第12話その頃

時は少し遡る。

マイは男の集団に囲まれていた。人見知りで特に男性が苦手の彼女はどうすることも出来ず半ば諦めかけていた。

そんな中で1人の男がこちらに手を伸ばしてくる。ここまでかと思ったその時、その手は私に届く直前に見知らぬ男の人が止めていた。

助けてくれたのは嬉しいが、そこには9人の男達がいる。1人で相手をするのは厳しいだろう。そう思いながらも様子を見ていた。

案の定、男が殴りかかっていったのでその後の惨状を見るのが恐く目を背きうつむいた。

その直後、殴られた音が聞こえた。多分私を助けてくれようとしていた男の人が殴られたのだろう。このまま男達に連れ去られてしまうのだろうと思っていたのだが、一向にその気配がない。不思議に思っていると、

「大丈夫だった?」

そう声をかけられた。さっきの男達の声では無かったので答えようと思い、顔を上げながら、

「あ、はい。あの貴方こそ大丈夫ですか?」

殴られてた音してたし。そう思いながら顔を見る。

見ていると不思議とドキドキしてくる。そのことを不思議に思いながらも返事がないので怪我をしてしまったのだろうかと思い、聞いてみる。

「どこか怪我でもされましたか?」

「い、いやどこも怪我してないよ。」

この時他人とは思えないほどほっとしたことにマイ自身も気づいていない。

「そうですか、良かったです。

この後時間ありますか?お礼をしたくて。」

自分でもそんなことを言ったのが信じられない。男性が苦手な彼女は出来るだけ男性とは関わらないようにしてきた。

しかし、自然とお誘いしたのだ。そう自分の発言に驚いていると、

「時間はあるよ。ただお礼は良いよ。そんなに強い相手でもなかったし。」

その答えに何者なのだろうかという疑問を抱いたのだが、自分を助けてくれた人に聞くのは失礼だと思い遠慮した。

「そうですか。でも助けて頂いたのは事実なので、お礼はします。私の家は飲食店なので、ご飯を食べていきませんか?代金は良いので。」

男の人はこの提案を受け入れたので店に案内する。

この時は1つ忘れていた事がある。それは男を連れて帰ったときの母親の追及がくることだ。案の定、店に入った途端にその母から

「まさかマイもう付きあ」

「付き合ってません!!」

反射的に言ってしまった。

こんな断言しちゃったから嫌われたかも。

そんなことを気にしていると、興奮していると指摘を受けた。もちろん否定したのだが、それを無視して個室に案内するように言われた。

案内して注文するように促すと遠慮しているのか少なめだったが頼んでいる。

その間つい彼の顔をずっと見てしまっていた。いや、目がはなせなくなっていた。

ここまでくるとさすがにマイも自分が抱いている感情が何なのか理解してきた。

私、彼のこと好きかも。それを悟られないように話しかけ、していなかった自己紹介もする。彼も自己紹介してくれたのだが、まさかの王子様の護衛だった。昨日の入学試験でものすごい魔法を使ったと王都中で話題になっているそんな彼にあることをお願いする。

それは、魔法を教えてくれというもの。

それらしい理由を付けたがそれよりも彼にまた会いたい、その思いの方が強い。

その思いを知ってか知らずか快諾してくれた。

こうして、カイとマイは会った瞬間から両思いになり、魔法の練習という会うための名目を手に入れたのだった。


カイとマイがそんなことをしていたころ王城のレクスの部屋では、レクスが疲れきっていた。理由は婚約者からお叱りを受けていたから。好きな者からの言葉は身にしみるものだ。それを今まさに実感していた。

一方の婚約者の方は言いたいことを言ってすっきりした表情になっている。カイ程ではないがレクスに遠慮をしていない。それはレクスがお願いしたことである。それでも始めは遠慮している所があったのだが、そうするとレクスが不機嫌になるのだ。そのレクスの努力?のせいか今では遠慮をしていない。だからこそ叱ったり出来るわけだ。ただ少し叱りすぎたかもしれないとレクスの疲れきった様子を見て思った。

「レクス、さっきのはこれでお終い。お話しましょ。」

「ローゼ悪かったな。」

ローゼというのはレクスの婚約者の名前だ。

オレンジ色の髪を肩甲骨あたりまで伸ばしており見た人皆お淑やかだと思うであろう印象がある。

先ほどの様子を見ていなければだが。

「それを許すかわりに最近のことを聞かせてくださいな。」

それからレクスは最近の話を話し始めたのだが、この後根掘り葉掘り聞かれ別の意味でまた、疲れきることになるのだった。

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