第4話ソラの異変
また2年がたち10歳になりました。この2年間はほぼ武術と魔法の訓練でした。剣術以外にも棒術や槍術などなど色々と叩き込まれた。ソラによると一応及第点らしい。どこを目指してるのか分からないけど…………
魔法に関しては言うことがないそうだ。この世界にそれだけ魔法が使える人はいないと言われた。
これはあれか?世界一を目指せって言われてるのかな?それとも、やり過ぎと言われてるのかな?
訓練を続けさせられていることから前者の可能性が高そうだ。
ただ最近ソラのいる時間が短くなって来ている気がする。僕が訓練に慣れてきてサボらなくなったからという理由も考えられるが、元気もない気がするのだ。
この世界で唯一話したことのある存在、命の恩人でも有り、色々なことを教えてくれる師匠的存在だ。
ドSな行動が減ったのは嬉しいけど、少し寂しくも感じる…………
別にMになったわけではない…………はず…………
そんなことを考えているとソラがやって来た。
「今日はこの本を最初から最後まで読んどいてよ。」
そう言って持って来たのはとても1日じゃ読めない位厚い本だった。やっぱドSだ。ただなんだろう。少し空元気のような気がする。
「ソラ体調大丈夫か?」
そんなことを聞いたらめっちゃ驚かれた。
「えっ!?面倒くさがらないなんて信じられない。」
「おい、自分の心配してる奴になんていいぐさだ。」
「まあまあ、そう怒らないでよ。一日でこの本を読み切れってのは冗談だから。5日位掛けて読むと良いよ。他の訓練は休みにするから。」
「あ、ありがとうございます!!」
この時ソラはチョロいなと思ったことだろう。実はカイの想像は正しく、ソラの調子は悪い。いや、悪くなり続けていた。
3日後、この本はどうやらこの世界について書かれているらしい。今のところ分かったことは、この世界には3つの大陸があり、同じ位の大きさの大陸が2つ、それより少し小さい大陸が1つ。大きい大陸の1つは人が住んでおり、もう1つは魔族が住んでいる。この世界の魔族は地球の物語に出て来るような世界を支配しようとすることはないし、なんなら人とあまり関わらないようにしているらしい。魔王と呼ばれている魔族の王がいるらしいが悪の魔王とかそんなのではなさそうだ。
もう一つの少し小さい大陸には獣人やエルフの隠れ里が点在しており、場所は分からないが大きい国が1つあるらしい。亜人の聖地なんて呼ばれているらしい。魔族も亜人ではないのかと思ったがどうやら魔族は魔族、亜人ではないという評価らしい。何が違うのか分からないけど。時間や距離、重さなどの単位は地球と同じらしい。時間に関してはソラが使ってたから知っていたけど。分かったのはこれくらいだ。後2日で読まないといけない。間に合うか不安だ。
2日後、読み終わりましたよ。最後は徹夜したけど。
転生初の徹夜です。記念日みたいに言ってるけど本当はしたくなかった、死ぬまで。してしまったものはしょうがない。そのおかげで読み終えることが出来たのだ。だけど大切な何かを忘れている気がする。それを思い出せずモヤモヤしてるとソラが来た。
いつもより薄い。というか透けてる?そこまで考えたときに思い出した。ソラの調子が悪そうだったのだ。本から様々な知識を得る中で忘れてしまっていた。
「おい、どうしたんだよ。透けてるじゃないか?」
「さすがにもう隠せないか。僕の力が弱まってきてるんだ。後、数日で消えちゃうんだ。」
それを聞いて言葉を失った。消えちゃうってもう会えないってことか?僕はまだソラに恩返しを出来てない。
僕に2度目の人生というチャンスをくれたこと、僕を強くしてくれたこと、何より面倒くさがりの僕をここまで導いてくれたこと。ソラがいなければ途中で辞めるどころかスタートラインにも立てなかっただろう。
最初は成り行きで強くなるための訓練をしていたが、途中からはソラとの約束を守り恩返しをするために訓練をしていた。そのソラがいなくなる?そんなの嫌だ。
「な、何か助かる方法は?」
「あるにはあるけど、やめた方が良いよ。君のプライベートな部分を全部僕が把握出来るようになるし、何より声だけになって実体にはなれないんだ。」
「それはソラが僕に取り憑くみたいな感じ?」
「主導権はカイが握ることになるけど、僕も短い時間だったら体を動かせると思う…………ってやるつもり?」
そんなの決まっている。
「もちろん、ソラが良いならだけど、僕はまだソラに恩返しが出来てないのに、完全にいなくなられたら困るんだよ。」
言っている途中で涙が溢れて来た。ソラも泣きそうだ。
「………ありがとう。じゃあ『契約』が必要だから準備するね。」
そう涙をぬぐいながら言ってきた。そして仰向けになるように言われたので、言われたとうりにする。すると『契約』をするための儀式が始まった。
「我と汝は運命共同体。我が願えば汝も願う。汝が願えば我も願う。我と汝はこれを受け入れることを誓い契約する」
いつにも増して真剣なソラがそう言い終わると徐々に薄くなりながらも僕の胸の中に入っていった。
これは成功…………なのか?
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