第44話森

翌朝。

レクスが夕べはお楽しみだったなと言ってきた。

それに思わずむせてしまう。

別にしたわけではないよ。

ただレクスの言葉がある人気RPGの特定の状況で宿屋に泊まると言われるセリフとかぶっていたからである。

僕もそのセリフを聞くためにわざわざ宿屋に泊まりにいったっけ。

今思うと言われるセリフが分かっているのにわざわざ行くって馬鹿馬鹿しいな。

前世の事を言えるのはマイとレクスのみで双子には話してないため弁明出来ない。

そのため、双子には暖かい日で見られ、レクスは分かりやすすぎる反応をされたことに困る。

マイは僕がなぜそんな反応をしたのか困惑している。

こんな状況になったので朝から精神的に疲れた。

集合は正午なので時間にまだ余裕はある。

なのでゆっくり準備をしてこの拠点の後片付けをした。

そして集合場所に向か始めた瞬間

「ウオオオオオオン」

「!!」

予期せぬ音に体がビクッとする。

前世でも驚かしてくるのは苦手だったな。

一瞬前世の事を思い出していたが今はそれどころではない。

「今のって」

「ああ、間違いなく下級や中級のものではない」

「だよな。何なら集合場所のあたりから聞こえなかったか?」

「えっと確かにその方向でした」

「行かねぇとやべぇんじゃねぇか?」

「急ごう!」

こうして集合場所へ駆けだした。

移動魔法は使えない。

理由はここが森で移動先の安全を確認できないから。

移動した場所が魔獣の群れの中心とかだったら死ぬことは無いとは思うが相当時間がかかる。

それにまだ意図した場所に移動できない。

いや、出来はするけど誤差が出る。

開けた所で使うなら問題ないけどこういう森だとその誤差で痛い目に遭う可能性がある。

そして、何より僕しか移動魔法を使えない。

教えようとはしたのだがイメージを伝えるのが難しい。

僕のイメージは前世のアニメなのでこの世界の人には分からない。

だから僕の魔法を見せてイメージして貰おうと考えたのだが、それでやって貰うと何故か僕の目の前に移動してしまう。

初めに試したのがレクスだったためさすがに気持ち悪かった。

反応を見るにレクスも同じ気持ちだったようだ。

仲が良いとはいえ男同士がめっちゃ近距離で向かい合うなんて……………

二度とごめんだ。

その後マイもやってみたのだが結果は一緒。

マイだったら全然嬉しい。

そのまま抱きしめたい気持ちを抑えるのが大変だったけど。

まあ、そんなわけで試した二人がどちらも僕の前にしか移動できなかったので、教えることを諦めたわけだ。

何故そうなるか定かでは無いがおそらく、僕の魔法をイメージするにあたって僕までイメージしてしまうのが原因だと思う。

頭の中で回想シーンに入っていたがそろそろ集合場所が見えてくるはずだ。


集合場所が見えてきた。

そこにはオオカミ型の魔獣が数え切れないほどいた。

そして奥には特に大きい個体が見える。

幸いまだ生徒は来てなかったみたいだが手前では先生方が対処していた。

「あの奥のがボスっぽいな」

「はぁ、はぁ、あれはキングウルフだ。

はぁ、はぁ、単体では上級だが……………群れを率いているのは……………最上級に匹敵すると言われている」

走っているせいかレクスは息がきれきれになっている。

他の人に合わせた速度で走った方が良かったかな。

ソラとの訓練で走るのが速くなったんだよね。

レクス以外もついてくるのがやっとだったようだ。

ということで対処は僕がやることになる。


まずは先生方を巻き込まないように群れの奥の方で風を起こす。

もちろん風魔法だ。

イメージは竜巻。

その範囲にいた奴は傷だらけになりながら舞い上がり、そこから落ちることで致命傷をうけていた。

それと同時に先生方に僕が対処する旨を伝える。

さっきの魔法を見ていたようであっさり許可された。というか頼まれた。

危険だし生徒には任せないのかと思ってたけど、背に腹はかえられないのか本当にあっさりだった。

集合場所はある程度の人数が集まれるような場所にしていたためこのあたりはあまり木々は無い。

しかし、火魔法はやめた方が良いだろう。

いくら周りに木々がなくても森の中なのだ。

山火事とかこの群れより厄介だ。

ということで引き続き風魔法を使う。

さっきよりも大きい竜巻を手前に生み出した。

それを操作して群れを一掃していく。

どんどん魔獣が吹っ飛んでいくので気持ちいい。

前世でこういうゲームがあったら1週間位はハマったかもしれない。

こういう爽快感があるゲームって楽しかったなとか思っているともうキングウルフしか残って無かった。

大きいだけあってこの程度の竜巻では持ち上げられないようだ。

僕はインベントリから剣を出して抜き戦闘に備え構えた。

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