第6話出会い
僕が行く予定の街は人間の国の中で2大大国と呼ばれている国の1つでウェンテライウ王国の王都ウェンテライウらしい。
日本の県名と県庁所在地の市名が同じことがあるように、国の名前と王都の名前が同じなようだ。
この王国は、国民に優しく、災害が起こった時などはすぐに人員を派遣し人命救助をしたのち被災した人達への支援を保証している。さらに、中等教育学校までの学費は無料にしているようだ。
その分少し税が高くなっているらしいが国民から不満の声はほとんど出ていないらしい。軍事に関しては自分達から攻めることはなく自国の防衛や友好国の防衛などにのみ使うと宣言している。
さすがに日本みたいに軍事力をもたないとまではいってない。
そこまでこの世界は平和でないのだ。
それはおいといて、とにかくすごく良い国だそうだ。
ところで、もう一つの大国は…………あれ?名前忘れちゃった。
とりあえずなんとか帝国だった気がするから今は帝国と言うことにする。
その帝国は…………正直良い面をあげることが出来ない。
民は重税に苦しめられまともに教育を受けることも出来ない。
また、賄賂なども横行しており、裏社会の人間が多数出入りしている。
そんな裏社会の人間も多いわけだから治安も良くない。
何より他国に侵攻し着々と領土を広げているらしい。
僕が今向かっているウェンテライウ王国がその侵略の抑止力になっているらしいのだが、その力バランスが若干帝国側に傾きつつあるらしい。そのせいか帝国周辺の国では不安の声が高まっている。
そんなこの世界の情勢について思い出していると、王都が見えてきた。まず目をひくのは城だ。
こちらから見るとほぼ中心にあるように見える。
本当に中心にあるのかは分からないが。
城と言ってもどちらかというと洋風な感じで日本の城って感じではない。
多分この城が王城なのだろう。
周りの家と比べて遙かに豪華な造りになっている。
そんなことを考えていると王都に入る門が見えてきた。
そういえば、僕入れるのかな。身分証明書とか持ってないんだけど。
「ねえ、ソラ。身分証明書とか無くても入れるものなの?」
(もちろんいるよ。)
いるのかよ!
しかも笑いながら言ってきやがった。僕の中にいるのに僕のことを他人事のように扱いやがって。
それよりも王都に入れないのは困る。
(魔法で隠れて入れば良いじゃん。冒険者ギルドに入るならその時に貰える会員証が身分証明書になるし。)
それを密入国と言うのではと思ったのだが他に手は無さそうである。それに入ってしまえばこっちのものだ。
そういえば、冒険者ギルドと言うのは、前に言っていた魔獣を倒すとお金が貰えるという話のシステムを作った場所であり、魔獣の素材を買ってくれる。そんな場所だ。よく物語に出て来るやつとそう変わらないと思ってもらっても良い。そこでお金を稼ぐことが今の僕の目標だ。
そんなことを考えている内に門が近づいてきたので、透明になる魔法を使う。この世界には元々透明になる魔法なんてない。なぜそれが使えるのかというと、昔魔法の訓練をしていたときソラが食料を取りに出かけ一人になったことがあった。その時、良いことを思い付いた。それが透明になって僕がいなくなるドッキリを仕掛けるというもの。結果ソラは驚いたのだが、何かに勘づいたのかすぐ出てこないと訓練時間2倍にするぞと言ってきた。それはダメだと咄嗟に判断し、魔法を解いたのだが、結局その後お叱りを受けたのち訓練時間2倍になった。この失敗からソラに悪ふざけは辞めようと心に決めた。
そんな魔法が今役にたとうとしている。自分を苦しめることになったこの魔法は嫌いになっていたのだが、他に今の状況で使えそうな魔法は考えてないので渋々使っている。
なんとも微妙な気分だ。
そんな感じであっさり門を抜けることが出来た。大国の警備こんなんで良いのか?
ここで1つ問題があることに気づいた。それはどこで透明になる魔法を解くかということ。皆が見てる中で解いてしまうと突然人が現れたと思われてしまう。かといってどこか隠れられる場所を知らない。土地勘0だ。
とりあえず良さげな場所を探すかと思い人の流れにのって透明なまま歩いて行く。
大国と言うだけあってとてつもなく広い。前世では海外旅行なんか行ったこと無かったから分からないけど、これだけ広い街があったのだろうかと思うほどだ。
しかも、これだけ大きい街の裏通りなんかはスラム街になってそうなものだが見た限り無さそうなのである。住民の不満が出にくいのも納得だ。
そんな街を歩いていると人混みが出来ているところがある。何か気になった僕は自分が透明なことを良いことに人と人の間をスルスル抜けて行き、最前列近くに行ったところでこの人混みなら大丈夫だろうと透明になる魔法を解く。そして、人混みの原因を見る。
「だから、違うと言っているだろう!」
「いえ、しかしその容姿と声は……」
二人の男が言い合っていた。違うと言っていた方はいかにも有名人が変装してますって感じの姿だ。本当に変装しようとしているのなら逆にバレやすくなるのではないだろうか。
もう一人はいかにも一般人って感じだ。
ここで変装しているであろう男が周りを見回した後こちらを向いてニヤリとし、
「遅いじゃないか。お前のせいでこんな騒ぎになったじゃないか。」
どちら様?
さっきニヤリとしてたと思ったら今度は必死な顔になっている。話を合わせてくれという念が聞こえてきそうなほどだ。
僕にはこの王都での人脈がない。いや、この世界の人脈がない。なのでここは乗っておくことにした。冒険者ギルドに入るって言っても場所知らないし。
「いやいや、この人混みでここまで来るのにどれほど苦労したと思ってるんだ?来てやっただけでも感謝しろ。」
いかにも友人っぽく言ってみた。透明になってたから楽々に最前列付近に来たんですけどね。
周りがざわつきだした。
何事かと思っていると、話しかけてきた男はそれを意にも返さない様子で
「まあ、感謝はしている。さあ行くぞ。」
なんか言葉使い的になんか偉い人っぽいな。さっきの態度後で責められたりしないよね?
そう思いながらその男について行く。そしてほとんど人が通っていない裏通り的なところまで行ったところで立ち止まりこちらへ振り返った。
「先ほどは助かった。私が王子なのがバレるところだった。」
うん?王子だと?さっきの態度本格的にヤバくないか。
「先ほどは申し訳ございませんでした。」
自分でも信じられないほど素早い謝罪だった。
「お前も私が王子だと疑ってたのではないのか?」
「僕……いや私はつい先ほど王都に来たばかりなもので。」
「そうかしこまらないでくれ。出来れば今後とも先ほどのように接して欲しいものだ。」
「いえ、そういう訳にはいきません。貴方がお許しになっても周りからなんと言われるか。」
「その点は問題ない。お前がそのような態度をとっていたら私が王子だと疑う者もいないだろう。」
「確かにそうかも知れませんが…………」
さっきバレそうだったじゃん。バレたら僕も終わりだ。まだ身分証明書も持ってないし。
「それにお前この街の者ではないのだろう?私が案内してやろう。それでどうだ?」
どうやらこの王子様はバレずに王都をまわりたいらしい。
「分かりましたよ。」
王子様に案内してもらうとか………。
これから大変になりそうだな…………。
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