第154話
レイが聞いたのはリーセスの過去。こことは違う世界での前世のことだった。
「知っての通り元はああいう性格やった。やけどそれだと友達が出来ない。その板挟みにあった僕はその頃よく見ていた物語の中で明るくて友達がたくさんいる登場人物の真似をするようになったんや。そうしたらなんやうまくいって友達が出来はじめた。この口調もそっからやな。やから僕はたくさんの人を騙してきたんや。しかも今は第二人格みたいになってナチュラルに目の前の人を騙しとる」
その目はすごく寂しそうであり、申し訳なさが伝わってくる。
今も騙し続けていると考えてしまっているのだろう。
そして、騙して得た友人も本当の友人ではないと考えているのは明白であった。
試練は彼を成長させたかもしれないが精神面で言えば逆にダメージを与えてしまっていた。
「私は騙されたなんて思ってないよ」
レイはまっすぐにリーセスを見て続ける。
「それは騙したんじゃなくて努力だよ。自分の不得意なことを逃げずに挑戦し続けた結果だよ。だからそこまで否定する必要はない」
淡々とそう告げるレイには妙に説得力があるようにリーセスは感じた。
それは迷いなくそう告げるレイの様子とリーセスの中でのレイの大きさからだろう。
「・・・・・・そう・・・かもな。ありがとうな、聞いてくれて。少し楽になったわ」
その言葉には少し空元気という面もあったが事実でもあった。
◆
暇になったノインはというと外出していた。
なにしろ自分以外は恋人か婚約者と共にいるため邪魔をすることが出来ない。
そして、部屋にこもるようなタイプでもないため宿の近くをうろついていた。
獣人の国とはいえ、他の村より大きいという点以外は途中で寄った村と変わらない。
お店も少なく見たことがないものは食材がちらほらといった感じだ。
馬車で進んでみてわかったがとにかく亜人の聖地は自然が豊かだ。
家の屋根を突き破る形で生えている木もあるほどだ。
ちなみにその家から人いや、獣人が出てきているのを見たため廃墟ではなく普通に住んでいるようである。
ブラブラしているとこちらを見てヒソヒソ話している獣人をよく見かけた。
やっぱり珍しいんだなと思いつつ少し居心地の悪さを感じ始めたため宿に戻るのだった。
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