第13話マイの母親が乗り気でした
魔法の練習は僕が休みの時しか無理だと言って、また来ると約束し家に帰ってきた。
それにしても可愛いかったな~。
(さっさとくっついちまえよ)
僕がマイに会ってからソラがいきいきしている気がする。水を得た魚みたいに。この場合はいじるネタを見つけていきいきしているのだろう。
「そういうのはもっと交友を深めてからの方が良いんだよ。」
(誰かにとられても良いなら別に良いけど。)
「なっ!!」
(だって今日だって9人に狙われてたんだよ?)
「それは…………そうだけど……」
(まあカイの好きなようにやると良いよ。)
「お、おう。ありがとな。」
(ハハハ、面白いね。焦らなくても大丈夫だと思うよ。彼氏いなさそうだったしそれに…………)
「それに何だよ。」
(いや、これはカイが自分で気づくべきだから僕からは言えないよ。)
「何だよ。ていうかなんで彼氏いなさそうだって言えるんだ?」
(う~ん、直感かな。)
実のところソラはマイもカイに恋心を抱いていることに気づいている。だからこそ彼氏はいないだろうと言えたのだ。ただその恋心を他人が当事者に教えるべきではないと判断しレクスと同じように感で判断したと言ったのである。
「お前も感で動く奴か。
はぁ。まあ良いか。
明日レクスにどれくらい休みが増えるのか聞いてみよう。」
その後は何事もなく、変わったことといえばレクスが来なかったこと位だった。
翌日。再び護衛としてレクスの部屋に来たのだがそこには、疲れきって呆然としているレクスがいた。
「おい、大丈夫か?」
そう声をかけるが反応がない。
「おいって、大丈夫か?」
今度は肩を掴み揺らしながら問いかけた。
「うん?ああカイか大丈夫だ。いや、大丈夫ではないかもしれない。」
「何があったんだ?」
「ああ、それはな…………」
レクスが言うには初めに怒られてメンタルブレイクされてからの最近のことについて根掘り葉掘り聞かれ挙げ句の果てには護衛の家によく行くならそこに住むと言い出したらしい。それはいろいろと問題があるのでダメだと言ったらやましい事があるのではないかと疑われまた怒りそうになっているのを見てヒヤヒヤしながら話していたそうだ。気が抜けない状況が昼食の後から夕食の前まで続いたらしい。
大分尻に敷かれているな。次期国王がこんなんで良いのか?まあ家族内では良いのか。
「それに懲りたら婚約者をないがしろにしないことだな。」
「ただそうなるとお前の休みが増える。
学校も後1カ月は始まらない。
そうなると退屈じゃないか?」
「僕にだって用事はあるから別に良いよ。」
「ふむ、用事か…………まさか彼女でも出来たか?」
こいつの感エグいな。
「まだ彼女じゃねぇよ!!」
「まだと言うことは……………
よし、分かった。お前は今日から1週間休みだ。仲を深める良いチャンスだろ?」
あ、いつの間にか好きな子がいることバレた。しかも、なんでノリノリ何だよ。
ただここまでバレたら隠せない。
「その間レクスはどうするんだ?」
「私はローゼと過ごす。最近仕事をし過ぎだと言われていたからちょうど良い。」
ローゼ?ああ婚約者の名前か。休むついでに機嫌とるってか。大変だな。
「とりあえず今日から1週間休みなんだな。
ちょっと寄るとこあるから帰るよ。」
「ああ、未来の彼女のとこに行くのか?
せいぜい頑張って他の男にとられないようにな。」
「お、おう。」
つい返事してしまった。ソラと同じこと言いやがって。心配になるじゃないか。
用事と言うのはマイに魔法の練習がいつ出来るか教えるため。なのでレクスの感は当たっている。本当に侮れないな。
ということでマイの実家である飲食店、スタール亭に行く。
中に入ると昨日と同じようにマイの母親が出迎えてくれた。
「まあ、マイに会いに来たんですか?」
「ええ、約束してましたので。」
「そうですか。今後ともマイをよろしくお願いします。」
うん?なんか娘の彼氏に言っている感じだな。この人の中ではもう付き合っていることになっているのかもしれない。
そう思っていると、
「ちょ、ちょっと何言ってるの!!」
「あら、マイあなたに用事があるみたいよ。」
そう言われたマイは少し顔を赤らめた。カイは気づいていないが。
「とりあえず私の部屋来て」
腕を掴まれ引っ張っていかれる。
その様子をマイの母親は微笑みながら見送っていた。
結局部屋まで引っ張っていかれた。
助けて貰ったとはいえ昨日会ったばかりの男を部屋に入れて良いのかと思ったがそれだけ信用して貰えたのだと思うことにした。
部屋に着くと腕を話してくれた。
部屋はさすが女子の部屋というかとてもきれいに整頓されている。
床に敷かれたカーペットの上に座るように促され、座るとマイは対面に座った。
「それでいつから練習出来るんですか?」
目をキラキラさせながら言われた。
「お、おう。それがな今日から1週間休みを貰ったから明日からでも出来るぞ。」
「本当に?今すぐ準備始めます。
そういえばどこで練習するんですか?」
「それについては考えてる事があるんだ。
だから大丈夫。」
「お母さんにも言わないと。」
そう言ってマイは母親のところまで行ってしまった。女子の部屋に置いて行かれる僕の気持ちになって欲しい。
少しするとマイが母親を伴って帰ってきた。
「2人で魔法の練習をするんですって?」
「はい、ダメでしたか?」
「いえいえ、魔法の練習という名のデートなんでしょう?」
図星だ。顔が赤くなってる気がする。マイも同様に赤くなっているのだが今のカイに気づく余裕はない。
「あら、図星のようね。それならいっそ彼の家に泊まってきなさい、マイ。」
「えっ、ちょっと何言ってるの!!」
マイも動揺している。
「だって彼レクス様の護衛なんでしょう?
お金の心配はないし、強いんだから文句の付け所がないわ。
それに早くしないと他の子にとられるわよ?」
小声で言っているので僕には聞こえない。
何を話してるんだろう?
「あ、あの家に泊まっても良いですか?」
本当に何を言われたんだ。乗り気になってるよ。
「あ、ああ。良いよ。」
好きな子との同居イベントって。嬉しい以前に気まずい。
「じゃあこれから1週間マイをよろしくお願いします。」
「は、はい。」
そうして、嬉しいが心配な1週間が始まるのだった。
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