第45話キングウルフ戦

僕が剣を抜いたことでキングウルフも抗戦の意思を示すかのごとく前へ出て来る。

そして止まったと思った瞬間急加速した。

魔獣は戦いのルールが無い。

よってこういう不意打ちをしてくるのだ。

人間では考えられない加速だったが、警戒をしていたため横に避ける。

それに気づいたキングウルフは急停止、からの振り向いて急加速。

どうやら速度で僕と戦おうとしているのだろう。

知能はそれなりにあるようだ。

速度で戦えば魔法が当たる可能性は低い。

先程の魔法を見て警戒しているのだろう。

突進を余裕をもって避けながらそこまで考えた時キングウルフが完全に止まった。

見た限り体力切れでは無さそうだ。

多分だがこの戦い方でも分が悪いことを理解したのだろう。

僕の隙をうかがっているように見える。

そろそろ僕から攻めようかと思っていると、

「ごめんなさい!!何でもするので命だけでも助けてください」

僕は目と耳を疑った。

確かにキングウルフが言葉を発していたのだ。

「お前、喋れたの?」

戦い方から知能が高いのは分かっていたが人語を理解して話しているとなると本当に高いのだろう。

魔獣の知能が高いとは戦い方などから判断される。

それはつまり人語を話すことはほとんど無くそれでは判別出来ないということを表している。

「実はロウオウなんです」

「えっ?」

それって漢字では狼王だよね?

いや、それって結局キングウルフじゃない?

「突然変異で生まれたんです。皆からはキングウルフだと思われてましたが。生まれたばかりなので。」

「何で生まれたばかりでそんなに人語ペラペラなの?」

「さっき僕の群れを対処していた人達の言葉を聞いて理解して再現しました」

これを天才というのではないだろうか。

戦闘中に使う言葉何て限られてるしな。

待てよ。これは嘘か?

「それは信じられないな。生まれたばかりは嘘じゃないのか?」

「えっと嘘じゃないです。申し訳ないですがあなた様の記憶を少し覗かせて貰いましてそれで学びました。ごめんなさい」

僕の記憶を覗いたのか。

ということは前世のこととかも筒抜けになっていると考えた方が良いな。

残された手段は二つといったところか。

一つはこの場で討伐してしまうこと。

これが一番確実に秘密を守れるし手間もここで終わる。

もう一つはこいつを飼うということ。

秘密ももれる可能性はあるが放置しておくよりマシになる。

それに命乞いをしてきた相手を殺したくない。

凄く罪悪感が湧くのだ。

それをなくせるのだからこちらを選びたい。

しかし、こちらにすると今後の世話をしなければならない。

また、体の大きさを考えると何処かを用意しないと……………

「悪いオオカミじゃないです!!助けてください」

これはあの人気RPGをやっている僕には「ボク わるい○○○○じゃないよ」というセリフを思い出させるものだった。

ちょっと懐かしさも感じつつどうにか飼うことが出来ないか考える。

「ねぇ、小さくなれたりしない?」

小さくなれるのであれば問題はほぼ解決する。

とは言ってもそんなことは出来ないと思うので駄目もとだ。

「出来ますよ」

「そうだよな。やっぱり出来……………

えっ!出来るの?」

「はい、というかこの姿が仮初めの姿でして元は小さいです」

と言っているロウオウに靄がかかる。

しばらくするとその靄は消えた。

そこには手のひらサイズのオオカミがいた。

毛並みは整い、銀色と灰色の中間のような毛色。

そして、純粋そうで真ん丸の目は動物を飼った事が無い僕に飼うことを決心させるほどだった。

これはマイにも話すべきだと思い、小さくなったロウオウに肩に乗って貰い皆の所へ行く。

これはまるであの人気アニメでよく見る光景そのものだ。

乗ってるのが違うけど。

そういえばあの主人公は変わったんだっけ?

その時はもう見てなかったが少し寂しい気持ちになったことを覚えている。

っと最近前世の事を思い出して脱線することが多くなってるな。

気をつけよう。

そんなことを思いながら急いでもなかったので歩いて行く。

皆に近づいていくと皆がこちらを向いて警戒している。

あれ?僕は敵ですか?

「えっと……………皆どうしたの?」

「どうしたの?では無いわ!その肩の奴は何だ?」

「ああ、そういうことね。この子については心配ないよ。この子の事でマイに相談があるんだけどさ。この子、家で飼わない?」

「私は問題ないですよ。その子触ってみても良い?」

ロウオウに目を向けると頷いたので、良いよと言いマイに近づく。

するとロウオウは近づいたタイミングで僕の肩からマイの方に飛び込んだ。

それに驚いたマイだったが次の瞬間にはロウオウにメロメロになっていた。

こうしてペットを飼うことになった。

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