第125話旅行

今日は男湯、女湯に別れて入ることになった。

混浴もありはしたが公共の場で一緒に入ることは気が引けたためやめておいた。



温泉はそこまで混んでおらずゆったりと入ることが出来た。

そして、もうそろそろ出ようと思った時、

「そこのお兄さん、ちょっと良いですか?」

細身の男性に話しかけられた。

その隣にはいかにも戦士に見える男が立っていた。

「どうしました?」

「あなたはこの辺りに住んでいますか?」

なんかインタビューされてるみたいだな。

「いえ、王都から来ました」

敵意は無さそうなので正直に答える。

「そうですか。一応お尋ねしますがリーセスという丁度君くらいの年の子を見かけませんでした?」

相手が何者か考えを巡らせる。

「見かけたことがあると言ったら?」

少し揺さぶりをかけてみることにした。

僕は初めこそリーセスを警戒していたが、長い間学校での様子を見ることでそれは杞憂であったことを悟った。

そのためもし刺客だとするのなら庇おうと考えていた。

「一度で良いからあいつと顔を会わさせて欲しい」

今まで口を挟んでこなかったいかにも戦士な人がそう言った。

刺客かどうか判別できない。

「用件は?」

そう訊くと二人が経緯を話し始めた。

過去にリーセスを助け育てたのだという。

二人の話は筋が通っており本当のように聞こえる。

「僕も一人で来ているわけではないので王都に帰るのは明後日になりますが良いですか?」

これで反応を見る。

本当はすぐに帰れるんだけどね。

「分かりました。よろしくお願いします」

不審な点は特になかった。

「では、明後日の朝この宿のエントランスで待ち合わせましょう。失礼します」

警戒は緩めずすぐにその場を去った。



「良かったんですか?あのまま行かせて」

「ああ、警戒されていたしな。それにあいつ相当強いぞ」

「そうですか?体も僕と同じくらいには細かったですけど」

カイが去った後二人、リゼイルとサイルが話していた。

「何があっても敵対しない方が良いな」

「そこまでですか。でも、やっとリーセスに会えるんですね」

「・・・・・・そうだな」



その頃女湯では・・・・・・

「ねえ、あの子達可愛くてスタイルも良くない?」

「うらやましいな~」

そのような声がひそひそと呟かれていた。

視線を集めている一人はマイである。

そしてもう一人は・・・・・・

「リーセスの事知ってるの!?」

リーリエである。

リーリエもリゼイル、サイルと同様に温泉で聞き込みをしていた。

そのため皆の視線を余計に集めていたのだが、たまたま探し人を知っている人物に話しかけたのだ。

「でもすみません。一緒に来ている人がいるので」

そう言いマイは温泉から出る。

どう対応すれば良いのか分からないのもあるが皆の視線を集めており居づらかったのだ。



温泉を出ると丁度のタイミングでマイが出てきた。

「部屋に戻る?」

「う、うん」


ルームサービスを利用し部屋で食事をとりながら、帰りに3人乗せて帰る事を伝えた。

するとマイも話しかけられていたようで断ってしまったようだ。

気持ちは分からなくもない。

突然友達の名前を出されても信用できないし。

食べ終わると明日に備えすぐに寝た。


翌日。

「どこに行く?」

実は計画はないに等しいのである。

なんせここに来た目的は温泉。

観光ではないのだ。

「ぶらぶらしよ」

どうやらマイも特に決めてなかったようで適当に歩き始めた。

まあ、こういう計画のない旅行も案外楽しかったりする。



結局やることがなく昼間に宿に帰ってきた。

すると受付の人に

「この時間は温泉に人がいないのでおすすめですよ」

と言われ先に入っておくことにした。


掃除中。

男湯、女湯共にその看板が立っていた。

唯一混浴だけが開いている。

あの受付の人、策士かもしれない。

こうして何組もくっつけてきたのではないだろうか。

恋のキューピットとしては有能と言えるかもしれない。

「どうする?」

「せっかくだし入ろ」

マイは結構ノリノリだった。



温泉は何事もなく終わりそこからは部屋で過ごして翌日になり帰る事になった。

エントランスには約束通り三人が待っていた。

「それでは行きますか」

「お願いします」

細身の男性が代表して答えた。


馬車ではそれぞれ自己紹介をし、それ以外の会話は途中までうまれなかった。

会話がうまれたきっかけは昼食時にある。

行きと同じ町で食べたのだがその会計を知らぬ間にリゼイルさんが済ませていたのだ。

出来る男って感じなのだが、こちらが信用できてないようにあちらも信用できないはずだ。

良いのかと聞くと、

「ここ5年ずっと探してきて初めて手にした手がかりなんだ。飯でもおごりたくなるさ」

なんか信じられてた。

「嘘だとは思わないんですか?」

「まあ、名前を聞いた瞬間に警戒心を高めていたからな。演技だとしたらそれのお代だと思ってくれ」

このことをきっかけに少しずつ会話が増えていった。

そして、夜になる頃王都についた。

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