第208話

船に戻った後レクスからすごい目線で睨まれていたけれど、無視を貫き通すことにした。

無視し続けていると、次第にその視線もなくなっていった。

こうなる運命だったと割り切ったのだろう。

というか隠していてバレたときにすごい怒られそうだから逆に感謝して欲しいくらいだ。

レクスが何か言ってきたときように後から考えたんだけどね。


改めて乗っている船にはその上に仮設の小屋のようなものがあり、その小屋の中にいる状態だ。

小屋といっても外観がそんな感じというだけで中には複数の部屋があり僕達は二人一部屋の割合で部屋が割り当てられている。

その他にも大きい部屋を一部屋用意してもらっており、大抵はそこに皆いる。

こんなVIP待遇なのはレクスが王子だから、ではなくあの島に引き込む渦を止めたのが僕達の功績というのが知れ渡っていたようでそのお礼も兼ねてこうなっている。

正確にはレクスとノインの功績なのだが、全員の功績となっているらしい。

まあ、当事者のレクスとノインがそこまで気にして無さそうなので僕が気にするところではない。



時は少し遡り、ノインは再びカリアの会社に訪れていた。

「お、思ったより早かったな。お茶でも飲んでゆっくりするといい」

ノインはまだその男性がこの会社の社長ということは知らないが振る舞いからしてそのように察していた。

「彼氏くんにお茶でも入れてあげたら?なんなら自分の分も用意して一緒にゆっくりしても良いよ」

「ちょっ、先輩」

ノインからしたらからかわれているカリアは新鮮でそれが少しおかしかった。

「お、彼氏くんにうけた。今日は笑ってくれる後輩達が全員いなかったからありがたいね」

「先輩のせいで笑われちゃったじゃないですか!」

「彼氏くんの前だと普段よりもからかいがい増すね。彼氏くん毎日来てくれても良いよ。ここで彼氏がいなかった一人が彼氏持ちになったことでここに彼氏に飢えている女子はいなくなったから」

「それだと私が彼氏に飢えていたみたいになるじゃないですか!」

「ほら、こんな風に面白いから彼氏くんも毎日カリアの付き添いで来ても良いよ。何なら来て欲しいくらい」

「ハハハ」

これにはノインも苦笑いをするしかなかった。

「さ、カリア、この魔物の騒ぎで仕事どころじゃない雰囲気だしここでイチャイチャするなり家に帰って妹ちゃんを追い出して二人きりになるなり好きにしたら良いよ」

「おう、好きにして構わないぞ。わしも家族が心配だしそろそろ帰るとしよう」

「先輩、社長」

カリアの恥ずかしげなその声が会社の中に響いていた。

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