第34話気になる話2

少し時間は遡る。

魔法実技の授業が始まった頃。

「では始めます」

「起立、気をつけ、礼」

『お願いします』

「お願いします。今日はルートを使った計算をします」

ここはあるクラスの教室。

「そこ、寝たらダメですよ」

どうやらどこの世界でも授業は眠くなるらしい。

と言っても始まってすぐに寝るのは異常というか手慣れているというか………

他にも授業がつまらない者もいるようだ。

視線が黒板以外の様々な方向に向いている。

先生がそれを注意しようとしたとき、

「なっ!?」

ある生徒が声をあげた。

視線がその生徒に集まる。

その生徒は視線が集まったことにも気づかず窓を注視している。

この場合は窓の外を注視しているという方が正しいかもしれない。

その生徒の驚きようから他の生徒、そして先生も窓の外へ視線を向ける。

見たのは見えるはずのない魔力。

魔力は意識しないと見えないのだがその魔力が大きすぎて意識しなくても見えてしまったのだ。

もちろんこの魔力はカイによるものである。

皆授業どころではなくじっと窓の外を見ている。

それはカイが魔力を霧散させるまで続いた。

「なんだったんだ?」

どのクラスもだいたいこんな様子だった。




そんなことになっていたとは知らないカイは現在マイに叱られていた。

理由は言わなくても分かるだろう。

魔法実技の授業でやり過ぎた件だ。

皆から恐れられたらどうするんだとか自重したほうが良いと言われてからの同時発動は意味が分からないとか様々なことを言われた。

概ね僕を思っての発言だったので謝ることしか出来なかった。

お叱りが終わった後マイはすぐに切り替えて普段通りになった。

こちらとしては若干困るのだが気まずい沈黙よりはマシだ。

段々僕も普段道りになっていけたと思う。

その後はずっと立ちっぱなしの授業だったので疲れていたのかすぐに眠りについた。






「やっ!久しぶり」

僕に呼びかけたのは言わずもがなソラだ。

「久しぶり。前の続き?」

「うん。もちろんそのつもりだよ」

制限時間までに終わらせるべくソラは語り出す。

「僕は小さき天使の片割れなんだ」

僕も小さき天使の話を聞きお願いを聞いたときそうなんじゃないかと思ってた。けど

「片割れ?」

「うん。僕達小さき天使は体こそ2つあったけど意思は1つだったはずなんだ。ただ、片方が傷つけられたときそこにあるはずのないもう一つの意思が生まれた。それに伴い2つの体を動かせていたのが2つ目の体は動かしにくくなった。初めは傷をおってしまったからだと思いこの体を主に使って何とか平和にしようとしていたんだ。そして起こったのが……」

「もう一つの体が勝手に動いた……」

「そう。僕にはそれを止めることも防ぐことも元に戻すことにも力不足だった。ただ結果的に戦争が終わりもう一つの体にも若干僕の意識が残ってたみたいでそれに従っている魔族も大人しかった。2つの体を持っていたとはいえあの戦争を止めるにはどうしても力不足だった。」

「そのもう一つの体は今どうなっているんだ?ていうか友達を助けてって言ってなかったっけ?」

「体に関しては僕の意思で動かせなくなってから認識出来なくなったんだ。だから分からない。友達に関しては分かりやすくするためもあるけどもう僕の体と言えるか怪しいからかな。あっ、時間がきたみたい。続きはまた今度ね」

「ああ」





目が覚めるとやっぱり少し早めだった。

それにしてもやっぱり小さき天使だったか。

通りで強いわけだ。

それはそれで同じくらい強いロヴァイトさんが恐くなってくるな。

ていうか1つの意思で2つの体を動かすことは可能だったんだな。

前世では体が2つあったら仕事と趣味を同時に出来るのになと思ったことはあるけど現実的に考えて2つの体があったとしても中々同時に違うことをするのは難しいだろう。

それが出来ていたのならソラは本当にただものではなかったのかもしれない。

というかソラ×2ってどんだけ強いんだよ。

絶対負けるわ。

それでも止められなかった戦争。

過去の戦争はそれほど凄かったのかもしれない。

もしくは前の方が魔法などの技術が高かったのかもしれない。

色々考えていると時間が過ぎていてマイが起きた。

そこで思考は中断することにし、学校に行く準備を始めるのだった。

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