第140話獣人の王 2

「まあ、そんな身構えないでいただきたい。今回の授業内容が少し変わったものになる、それだけのことです」

なんだろう、獣人の王もこう言われることを予見していた雰囲気がある。

「すまない。こうやってふっかけるつもりはなかったのだが、まだ王になって20年程度と聞いたため少し出方をうかがわせてもらった」

レクス、王に対して強気だな。

「レクス殿はこちらの感覚もわかるのだな。確かに獣人にとって20年は短い。

まあ、20年やってることには変わりないがね」

そこでようやく歓迎のムードが戻ってきた。

正直内心ビクビクだったが何事もなくて良かった。


「それで今回だがやって貰いたいことは三つある。

一つ目は精霊王に会うことだ。いつでも良いそうだから良い時に俺に声をかけてくれ。

二つ目は獣人の魔化、こちらではそちらで魔獣と呼ばれているものを魔物、獣人が魔化したものを魔獣として区別しているのだがその魔獣となる原因を探ることだ。

三つ目は海底に住む獣人たちの現状を調べることとなる。

これの全てをやりとげるか期間が終わるかのどちらかでここでの活動は終了となる」

なんか色々話が渋滞してるな。

一つ目は僕がここに来た目的でもあるため良いとしよう。

二つ目は獣人の魔化の原因を探れと。簡単に言ってくれるもんだな。それがどのようなものなのかもわからないし。

三つ目のはそもそもどう行くんだという話だ。海底なんてそんな息持たないだろ。


獣人の王はそれ以上説明することはなかった。

考えてみるとこれも授業なのかもしれない。そもそも学校に来るために来たんだし。



あの後は特に何事もなく用意されていた宿に来ていた。

「おい、レクス。ヒヤヒヤしたぞ」

「うん?いや、どうやら私がどういう人物か見ていたみたいだったのでな。こちらも対抗したまでだ」

「いや、獣人の王だろ?怒らせたら僕たち無事じゃすまなかったろ」

「それはない。私がいるからな。もし私に手を出せば国がこちらに攻めてくる。それにあの程度で怒るような王など王失格だ」

そんなもんなのか?

「まあまあ、過ぎたこととやかく言うんやなくてこれからのこと考えんと」

リーセスのその発言で話が今後のことになる。


「でも、どれからしたら良いんだ?」

ノインのその言葉に皆困った表情をする。

「精霊王に会いに行くか?」

僕のその声に皆難しい顔をしている。なんかまずいのかな。

「本気で言っているのか?」

「どういうこと?」

「現精霊王は変わり者として有名だ。姿を人間に見せることは今まで無かったのだ。それが会いたいというのは不自然すぎる。対策せずに行くのは危険すぎる」

変わり者に会いたいって言われてたんだ、僕。

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