第148話
レイはリーセスの部屋に来ていた。
いつも同じ家で生活しているとはいえ、まだ付き合い始めて間もないためこういう個室で二人きりになると少し緊張してしまうものだ。
普段から口数が少ない方だが緊張のためかより口数が少なくなってしまっている。
「話ちゅうんはやっぱりあれのことやろ?」
実はレイがリーセスの部屋に来たのは試練を経て話したいことがあったからだ。
「・・・・・・うん」
「そ、その悪かったな。別に隠しとったわけじゃあないんや。いや、言い訳やな。自分を簡単に変えることが出来んのは知っとった。でも、変えられたんちゃうかなって、そう思ってしもうとったんや」
リーセスはそう口にする。過去を受け入れたとはいえそういう希望を持っていたのは事実。
それが崩れ去ったからか彼の表情は曇っていた。
「そうじゃないよ。私が言いたいのは・・・・・・・・・気づけなくてごめんなさい。それどころかいつも頼ってばかりで・・・・・・」
レイは気づけなかった自分が悔しく、何より頼ってしまっていたことが情けなく感じ目には涙が溢れていた。
「そんなことない。聞いたで精霊王から。僕の本質を見てもすぐに受け入れてくれたんやろ?それだけで十分や」
これは慰めるためではなく本心からのものだったのだろう。
その証拠にその言葉と同時にレイを抱き締めた彼の表情は先程と異なり少し嬉しそうであった。
◆
その頃レクスはお叱りを受けていた。
カイを逃がしたのは不覚と思っていたが忘れていたことを暴露されるよりはこの方がマシだったのかもしれないとも思い始めていた。
「忙しいとはいえ約束してたでしょ?忘れてたとは言わせないわよ」
本当に暴露されなくて良かった、レクスはそう感じていた。
今でも既にローゼの頭から角がはえているような錯覚が見えそうなのに・・・もし言われていたらと思うと背筋が凍る。
「すまない」
以前カイから女性が怒っているときは素直に謝った方が良いと聞いたことがあったのでそれを実践する。
「すまないって・・・・・・本当に忘れてたの?正直に言いなさい。言わないなら明日迎えに来たカイさんに聞くわよ」
どうやら今回は逆効果だったようだ。
確かにあの場ですまないと言えば忘れていましたと言っているようなものである。
レクスはそれに気づいておらず純粋にカイに恨みの念を送っていた。
「ねえ、どうなの?」
「すまない」
今度は本当にそれ以外に言うことが出来なかった。
嘘をついたとしてもカイに聞かれれば暴露されてしまうためそうは出来ない。
「そ、そんな・・・・・・まさか他に女でも出来たんじゃないでしょうね?」
「一応言っておくが私と同行している女性はどちらも彼氏か婚約者がいるぞ」
「ってことは相手は獣人?」
先程とは違い笑顔で問いかけてくるローゼ。
しかしその瞳の奥では怒りが渦巻いているのが感じられた。
レクスへの説教が終わるのとレクスが誤解を解くのはまだまだ先の話になりそうである
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