第221話
「今は落ち込むよりも生まれているかもしれない化物の対策を考えるべきだよ。幸いここには僕よりも勝てる可能性がある人物がいるしね」
そう言ってこちらに視線を向けてくるサテュロスさん。
あれ?もしかして僕のこと?
念のため僕の後ろを確認してみるが案の定誰もいない。
「まあ、あの目の力を使わないと無理だと思うけどね」
・・・・・・・・・あれか・・・・・・
あれを使うのは正直怖い。まる体の中にもう一つの人格が出来て自分の中でそれと戦いながら外側でも敵と戦うということをしなければならない。
そして、一瞬でも気を抜くとそのもう一つの人格に体の主導権を握られてしまう。
以前試したときは最後の瞬間に油断したため主導権を失いかけ結果として止まっていることがやっとの状態になってしまった。
よく人は未知のものを怖がるというが、そのもう一つの人格がまさに未知のものなのだ。
今まで感じたことのない未知のものに体の中を侵食されるような感覚は自分を保ったまま使うと精神的にすぐにダウンしてしまうだろう。
「そんな不安な顔をしなくてもあくまでそれは最終手段だよ。それで暴れられでもしたらそれこそいるかもしれない化物よりも厄介だからね。それにまだいると決まったわけではないし」
それもそうか。まだいると決まったわけじゃない。
横から心配そうにこちらを見ているマイに笑顔を向けてからもう一度サテュロスさんの方に向き直る。
「わかりました。他に手段がなくなれば使います」
「頼もしいね。それで戦力確認をしようか。君たちは何となく知ってるから良いよ」
そう言いながらこちらを見る。試練の時とかに見たのかな?
サテュロスさんはその後エルフ達の方を見る。
「私たちは村の中では上位の実力者が集まっているが、正直役に立てるかは分からない。
私たちはあまり戦闘をするような種族ではないので」
そっか。僕のイメージではエルフって森の中で狩りをしているようなイメージだけど、実際は魔獣を従えて森を管理してるんだもんね。
そりゃ自分達が戦うことを想定して訓練なんかをすることも少なくなるか。
「そうなると・・・・・・僕が本気を出すためには時間がかかる。それまでの時間稼ぎを全員でしてほしい」
「・・・・・・しかし・・・」
ウィルマスさんは微妙な顔をしている。
恐らくまだ、サテュロスさんへの警戒を解ききれてないのだろう。
「こればっかりは信じてくれそしか言いようがないけど時間を稼いでもらった分の働きは必ずすると約束するよ」
「・・・・・・わかりました」
こうして化物がいた際の策が出来上がった。
しかし、その化物と仮定されていたものはその呼び方でも生ぬるいものだった。
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