第134話イワルナの町の宿
リーセスとレイは馬車でイワルナに向かっていた。
そうして夜になる頃にはイワルナにつきノインに教えられた宿に向かった。
こういうところはしっかり抜け目のないノインである。
受付では今は二人部屋しか空いていないと言われ、迷った二人は夜も遅いため二人部屋に泊まることにした。ちなみにその後の客がすんなり一人部屋に案内されているのだが、二人にそれを気にする余裕はなかった。
さすが歴戦の恋のキューピットであるとだけ言っておこう。
◆
深夜0時。二人は部屋を出て温泉に向かっていた。
それは受付でこんなことを聞いていたからだ。
「他のお客さんには話してないのですが、ここの温泉0時辺りはすいてて独り占めできるんですよ。誰の目も気にならない温泉はとても良いですよ」
特にレイは人見知りな面があるためその時間に入ることにしたのだ。
リーセスはそれに付き合った形だ。先に自分だけ入るのが忍びなかったのかもしれない。
そんな二人が温泉の前に着くとそこには清掃中立ち入り禁止という看板が立っていた。
そして何故か混浴だけは不自然にその看板がなかった。
中を覗くと確かに掃除中でもなければ人が一切いなかった。
「どう・・・する」
顔を赤くしながらそう問うレイ。赤くなっている理由は言わずもがなであろう。
「僕が後で入るから先入ってきいな」
リーセスはなんとか動揺を見せずにそう返しながら背を向け出ようとする。
「待って」
その言葉にリーセスはこの後の流れを想像し動揺する。
「な、なんや?き、気遣いはいらんで。遠慮せんと先入りや」
なんとかその結果にならないように言葉をひねり出した。
「一緒に・・・入ろ」
健闘むなしく一緒に入ることが決定した。
かといってやはりタオル一枚の姿を相手に見られるのが恥ずかしかった二人は出来るだけ互いを見ないようにしながら温泉に入り背中合わせの状態になった。
「聞いてエエか?」
「なに?」
「なんで一緒に入ることにしたんや?」
「ここに泊まったカップルは99%結婚する、という噂があるんだ」
「なんや、それ」
「多分その理由がこの現状じゃないかな」
リーセスはここで察した。
受付もしくはこの宿全体がここに泊まったカップルを結婚までもっていかせようとしていることに。
「僕たちもその99%に入るんやろか?」
そう言うリーセスにレイは振り向き抱きつく。
リーセスは背中のなんとも言えぬ感触に息が止まりそうになる。
「入るよ、きっと・・・・・・」
なんだかとても良い感じになっていた。
そんな中こき使われていたのだと思うとノインは不憫である。
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