第11話出会い2

入学試験の翌日、レクスは最近ないがしろにしていた婚約者と過ごすということで護衛の仕事は休みだ。婚約者うらやましいな。

そして恋仲になって婚約者になったらしいから余計にうらやましい。

まだ王都に来てレクス以外友人といえる人がいない僕の言うことではないかもしれないが。

そんな僕は外をブラブラしている。

自慢じゃないが給料も結構もらっている。

日本とはお金の価値が違うから定かではないが前世より稼いでいると思う。

ちなみにこの世界のお金は硬貨だけで、下から銅貨、銀貨、金貨、石貨だ。石貨が一番上ってと思ったのは言うまでもない。何でもほとんど採ることが出来ない石を使っていて、模造されにくいらしい。

いくら給料が多いとは言ってもさすがに石貨までは貰ってない。だから見たことがない。

というかこの世界の人でも大半は目にすることがなく、貴族の中にも目にすることがない人もいるのだとか。

石貨を1度でも良いから見てみたいな~なんて思いながら歩いていると、9人位の男が1人の女の子を囲んでいるのが目に入った。女の子危なくないかと思った僕は周りの目を気にしながら透明化の魔法を使い近づき会話を聞くことにする。

「俺達と遊ぼうぜー。」

「そうそう良いお店知ってるんだよ。」

「最後にはお楽しみタイムもあるぜ。」

これは無理やりにでも連れて行かれそうな雰囲気だな。なんて思っていたら1人の男が女の子の腕を掴もうとしている。これは助けた方が良いかと思い、透明化の魔法を解除しながら今にも女の子の腕を掴もうとしている男の腕を掴みながら

「お兄さん、この子嫌がってますよ。」

と言ってみた。これでは引き下がらないだろうけど。

「なっ!!どっから現れやがった。その子嫌なんて一言も言ってないぜ。」

「大の大人が9人も揃って囲ったら思っても言えないでしょう。」

「なめんなよ、ガキが!」

そう言って殴りかかってきた。普通の人間では対処出来ないだろうが僕はソラとの訓練で武器を持ってなくてもある程度戦える。攻撃魔法は王都内は特定の場所以外使用禁止だから論外。特定の場所は、魔法学校の訓練場と練兵場位だったはずだ。

そんなわけで殴り掛かってきた手を取り、もう1人の近づいて来ていた男の方に軌道修正してやる。すると止めることも出来ずそのまま殴った。心の中で笑いながら後の8人は透明化の魔法を使いつつ背後を取り1人1人気絶させていった。そして全員が気絶したのを確認し、囲まれていた女の子の方を向く。

「大丈夫だった?」

女の子はなぜか少しうつむいていたが、

「あ、はい。あの貴方こそ大丈夫ですか?」

そう言いながら顔を上げた。黒髪を肩まで伸ばしていて黒目、顔立ちが整っている女の子だった。どちらかと言うとカワイイ系だな。

………ドタイプだ。やばい、前世でもこんなに一瞬で好きになることなかったのに。

一目惚れして無言になっていた僕を女の子は心配そうに見ながら

「どこか怪我でもされましたか?」

と聞いてきた。心配させている。

ここは一旦冷静になろう。

「い、いや、どこも怪我してないよ。」

「そうですか、良かったです。

この後時間ありますか?お礼をしたくて。」

そう微笑みながら尋ねてきた。可愛い過ぎだろ。そう思いながら

「時間はあるよ。ただお礼は良いよ。そんなに強い相手でもなかったし。」

「そうですか。でも助けて頂いたのは事実なのでお礼はします。私の家は飲食店なので、ご飯を食べていきませんか?代金は良いので。」

そういえば、もうすぐお昼だな。こんな可愛い女の子に誘われたら行くしかない。

(そんなに好きなら告っちまえよ。)

ソラはこの状況を楽しんでやがる。こっちは嫌われないように必死なのに。とりあえず無視だ。

「じゃあお言葉にあまえようかな。」

「では、着いてきて下さい。」

そこから少し歩いた先にその店があった。結構大きいので有名店かもしれない。そう思いながら入って行く。

「ただいま、お母さん。」

「おかえりマイ。あら、そちらの方は?」

「私を助けて頂いたからお礼をするために来ていただいたの。」

「そうなの?娘を助けて頂いてありがとうございます。」

「いえ、当然のことをしたまでですから。」

「あら、とてもいい方じゃない。まさかマイもう付きあ」

「付き合ってません!!」

事実なんだけど即否定はちょっと悲しい。

「あらあら、そんなに興奮しちゃって。」

「興奮してませんから。」

「お礼をするんだったね。個室が一部屋空いてるからそこにお通ししな。」

「はーい」

少し拗ねた感じで返事しているのもまた可愛いな。ダメだ。この子といるとすぐ脱線しちゃう。

(だから告っちまえよ。親は賛成しそうな雰囲気だったぞ。)

告れとうるさいソラはほっとこう。

そして個室に案内された。

注文などを済ませると、女の子、会話からしてマイが話かけてきた。

「改めてありがとうございました。

私はマイ=スタールといいます。」

「僕はカイ=マールス、レクス………王子の護衛をしてるんだ。」

「えっ!!それって入学試験でレクス様より強い魔法を使ったって言うあの?」

それ広まってるんだ。まだ昨日の話なんだけど。ここは否定しないでおこう。マイに嘘をつきたくない。

「そうだよ。」

「あ、あの私に魔法を教えて下さい。」

「お、おう。なんで?」

「私も魔法学校に入学する予定なんです。

ある程度は魔法を使えるんですが授業についていけるか不安で……………」

これはお近づきになれるチャンスかも……………

じゃなくて前世でも進学するときの悩みの1つだったからな。僕が教えることでその不安を解消出来るなら協力するほかない。

(絶対お近づきになれるチャンスとしか思ってないだろ。)

…………図星なのが悔しい。

「僕で良ければ教えるよ。今後、護衛の仕事の休みも増えそうだし。」

そう、休みが増えそうなのである。理由はレクスが最近婚約者と会ってなく、その婚約者の人が怒っているらしい。なので今後そんなことがないようにするだろう。てか、いつもの感で怒られるの察知して会いにいけよ。

まあそんなわけでレクスが婚約者と会っている間は暇になる予定だったのだが、予想よりも充実したものになりそうだ。

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