れかけていたのが嘘のように元に戻り、精霊王の力も制御できる範囲に収まり周りに植物を意図せず生んでしまうこともなくなった。

想定外だったのは御神木を元に戻したことでエルフから神のように崇められたこと、そして自分が意図せずして産み出した植物を活用しながら獣人達が生活を始めていたことだった。

自分の産み出した植物を上手く活用しながら生活していく獣人達にいつしか親のような感情を抱いていた精霊王はエルフが自分を神のように崇めているのを利用してこの大陸の一部の管理する権利を譲ってもらう。

そうしてその関係は代替わりを経ても変わることはなく今でも続いていたということらしい。

「そんな歴史が・・・・・・」

本当にウィルマスさんも知らなかったみたいだ。そんな重要そうな話を何で族長が知らないんだ?

「この話は代々精霊王とエルフの族長に伝えられるものだと僕は聞いている。つまり、これを君が知らないということは先代、もしくは君自身が偽物なのかもしくは裏切っているのかということになる」

精霊王はそこで一旦区切る。

どうやらウィルマスさんの反応をうかがっているらしい。

「そして、この反応。恐らく先代が偽物だったか裏切っていたのかになるだろうね」

「そんな・・・・・・」

この話がショックだったのだろう。ウィルマスさん、それに取り巻きのエルフ達まで押し黙ってしまった。

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