第74話レクスの焦り2
「その何者かのあてはあるの?」
「そういえば言ってなかったか。ローゼが倒れる少し前に帝国の軍が進軍を始めたという報告があった」
なんか帝国怪しいな。
いや、怪しすぎるからこそ違う気がする。
「帝国め………」
どうやらレクスの怒りは収まってなかったようだ。
「おい、まだそうと決まったわけじゃないだろ」
「その通りだ。レクス、お前は取り乱しすぎだ」
僕の言葉を肯定したのはこの部屋の入り口に立っている国王だった。
いつから居たのだろう。
全く気付かなかった。
「はい。すみません」
「あら、別に良いじゃない。婚約者思いなのは良い事よ」
丁度部屋に入ってきた女性がレクスを擁護する。
顔のところどころがレクスと似ているため王妃だということは察しがついた。
「しかし、国王というものはだな………………」
「あら?あなたも私が産気づいた時取り乱してなかったかしら?」
「うっ……………」
国王も妻には勝てないらしい。
初めて見た時の国王の威厳はまず王城で気さくに話し掛けられたことで崩れ、今ので跡形も無くなった気がした。
「本題を忘れるところだったわ。カイ君だったわよね。私はレサテーナ=ウェンテライウ。ローゼちゃんを助けてくれてありがとう」
「いえ、まだ完全に治ったかは分かりませんので…………」
「それでもよ。そのおかげでレクスも落ち着くことが出来たのだし」
王妃がそこまで言った時ローゼさんが目を覚ました。
レクスがすぐさま駆け寄りローゼを抱きしめる。
わぁ、大胆。
………………いや、待てよ。僕も似たようなことを人前で何回かやってる気がする。
周りから見るとこう見えるんだな。
今後は気を付けるようにしよう。
空気的に早く二人きりにしてあげた方が良さそうだったのでローゼさんを回復魔法で手早く診察する。
回復魔法は通常時は少しづつしか魔力を消費しないのだが怪我などがあると魔力の消費が激しくなる。
幸い、ローゼさんは大丈夫そうだったので僕は帰ることにする。
帝国の動きは気になるがこの空気でそれを聞く人は空気を読めない人だけだ。
王城を出ると雨は止んでいた。
そして、空にはローゼさんの無事を祝うように綺麗な虹がかかっている。
また、さっきまで雨が降っていたのが嘘のように雲がないため空にあるのは少しオレンジがかってきた太陽と虹だけだ。
それを見てローゼさんを助けた達成感と帝国の動きに対する不安を感じながらも家に帰るのだった。
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