第8話 Dランクなのに
僕はギルドに行く前に母さんとローンさんが住む家に向かう。
家の前ではマリアちゃんが包みを持って立って待ってくれていた。
「おはよう、マリアちゃん。朝早くからゴメンね」
「ロウトさん、おはよう。ううん、この時間ならそんなに早くないから大丈夫だから」
僕はマリアちゃんから包みを受取り、お礼を言ってからギルドに向かった。ローンさんは既に出ているらしい。
ギルドに到着したらレードンさんが僕を待ち構えていたんだ。
「キターッ!! やっと来た! ロウトくーん!! オジサンを助けてくれーっ! 頼む、この通りだーっ!!」
なんて叫んで土下座しだしたレードンさん。
「ちょっ、ちょっと待って下さい、レードンさん。訳が分かりません! 取り敢えず立って説明をして下さいよ。じゃないと助けるも助けないも返事できません」
「そうかっ!! 助けてくれるのかっ!! 有難うー、ロウトくんっ!」
早合点が過ぎますよレードンさん。僕は説明をしてくださいって言ったんです。
「実はだね、爆狩りローンに頼んだんだけど、けんもほろろに断られてしまって…… 南の森の中間地点なんだけど、大トカゲの変異種が出たみたいなんだ。それによって慌てて逃げ出した魔獣たちが森の浅い部分まで来てしまったんだけど、その変異種をどうにかしてもらえたらなぁ…… なんて、ダメ?」
「いや、レードンさん、変異種って最低でもB-のハンターが出る案件ですよね? 僕はまだDですよ」
「いやいやいやいや! ロウトくん、私は知ってるよ! 既に爆狩りローンをも上回る狩りの腕を持ってる事に!! 何故しってるかって? ローンがそう言ってたからだよ!!」
師匠…… 何をこの面倒な人に言ってるんですか。いや師匠の事だから、自分で行くのが面倒臭いから僕に振ったんだろうね……
「はあ〜…… 分かりましたよ。ついでに森の浅い場所に逃げてきたのも僕が狩っても良いんですよね?」
「え〜っと、それは他のDやCのハンターたちに残しておいてくれると良いなぁ〜なんて……」
僕もDなんですけどね、レードンさん……
そんな事を内心で思いながらも僕はレードンさんに分かりましたよと答えていた。
「けれども実際に変異種の大トカゲを見て僕には無理だと判断した場合にはちゃんとB-以上のハンターを手配してくださいね」
と念押ししてから僕は森へと出かけたんだ。森の浅い場所には確かに普段は中程にいるはずの魔獣たちが逃げてきていたよ。
それらをランクDやCのハンターたちが狩っている。
僕はそれを横目に森の奥へと進んでいったんだ。
火喰鳥のいる辺りもこえて更に奥へと進むと確かに何かが居るのが分かる。大トカゲの変異種かな? それにしては気配が可怪しいんだけど……
慎重に気配の方向に歩を進めて行くと僕の目の前には信じられない光景が飛び込んできたんだ。
「うわっ!? 何だ、コレ?」
僕の目に飛び込んできたのは大トカゲの変異種だろう個体が魔力の塊に包まれて眠っているところだった。
そして少し離れた場所でそれを見守る人が居る。ん? 人か? 何だか少し違うみたいだけど……
何やら独り言を言ってるみたいなのでもう少し近づいてみる事にした。
「ククク、我らが魔王様の復活も近い。その祝いの為にもこの街は滅ぼしてしまわねばな。たまたまコイツを見つけたのは良かった。我が魔力で更に凶悪な大トカゲにしてやるからな。シッカリと街を滅ぼすのだぞ」
って、言ってるけどそんな事をさせる訳にはいかない。
僕は静かに弓に矢を番える。矢の先端には大トカゲ用の毒を塗ってある。
いつも以上に慎重に狙いを定めて僕は矢を放った。矢は狙い違わずに大トカゲ目指して飛んでいき、ブスリと頭に突き刺さる。
「なっ!? 誰だっ!!」
ブツブツ言ってた男が辺りをキョロキョロしてるけど僕は見つからない。
僕が隠れているのは木の上で下からは絶対に見えないからだ。
「まさか、視認できない遠方からの矢だと言うのか? そんなバカな! そんな事は魔王様を封印した勇者にも出来ないぞ!!」
僕はその言葉に注意をはらいながらも大トカゲを見守る。何故なら大トカゲから感じる魔力が中々減らないからだ。
矢の刺さり具合からみて脳にまで達しているのは間違いない筈なのに、まだ死なないなんて……
「クソッ! 脳も拡大させて私の言う事を理解させようとしたのだが、こうなるともうダメだな! ならばこうしてやる!!」
僕を探すのを諦めたらしい男はそう言うと両手を魔力の塊にあてて自身の魔力を流し込み始めた。
すると男の体がみるみる老いていく!
これは危険だと思った僕は男の頭に向かっても矢を放った。今度の矢は毒は塗ってない。
頭に間違いなく矢が刺さり、老いてしまった男はその場に崩れ落ちた。
けど……
「ククク、そこに居たのか…… 少し遅かったな、
魔力の塊が弾け飛んだと思ったら、そこには頭に矢が刺さったままのリザードマンが立っていた。
痛くないのかな?
「ククク、判断は良かったが少し遅かった所為でお前はここで死ぬ。我をあの時に殺せなかった事を後悔するが良い」
言うやいなやリザードマンが頭の矢を掴み引き抜いた。
ああ、やっぱり痛かったんだね。
僕が何でこんなに呑気にしてるのかって?
だってリザードマンが僕が居るって思って話しかけてるのはイビルトレン卜なんだ。僕の気配を感じたんじゃなくて魔力を持つ者がそこに居るのを感知したんだね。
さっきまでイビルトレントは魔力を消して眠っていたけど、男の大声で目覚めたようだ。
「ククク、では死ね!! 【
男がゲームでは魔族しか使えなかった魔法を唱えた。イビルトレントはその炎によってアッサリと燃え尽きた。
「当初の計画とは違ってしまったが、まあ良い。この我自らがあの街を滅ぼしてくれる!」
そんな事はさせないと僕が飛び出そうとした時にまたあの声が聞こえてきた。
『クエストターンに入りました、セーブデータ2が使用可能となりました、使用しますか?』
答えは勿論イエスだよねっ!!
『セーブデータ2を解放します。それにより装備が変更。鋼の胸当て、鋼の盾、魔馬のブーツ、鋼の剣…… 現在お持ちの刀の方が上位武器です。武器の変更は中止します! ご武運をお祈り致します!』
この刀ってかなり上位なのかな? 鋼の剣はゲームでは中盤まで使用できるまあまあの武器だったんだけど。
まあ、それよりも今は目の前のリザードマンだね!
「貴様! 何者だっ!? いや…… その気配は…… まさか、こんな辺境に勇者が!?」
リザードマンになった男が驚愕の顔をして僕を見ている。だけど……
「ククク、だがまだ目覚めて間もないな。ならば我でも倒せるだろう!! 喰らえ! 【
その魔法はさっき見たし、今の僕には通用しないよ。
「アクアオーラ!」
僕の唱えた魔法により、水のボールに突っ込んだリザードマンの魔法はジュッという音とともに消えた。
「バカなっ!? 上位魔法を下位魔法で打ち消しただとっ!?」
失礼な、僕のアクアオーラは下位魔法じゃないよ! 勇者魔法だよ!!
僕はそのまま驚いているリザードマンに一瞬で間をつめて、そして
その心臓と左足の甲を刺し貫いた。
「ガッ!? なっ、何故、我の弱点を知って…… いる……」
それがリザードマンとなった魔族の最後の言葉になったんだ。
そしてバフッという音と共に、後には大トカゲの死体と金貨150枚が落ちていた。
『クエスト達成を確認しました。セーブデータ2を抹消します。次回、クエストターンに入るまでセーブデータ3は使用出来ません。装備を元に戻します。それでは、次回のクエストターンまで休止状態に入ります』
色々とゲームとは違うけれども何とかやっていけそうだね。
目の前に居る大切な人を守れずに勇者とは名乗れないからね。
これからも僕は大切な人を守る為にこの地で頑張るつもりだよ。
そう決意してる僕を見ている者がいる事に、僕は気がついてなかったんだ……
僕、最強の勇者になれるみたいです しょうわな人 @Chou03
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕、最強の勇者になれるみたいですの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます