第35話戦争
戦場の後方、そこには今回総司令官を任されたアゴットと副司令のアレスがいた。
戦況は優勢。
相手が弱いということはないが圧倒的な数の差があった。
その差をしれば普通なら降伏してきたりもするものだがその気配はなかった。
降伏してもらう為に出来るだけ多くの兵を連れてきたのだが結局戦になってしまった。
アゴットは普段の訓練では厳しい面もあるが根は優しい人物なのだ。
そのため慕われていると言っても良い。
そして警備軍長になれたのもこれが大きな1つの理由だ。
彼が警備軍長についたとき彼よりも武力では勝っている者も数人いた。
では何故彼が選ばれたのか。
人柄だ。
別に他の者の人柄が悪かったわけではない。
警備軍とは攻めるではなく守る事が主な仕事だ。
そのため優しい者つまり周りに気を配る事が出来る者が推薦される。
普通は2~3人が推薦されるのだが、彼の時は彼以外考えられないとアゴットのみが推薦された。
そんなアゴットとしては相手が降伏し、血を流さずに終わることを望んでいた。
とはいえ始まったことはどうしようもないと割り切っているのだが、気は進まないようである。
兵達の前でこそ普段通りに振る舞っているが、1人の時やアレスと2人の時には時折暗い顔になる。
それを見ていたアレスはやはりアゴットという人物は尊敬に値すると思うと同時にアゴットのことを心配していた。
アゴットの良いところは優しいところなのだが指揮官としては優しさは邪魔にしかならない。
その邪魔なものを抱えたまま指揮官をしているのだ。
相当なストレスを感じていることだろう。
それに兵達の前では気丈に振る舞わなければ士気が落ちる。
そのためアレスはアゴットと2人きりの時は彼が気を張らないように空気になるか、明るい話題を出すなどしている。
そんな配慮が出来る彼もまた警備軍長にふさわしい人物なのだろう。
アゴットも気をつかわれていることに気づいているようでアレスの前では気を張ることはなくなった。
そして、警備軍を任せられるのはアレスだと密かに思ったのだった。
そんな彼らに1人の兵が走ってくる。
「敵の司令官を捕縛しました!!」
討ち取るではなく捕縛なのは警備軍のあまり人を傷つけたくないという信念からだろう。
「よくやった。その司令官は逃げ出さないように厳重にしてくれ」
「はっ」
そう言ってかけていく兵。
その様子を見ながらアゴットは後は降伏を待つだけだと思っていた。
それは他の者達も同じ考えだった。
数日たっても降伏の申し出はなくタキア国王は籠城した。
勝ち目が無いはずなのに何故籠城するのか疑問に思い調べたが何もなく、城に攻めいるべきかアゴットとアレスは話し合っている。
「やはり攻めいるしかないか」
「そうですね。ここまで追い詰めても降伏しないのであればそうするしかないでしょう」
しかしとアレスは続ける。
「今さら籠城をするのはやはり疑問に思います」
「そうだな。調べさせても分からないというのが厄介だ」
「やはり籠城をするということは援軍が期待出来ると考えている可能性が高いですね」
「しかし、周辺の国は例外なく我らに協力している。遠くの国からだとしてもそういう動きがあれば国からしらせがくる。それがないということは援軍がくる可能性は低い」
「では城に何か細工があるのでしょうか?」
「それはないだろうな。あの国は城をとても大切にしていたはずだ。そんな城を汚すようなことをしないだろう」
この世界では城に罠を仕掛けることはあるが罠を仕掛ける=城を汚すと認識されている。
そしてタキア王国の城といえばこの世界最古の城だと言われている。
それを見るために観光客が来るほどだ。
そんな最古の城が残っている理由、それはその城をタキア王家の家宝として大切にしてきたからだ。
そして王家の人間はそこで生まれ育つという風習もある。
そんな城を汚すわけはないだろうと考えたのである。
「では考えなく籠城しているということでしょうか」
「分からんな。しかし悩んでいても仕方ない。細心の注意を払い城へ攻め入ろう」
「了解しました」
こうして城への攻め入りが決定した。
タキア王国、王城の一室。
以前国王と怪しい人物が話していたその場に国王はいた。
「あの者はまだ来ないのか!」
国王は最上級の群れを引き連れて怪しい人物が来てくれると思っていた。
しかし、待っても中々来ない。
怪しい人物が来ないことが相当頭にきているのかとても荒れている。
もっともこうなった原因は怪しい人物なので来るはずもないのだが。
それを知らない国王は籠城し時間を稼いでいるのだった。
アゴット達は今城の中にいる。
そこで兵達によってあっさり捕まった国王に質問していた。
他の国の軍人ならば尋問をするのだろうがそれはしないつもりのようだ。
「単刀直入に聞きます。何故籠城したのですか?」
「あの者が来ればこんなことには……………」
「あの者とは?」
「それは帝国から来たというっ……………」
「大丈夫ですか!」
急に苦しみだした国王はその後死因不明で亡くなったのだった。
こうして戦争は終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます