第96話死神の使者

「死神の使者の目も今思えばカイ君のあの目と似ていた気がするんだ」

ロヴァイトさんのその言葉が脳内で繰り返される。


「お前は死神の使者か?」

「あれ?何で知ってるん?顔は見せてない思うたけど」

この言葉が肯定だと判断したときにはすでに瞬間移動で彼の背後に行きインベントリから出した剣を振りかざしていた。

しかしその攻撃を軽々避けるリーセス。

「ちょっ、危ないやないか。まずは話聞いてぇな」

僕はその言葉を無視し攻撃を続ける。

「死神の目が発動してしもうとるやん。これはもう諦めんといかんか。悪いけど本気でいかしてもらうで」

その言葉を発したリーセスの動きが変わる。

今までは躱すことしかしてなかったが両手に小刀を逆手で持ち、攻撃を避けながら隙を見て攻撃をしてくる。


カイは本能的に後ろに下がる。

その瞬間元いた場所にリーセスの小刀が振り抜かれる。

リーセスはこの攻撃で見せた隙を狙われないように後ろに飛び退く。

そこにカイの追撃は来ず、意図せず両者の間には距離がうまれる。

動き出したのは同じタイミングだった。

激しい打ち合いが始まろうとしたとき、

『グオーーーーーーーン』

どこかからか咆哮が聞こえどちらとも動きを止める。

リーセスはこれに心当たりがあった。

それは死神がこの戦争を起こそうとした真の狙い。

この地に封印されているあの魔獣を目覚めさせること。

それは神の使いですら倒すことはできず封印しかできなかった魔獣。

「えらいタイミングでお目覚めやな」

「何か知っているのか?」

「やっと話す気になったか。今のは・・・・・・」

「グオーーーーーーーン」


リーセスの声は謎の咆哮により遮られ聞き取ることができなかった。

気を抜くと意識を失いそうな咆哮をなんとか耐え聞こえた方向を向くとそこにはファンタジーな世界にありがちのドラゴン背中があった。


「あれは、神の使いですら封印までしかできへんかった伝説の魔獣や」

神の使い、封印、伝説。

この三つの情報から以前ソラが二度と戦いたくないと言っていた魔獣ということが分かった。

あっけにとられている内にドラゴンが動き始める。

背中から見て分かったのは大きく息を吸い込んだこと。

また、咆哮が来るのかと身構えていたが、それはなく火のブレスが見えないところまで飛んでいった。

何を狙ったのか分からないその攻撃に警戒を高めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る