第26話特訓

ついに始まってしまったよ。

ロヴァイトさんによる武術の訓練。

わざわざ王都を出て来ました。

ちなみにロヴァイトさんは魔法が苦手だそうで戦闘では使わないらしい。

それを聞いてもっと嫌な予感がしてきた。

魔法を使わないとなると武術だけでSランクになったわけだ。

構えは無駄がなく隙もない。

何より向かい合っただけで分かる強者感。

「さあ、来い!」

そう言われた瞬間に僕はロヴァイトさんの方に走って木剣を振るう。

今何をしているのかというと模擬戦だ。

僕の実力を正確に測るためにするそうだ。

なので魔法も禁止だ。

僕はフェイントなども混ぜながら攻める。

だが、ロヴァイトさんは足を動かすこともなく持っている木剣で受け流す。

ここまで格上だとは思ってなかった。

もちろん魔法を使っての真剣勝負だったら勝率は80パーセント位だろう。

しかし、魔法なしだと勝てる希望が見えない。

「そこまで!」

ロヴァイトさんから声がかかった。

「はぁ、はぁ……………さすがですね」

「ありがとう。しかし、今この段階まで来ているとは驚きだ」

「まだまだですけどね」

「そんなことはないぞ。大体俺が模擬戦をするときは片足立ちで目を使わずにするからな。それに比べれば良い方だと思わないか?」

「そ、そうですか」

冗談か本当のことか分からないけどさっきの様子的に出来そうだから怖い。

そしてなによりこの後何が待っているのか分からないのが怖い。





3時間後、やっと終わった。

今は家に帰ってきて夕食を食べている。

ロヴァイトさんはスタール亭に帰っていった。

何をしていたのかというとずっと模擬戦。

実戦に近いことをした方が成長しやすいとのこと。

3時間ぶっ続けだったのでめっちゃ疲れた。

結局明日からも学校が始まるまですることになった。

ロヴァイトさん仕事は?

と思って聞いてみたが、問題ないとのことだった。

何でも午前中にギルドの依頼を達成し、午後から僕の訓練をするとのこと。

そんな無理しなくても良いのに……………

というか最近ソラがイジって来ないな。

寝てんのかな?

それよりも考えないといけないのは明日マイに教える内容だ。

といっても魔方陣とインベントリがあれば余程のことがない限り困らない。

ということは魔方陣をより使いやすくする魔法を教えようか。

こうして思考が一段落したとき

「大丈夫?」

そう声をかけてきたのはマイだ。

「ん?何が?」

「お父さんいつにも増していきいきして張り切っていたから」

訓練の様子をマイも見学していたのだ。

「いや、正直クタクタだよ」

「断れば良かったのに」

「それはダメだよ。あそこまで本気で教えてくれてるんだから」

「模擬戦であんなに楽しそうなお父さん初めて見たよ」

「あれだけ強かったらしょうがないと思うよ」

「そう言いながらついて行けるカイ君はすごいね。それに比べて私は……………」

少し悔しそうに続ける。

「最上級どころか上級、中級ですら守ってもらってばかり……………」

これは自分を責めてる感じがするな。

「マイ、僕は才能を持ってたけどそれを無駄にした奴を知ってるんだ。そいつは初めは才能でなんとかなっていて努力をしなかった。その結果最後には周りに抜かれていた。

それと比べるとマイは自分で努力している。だから今までを悔いることよりも今後のために努力することの方が大切だよ」

それを聞いたマイは少し呆けている。

うん?なんか変なこと言ったかな?

「………ありがとう。カイ君は大人みたいなことを言うね」

あっ!!そういえば僕の体まだ14歳だった。

普通に忘れてた。

この世界の成人は12歳なので一応大人とされている。

けれど、二十歳になる前位までは親元で生活するのが一般的なのでまだ子供と認識されることが多い。

ギルドとかだとそんなことはないけど。

僕の経験談みたいに言ったけどこの歳でこんな経験してる人はいないだろう。

「まあ、格好つけて言ったけどある人の受け売りなんだよね」

「カイ君の周りには良い人がいたんだね」

「そうだね」

本当にそうだ。この世界に来てからソラから始まりレクスやマイ、アゴットさんその他にもたくさん良い人に囲まれている。

これを考えると転生させてくれたソラには感謝だな。

そして夕食を食べ終わりお風呂なども済ませ寝ることになった。

今日もマイと同じベッドで寝たのだが、ロヴァイトさんの訓練で疲れていたからすぐに寝付けた。



気がつくと僕は真っ白な場所にいた。

周りを見渡すと姿が見えないはずのソラの姿があった。

「久しぶりだね、カイ。」

えっ?なんだこの状況。

こうして謎の場所でソラと話すことになった。

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