第39話告白

ソラと話した後の朝食。

カイは言い出せずにいた。

幸いその日は休日だったため時間はある。

そう思っていた。

しかし、結局言い出せず夕食の時間帯になってきている。

今日はスタール亭でマイの両親と夕食をとることになっていた。

当然マイも一緒だ。

ただ僕がいつもと違うことに違和感を覚えたようで大丈夫かとしきりに声をかけてきた。

そのけなげさと自分を逃げられないようにするために夕食の時に話すと約束してしまった。

夕食が始まっても約束しているとはいえ中々言い出せずにいるとマイが

「そういえば、カイ君話す事があるんだよね?」

言い出すチャンスを与えてくれる。

「あ、うん……………」

ただし中々覚悟が決まらない。

僕が中々言い出さないことでこの場は沈黙が続く。

それを破ったのは僕ではなかった。

「言いにくいことは言わなくても良いんだよ」

マイから僕を心配した発言。

本当に良い娘だと思うと同時にやはり話さなければという思いが再度浮かび、

「いや、話すよ。これは絶対に話しておかなければならないことだから。……………」

こうして僕は話し始めた。

この世界と違う世界で死んで転生したこと。

その転生には小さき天使が関わっていること。

スタール家の先祖がその小さき天使の守護者をしていたことを最近知ったことなど今に至るほぼ全てを話した。

さすがに訓練一つ一つの内容とかまでは話してないがそこまで詳細に話していると時間が足りないし訓練の内容を話すとなるとそれはまた別の意味で覚悟を決めなければならない。

と、違うことを考えて緊張を紛らわしているのだが、僕の発言からまた沈黙が続いている。

「1つ聞いておきたい」

そう言うのはロヴァイトさん。

「なんでしょう」

「君はマイがスタール家の人間だから付き合った、もしくは小さき天使に言われたから付き合ったわけではないのだな?」

「それはもちろんそうです。それについては嘘偽りはありません。しかし、先程も言いましたが僕は小さき天使のお願いをきっちり果たしたいと考えています。それには危険な目に合う可能性が高いです。この中で反対する人が一人でもいるなら……………」

「私はいくらお母さん、お父さんに反対されてもカイ君についていくよ」

僕の言葉を遮ったのはマイだった。

「私は2人をくっつけようとした張本人だからとやかく言うつもりわないわよ。それを抜きにしてもカイ君がいい人なのは分かってるから」

「俺としては君と手合わせをして君の強さそして君の信念の強さを感じた。君にマイを任せたいという思いは変わらない」

「え?でも……………」

「でもじゃありません。誰も反対しなかったんですからその続きを言うことは許しません」

今回のマイは怒ってるから敬語になってるのではなく真剣なためになってるということが分かった。

本当に周りの人に恵まれてるな。

そう思っていると

「ちょ、ちょっとカイ君?」

知らぬ間に僕の目から涙が溢れていた。

僕はこの話をすれば、これからは関わらないでくれと言われる可能性が高いと考えていた。

僕だって友達が転生しましたとか小さき天使に会ったとか言う怪しい奴と結婚するって言ったら反対すると思う。

それが親族ならなおさらだと思っていた。

それが蓋を開けてみれば真逆の反応。

この世界に転生してから泣いたのは初めてかもしれない。

なんなら転生前もほとんど泣くことは無かったから本当に久しぶりだ。

思い返してみるとこんなに温かい気持ちで泣いたのは本当に初めてだと思う。

もしこの場面をレクスが見たら後々イジるネタにしていたであろう。

まあレクスがいたとしてもこの場では空気を読みイジることはなかっただろう。

僕が泣き止む頃には夕食は終わり、家に帰る時間が近づいていた。

ちなみに泣き止むまでマイが背中をさすってくれた。

嬉しかったがそのせいでロヴァイトさん達から生暖かい視線が……………

僕は結構その視線が気になったんだけどマイは一切気にもとめていない感じだった。

でもそれ以外は何事もなく家に帰ったのだった。


家に帰ると、

「カイ君が何者であっても私がカイ君を好きなことは変わりないよ」

急の言葉に少し驚く。

「ありがとう。でも急にどうしたの?」

「カイ君本当にこれで良いのか考えていたでしょ」

……………確かに思っていたかもしれない。

「私はカイ君が目の前からいなくなることの方が嫌だよ」

そう言うマイの瞳には涙が浮かんでいる。

それを見て、咄嗟に抱きしめた。

「ごめん、僕は本当に不甲斐ないな」

「そんなカイ君も好きですよ」

「こんな僕だけどこれからも彼女でいてくれる?」

「もちろん。これからもよろしくお願いします」

その後気が済むまで抱きしめ合った僕達はお風呂に入ってからベッドに入った。

普段より早くベッドに入ったが寝たのはいつもよりも遅い時間だった。

その日のことは2人にとってとても大切な思い出になったのだった。

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