第42話備え

休み明けの学校。

だいたいの人が憂鬱な気持ちで学校に向かっている中、僕はまた買い物の時のような視線を感じている。

感じているのは僕だけだが向けられているのは僕達というべきだろう。

理由は以前と同じ。

普段通り学校に行こうとしていたがマイが腕を組んできたのだ。

嫌というわけでもないし王城までだと思っていたのでそのままにしていたんだけど王城について、レクスと合流した後もその状態が続いたのだ。

レクスにはあきれられたが僕にはこれを振りほどく事は出来ない。

それにしてもマイはこの視線を感じないのだろうか。

僕としては視線を送る側の気持ちがいたいほど分かるのでちょっと心苦しい。

前世の自分を見ているようだ。

そんなわけでいつもより長く感じた学校までの道のりだったが何か起こることはなかった。

って僕は何を警戒してんだ?

この王都は治安が良いのは分かってるんだけどな。

もしかすると帝国の話を聞いて少し気を張り詰めていたのかもしれない。

やっぱり何か備えておくべきかもしれないな。

そう考えながら授業を受けていた。

時々発言を求められ詰まる場面があったがそれはご愛敬というものだろう。

どうか見逃してください。

他のことを考えていただけなので。

……………

なんか自分で墓穴を掘ってる気がするのでこの辺で辞めておこう。

幸い先生方から怒られることはなかった。

そしてクラブ活動の時間になったのだが今日は自主練にした。

だいたいは僕が何かやることを指示している。

といっても方針を決めるだけで後は各自でやっている。

だから自主練でもいけるのではないかと思ったわけだ。

別にこれからも自主練にしてサボろうとは考えてないからね。

まあ、前世の部活では自主練の時必ず休んでいたので説得力は無いかもしれない。

僕も言ってるそばからちょっと揺れている。

しかし、マイやレクスと一緒に帰らないといけないのでサボることはないと思う。

そして今回自主練にした本命の理由は帝国への対策だ。

それを考えていたおかげで授業は短く……………じゃなくて考えていたせいで授業の内容は全く入ってこなかった。

個人に出来る対策は少ない。

ということで僕は新しい魔法を考えることにした。

思いついたのは今のところ移動魔法。

某人気アニメに出て来る何処にでも行ける秘密道具まではいかなくても数メートル移動出来ただけで戦闘に役に立ったりする。

戦闘に直結するのは攻撃魔法だが、それはもう開発し尽くしていてアイデアが出てこない。

前世の記憶にあるどのRPGよりも種類があると自負している。

というかそれで見たことがあるものを全て再現したので当然とも言えるのだが。

なぜ今まで移動魔法をつくらなかったのかって?

必要がなかったとしかいえない。

だってソラと訓練しているときはそもそも移動も訓練になっていたのでつくった所で意味がなかった。

使ったら問答無用で訓練がきつくなることは容易に想像出来る。

王都に来てからは買い物は近くで出来るし、王城も学校も徒歩でいける距離。

旅の時だって移動は馬車の中だったから快適だったし。

そもそも急いでなかったからというのもある。

そんな経緯を僕が魔法をつくると聞いて付き添うといったレクスとマイに話した。

2人とも苦笑いだった。

そもそも本気で新しい魔法をつくるとは思ってなかったらしい。

せいぜい今ある魔法を改造して少し強くする程度だと考えていたようだ。

そういう反応も慣れてきたのでそのまま魔法をつくっていく。

魔法をつくるのに大事なのはイメージ。

魔法を使うときも大事だが、つくるときにはより重要になる。

その点は前世の記憶がある分つくりやすいと言えるだろう。

僕がイメージするのはさっきの秘密道具ではなくアニメで良くあった瞬間移動。

苦戦するかと思ってたんだけど意外とイメージ通りに出来た。

移動距離は最大2メートル位。

戦闘時には十分に使える距離だ。

しかし、移動するには不便だと思う。

そう思い距離が伸びるように改良していく。

最終的に1キロ位は移動できるようになった。

それ以上は帰ってこれるか不安なので辞めておいた。

多分もう少し長い距離でも移動できると思う。

こうして移動魔法は完成した。

カイが魔法づくりに夢中になっていた間マイとレクスが信じられないものを見るかのようにみていたのをカイは気づいていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る