Vol.2

緑のフミラルド・プレゼンツ

俺×ジス作品集


俺とFMAKとじすさんと熱波と

第二話



作:俺



♨♨♨これまでのあらすじ♨♨♨

俺は、人類の終末が迫る20XX 年、熱波サークルの面々と「誰が最強の熱波サークルメンバーか」を決めるべく、現世に残っている熱波サークルメンバーをTHE SPA 西新井に召集し、最後の聖戦【ジハード】を始めようとしていた……。



登場人物

・俺---主人公

・ジスカルド---俺の友人、AMの首謀者

・はなまめ---俺の友人、妻子をアケローンに先にコンバートしジハードに臨む

・ドクター・コザキ---俺の友人、小崎ウィルスの発見者、熱波秘奥義【グリーンホール10.5】を引っ提げ西新井に帰還

・つね---俺の友人、不死鳥熱波の使い手、村上さんには【水風呂】と呼ばれる男

・藤本---俺の友人、俺のアートディレクター

・Vene--- 俺の友人、【模倣全時空記憶集積回路】の使い手

・クロス---俺の友人、熱波師検定Bの所持者、ひだまりで変なメニューを注文することで有名

※前回の次回予告と内容が全く違いますが、

前回の次回予告は無かったことにして下さい。





先に館内に入っていた俺達、俺、じすさん、はなまめさん、小崎さんは、ひだまり

で熱波前に酒を飲み、熱波までの時間を調整する。俺達は昔話に花を咲かせていた。

思い起こせば、俺もここ西新井に来始めてから、もうずいぶん長い時間が経ってい

た。皆年齢を重ねた。結婚し、妻子を持った者もいる、だが西新井に来れば俺達はあ

の時のままだ。

そうこうしているうちに、ひだまりの入り口に新たな人影が現れた。


「あれは……ジーニアス!!!!!!?」

そう、俺達のジーニアスこと、つね。永らくAMから離れていたが、ここ数年で

帰還し、しばしばオフにも来るようになっていた男だ。俺も彼との付き合いは長い。

彼がスティッカムで配信していた頃は彼をつぶそうと一方的に思っていたほどの友

人だ。

「つね君、久しぶり!!!!」

俺達は熱い抱擁を交わす。俺がつね君に最後に会ったのは、おそらく2019 年、小崎

ウィルスが猛威を振るう前、西日暮里のエレガン・ザ・コローナというイタリア料理

屋で会った時以来だ。

「ご無沙汰しています、今日はこれで全員?」

つね君は俺達を見渡して言う。

「いや、まだ誘ってるよ」

俺はビールを飲みほして答える。そしてダンディな店員さんに声をかけ、次はハイボ

ールメガジョッキを注文した。

「けっこうAMの人って、アケローンにコンバートせずにこっちに残ってるんですよ

ね、今回のこれを企画しようとしたとき、もしかしたら俺とじすさんしか来ないかと

心配でしたよw」

俺は、先に来ていたひだまり御膳のサラダに入っている、あのプラスチックみたいな

得体の知れない何かをパリパリ食べながら言う。

「けっこうAMファンの人たちって、こっちに残ってるみたいよ」

じすさんが海鮮丼を食べながら言う。

「俺がフォローしているボカロ関係の人たちなんてほとんどtwitter 更新しなくなっ

てますからね、コンバートされたんでしょうね、はっきりと別れてますねw」

小崎ウィルスが蔓延し始めてから、人類の滅亡に瀕している状況なので当たり前では

あるが、ニコニコ動画にもyoutube にもボカロ曲はほとんどアップされなくなって

いた。中には、人類の終焉を原動力にしているのだろう、新曲を精力的にアップする

奴もいるみたいだが、俺もじすさんも小崎ウィルス蔓延後は新曲はアップしていなか

った。

つね君の席にビールが届く。改めて、乾杯をしようとすると、再び、ひだまりの入

り口に影が現れた。」

「あれは……藤本さん!!!!!!???」

「みなさんお久しぶりです、あ、僕もビール下さい」

藤本さん。最近めっきり合っていなかったが、小崎ウィルスが蔓延し始めた頃、

俺が行けなくなったので俺がとったプロレスのチケットで俺のかわりにプロレスリ

ング・ノアの金剛興行に行ってくれた漢である。後日送ってくれた、金剛興行でしか

買えなかった金剛のトートバッグは本当にうれしかった。俺は今でもそれを買い物の

マイバッグとして使用している。


~中略~

Vene さん登場。


~中略~

クロス君登場。


~中略~


みんなで乾杯し、頃合いになったのでサウナに移動する。

ここで「誰と話しをするかな……」という選択肢が出て、各ヒロインの個別ルートに

突入する。(エロゲに最終的になる予定なのでここらへんの描写は最終的にちゃんと

します)




俺達は湯舟に入る前に体を清め、そこからは各々自由な行動になる。ここで熱波サー

クルのメンバーとしての特性が強く出ることになる。

俺は、湯舟に入り、体内温度を高めた後、水風呂に入り、熱波に対する万全の準備を

整える派であった。おそらくじすさんも近い考えだろう。

しかし、中には熱波を最大に味わう為に、あえて水風呂に入らず、防御ゼロの状態で

熱波に挑む者も居る。それが、ジーニアス、つねであった。

彼が編み出した不死鳥熱波の詳しくは、彼の熱波ブログを参照されたい。

しかし、今回ばかりはつね君も、彼の矜持を捨てて、水風呂に入ってきた。そう、な

ぜなら今夜はいつもの熱波とは違う。なにせイベントタイトルが、

【地球が終わるまで俺達はここにいる!!!!人類最後の108万発熱波】

なのである。

普通の覚悟では耐えきれない……。つね君が誇りを捨てて、水風呂で防御態勢を整え

て挑もうとしている。彼の覚悟はそのまなざしの鋭さに現れていた。

ちなみに、この水風呂に入って、防御態勢を整えた状態を、【フバーハ】と呼ぶ熱波

サークルメンバーもいる。

俺達は水風呂でその時を今か今かと待つ。水風呂の横の上の方に設置された、時計が

18時を示す。

しばらくすると、脱衣場の方から、喧噪が伝わってきた。

通常の西新井の熱波は、熱波隊は3人程度である。しかし今回は違う。

重本隊長が、過去の黄金メンバーに召集をかけ、まさにフルメンバーなのである。

「熱波サービスを始めさせて頂きます!!!!受けられたい方はサウナに

入ってお待ちください!!!!!!!」

俺の目からは、涙があふれてしまった。

重本隊長を始め、あべさん、大森さん、黒河内さん、まめちよさん、海賊王……あの

頃の熱波隊の面々が、勢ぞろいしていたのである。

しかも重本さんは、ジムの店長に転勤になったからか、かつての細身のスピードフォ

ルムから、井上熱波神を彷彿とさせるガチムチレスラーボディに進化していた。


「重本さん!!!!!!!!あべさん!!!!大森さん、黒河内さん、まめちよさん、海賊王!!!!!!!」


俺達は叫んでしまっていた。ちなみに小崎ウィルスが蔓延し始めて、人類は滅亡の危

機に瀕している、そういう状況なので、客は俺達熱波サークルしかいない。思う存分、今日という日を楽しめるのである。


「木岡さん、お久しぶりです!!!!!今日はよろしくお願いします!!!!!」

俺と重本さんはガッチリ握手を交わす。俺は重本さんが群馬のあいのやまの湯に勤め

ていた時、ちょうどロードバイクにはまっていたので、東京から群馬まで自転車で行

き、群馬でも重本さんの熱波を受けたことがある。ちなみにその時の様子は、客には

重本さんの熱波への情熱がまだ浸透しておらず、冷ややかで重本さんも苦戦していた。そのような苦境を経験して来て、今の重本さんがあるのだ。


「重本さん!!!!!!死んでも108万発受けますからね!!!!!!!!!」

俺達はまだサウナに入ってもいないのにテンションが最高潮に達していた。

「木岡さん、今日はお客さんも木岡さん達だけですし、もういきなり始めましょう

か?」

「宜しくお願い致します!!!!!!」


俺達は水風呂から上がり、急いでサウナへと入っていく。

俺達は当然のように、4段あるサウナの最上段に座る。ここは【勇者の段】と呼ばれ

る。当然、熱波は1段目の客から始めるので、最上段に至るのは最後になる為、拘束

時間が長くなり、耐えきるのは至難の業である。熱波を受ける者でも猛者が座ること

で、その名がつけられている。

俺達は体中の穴という穴から熱波汁止まらんといった状態で、戦闘モードに突入した。

重本さんを先頭に、熱波隊の面々が入ってくる、俺達はそれに大拍手と歓声で応える。


~中略~(ここらへんも最終的にどうにかします)


熱波のあの例の前説。


~中略~


108万発はさすがに無理なので、いけるところまで行くと重本さん。俺達も全力で

カウントする。


~中略~


俺達熱波サークルの面々はみな生き残っていた。熱波隊は、重本さんがかろうじて生

き残っており、速度は落ちているが熱波を続けている。2000発を超えた頃、「2

108発行くぞ!!!!!!!!!」と重本さんが叫ぶ。

俺達は最後の108のカウントを叫ぶ。

「97、98、99、100!!!!」

俺の意識は途切れそうになっている。みんなも同じだろう。だがこれが、最後の10

8熱波なのだ。俺達は喉を枯らしながら叫ぶ。

「1!2!3!」

Vene さんの声が聞こえる。クロスくんの声が聞こえる。藤本さんの声が聞こえる。

「4!5!6!」

不意に、意識が明瞭になり、音がクリアに耳に入ってくるように感じた。

つね君の声が聞こえる。

小崎さんのグリーンホールの脈動が聞こえる。

「7!!!!!!」

俺の感覚は研ぎ澄まされていた。体がサウナ室の中に溶けてしまって、全てを感じら

れるように思えた。

はなまめさんのメガネが熱くなっているのを感じる。

じすさんの、心臓の音が、聞こえる。

そして、

史明の、笑う声が聞こえたような、気がした。

「8!!!!!!!!!!!!!!!」

俺達は、全員、呼吸を荒くしていた。

重本さんは、その場に膝を落としてへたり込み、ゼーゼーと肺に酸素を取り込もうと

激しく呼吸をする。

そして、顔を上げる。

「みなさん、ありがとうございました…………最後の、いきますよ」

俺達はそれ以上何も言わなくても理解していた。

重本さんが、右の拳を最後の力で、突き出す。

「パネスゲー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


俺達も同様に、最後の力を振り絞って、叫び、拳を突き出す。

そう、俺意外は。

俺は、この瞬間を、ずっと待っていた。

西新井の熱波を受けたことがある人なら分かるだろう、最後のパネスゲー!を叫んだ

瞬間、疲労からか、達成感からか、人は一瞬の硬直状態に陥る。

ダイの大冒険で、真バーン様が、天地魔闘の構えで一瞬の硬直時間があるのと同様で

ある。

また、俺は個人的には、鮭の射精と同様のものであると考えている。

力を使い果たす。

「達する」という表現が、一番正しいのかもしれない。

そう、俺は、この瞬間まで力を貯めていた。

皆が、パネスゲー!で硬直する瞬間に、動ける様に。

俺は、肛門に忍ばせていたナイフを取り出し、

拳を突き出し、叫ぶ重本さんの背後にまわり、体をホールドし、ナイフを重本さんに

突き付けた。


「お前ら全員動くな!!!動くと重本さんが「あの世」でクグワと戦ったりカルマポイントを上下させなければいけなくなるぞ!!!!!」


「き、木岡さん!!!!?」

「ふみあき君!!!!一体何を!!!!!?」


重本さんも、皆も狼狽している。

当然だろう。

今まで仲間だと思って疑わなかった俺が、突然このような行動をとったのだから。


「じすさん達も、変な行動とったら重本さんにブスリですよ。いいですね、静かにし

て、動かないでください」


俺は重本さんの腹筋にナイフを突きつけ、サウナ内を目で威嚇する。

突然のことに、あべさん、大森さん、黒河内さん、海賊王も狼狽えている。

「き、木岡さん……」

「重本さん、俺も本当ならこんなことはやりたくなかった、すみません」

重本さんに罪はない。

このようなことに巻き込んでしまい、本当に申し訳なく思っている。

だが、こうするしかなかったのだ。


「ふみあき君、やめるんだ……」

じすさんの声が震えている。

ふみあき君だと?

「黙れ……」

俺は、今まで閉じ込めていた感情を、解き放つ。


「じすさん、あんたが気安く史明の名前を呼ぶんじゃねえ!!!!」


俺はじすさんを睨む。

じすさんだけを睨む。

「えっ……どういう……ことだ……?」

じすさんは明らかに動揺している。


俺は、重本さんにナイフを突きつけながら、じすさんの目を見る。

綺麗な目だ。

純粋な、穢れの無い、目。

「じすさん、これは、あなたへの復讐なんですよ」

「ど…どういうこと…」

「あなたは全く知らないことだと思いますよ、でも、紛れもなくあなたのせいだ」

「何を言っているのか…分からないよ、ふみあき君…」

「俺を史明と呼ぶんじゃねえ!!!!!!!!!!」


声が大きくなってしまう。


先ほどまで熱波をやっていたときも、俺はカウントの声を控えめにして、体力を温存

していた。ほかの皆は体力も尽き声も枯らしているが、俺だけはこのサウナ内で唯一

の【狩る者】だ。


「じすさん、俺は、FMAKというハンドルネームですね」

「そうだ…」

「簡単な話です、俺はFMAKというハンドルネームを名乗っていましたが、

木岡史明という人間ではありません」

「!!!!!!??」


皆の表情に動揺が走る。


「木岡史明という人間は、別に居ます。…………居ました」

俺の脳裏に浮かぶ、あの夏。

2008 年の夏。

広島の夏。

史明の部屋。

暗い部屋、RSを起動したノートパソコン、

冷たくなった史明。

木岡史明、享年20 歳。




「君が……ふみあき君じゃ……ない…?」

じすさんが、消え入りそうな声で言う。

「そうです、俺は史明じゃありません、史明は別に居ました」

「じゃあ、君は、誰なんだ……?」

「俺が誰かなんてどうでもいいことですよ、史明とは小学校からの友人です」

「小学校からの友人……なぜ君がふみあき君の名前を騙って……?」

「復讐ですよ、じすさん」

「えっ…?」

「史明は、あなたに殺されたんですよ、じすさん」

「!!!!!!?」

サウナ室内に驚愕が伝わる。

「僕が……本物のふみあき君を殺した…!?」

「そうです。全てを今、明かしましょう」


木岡史明が死に、俺がFMAKになり、曼荼羅Pになった。

その全てを。

広島県の海辺の町で、木岡史明は生まれた。

5歳の時に、立ち退きで引っ越した先の山の団地で、俺と出会った。

俺と史明は、隣の家だった。

同い年だった俺達は、すぐに仲良くなった。

小学校にあがると、俺達は毎日、一緒に登下校をした。

授業が終わった後も、史明の家に俺が行ったり、俺の家に史明が来たり、毎日遊んだ。

小学校高学年になると、俺と史明は二人で、捨てられているエロ本を探しに山奥に入

ってしまい、遭難しかけて警察ざたになるという事件も起こしたが、元気に育ったと

思う。一緒にバスケットボールもやっていた。

中学も一緒だった。一緒にバスケットをやっていた。

高校から、俺と史明は別の学校になった。

史明は家から離れた学校に通うにようになった、俺は家の近くの高校に入った。

高校に入ってから、史明は音楽を始めた。

理由を聞いた。

アンディーメンテという、新手の宗教か何かの人が、音楽もやっていて、その人に憧

れて始めた、と言っていた。

俺と史明は休日のたびに遊んでいた。

その度に、あいつが目を輝かせて、「LUPIA ってハードロックバンドがすげえんだ

よ!!!!一人でダンボールギターでやってるんだよ!!!!」だの、「まゆみ様が

どうだ」だの「しすみ」だの、わけのわからんことを言うようになった。

どうやら、それらは全てアンディーメンテというフリーゲームサークルの活動のこと

のようだった。

史明は、俺に一枚のCDを貸してくれた。

LUPIA のmourdred……

俺は自宅に帰り、CDプレイヤーに挿入し、それを聴いた。

衝撃だった。

俺はそれまで、音楽番組に出ているようなメジャーミュージシャンの音楽しか聴いた

ことがなかった。

LUPIA は、俺の知っているそれらとは、全く違った。

なんだかよくわからんが、訴えかけてくるボーカル、歌詞……

それから俺は、アンディーメンテのことを少しずつ調べるようになった。

LUPIA だけではない、ほかの音楽作品、ゲーム作品も、作者の人生を削り取って投

げつけるような作風で、少しずつ俺も興味を持ち始めていた。

泉和良。

それがアンディーメンテの主催者の名前のようだった。

その翌年、俺と史明は別々の大学に進学した。

その夏のことだった。

史明は大学進学を機に、一人暮らしを始めていた。家から通うのが遠いのもあるが、

あいつは昔から独り立ちしたいという気持ちが強かったのもあるのだろう。

俺は実家から大学に通っていたが、史明の部屋にはしばしば遊びに行っていた。

ある日。

俺が史明の部屋を訪れると、史明は死んでいた。

パソコンは起動しっぱなしだった。

画面には、RSという、アンディーメンテが作った、RPGゲームが起動されていた。

………




「これで俺は全てを悟りました、史明は、RSのやりすぎで死んだんだってね」

サウナ室内。

皆が俺の話を、汗を流しながら聞いていた。

「俺があいつの部屋に入ったとき、RSは、鬼ヶ島というダンジョンを攻略中でした。

あいつは、鬼ヶ島でたくさん手に入る列なりの思い出1章と2章というアイテムを手

に入れる、通称鬼ヶ島マラソンをひたすらやっていた……それに熱中しすぎたんでし

ょうね、食事をすることも忘れて鬼ヶ島マラソンをしていたあいつは、栄養失調で死

んだんです……あいつはバカみたいに正直で誠実な奴でしたよ、my.dat をテキスト

エディタで開いて数字を書き換えれば、列なりの思い出なんていくらでも999個に

出来るというのに……」

俺の目からは、いつの間にか、汗なのか何なのか分からない液体が流れだしていた。


「これで理解出来ましたか、じすさん、史明はあなたが作った作品に殺されたんです」

じすさんも、皆も、目を伏せている。

しばらくの沈黙の後、じすさんが顔を上げる。

「でも……みんなを巻き込むことは無かっただろう!?僕一人を殺せば済んだ話じ

ゃないか?」

「もちろんですよ、俺は、じすさんを殺そうとしていました。最初に実際に会ったと

きからね、2010年の第一回AMプチオンリー、あの場で俺とじすさんは初めて実

際に会いました、あの時、俺はあなたを殺しに来ていたんです」

「!!!!?」

「それより以前、俺がLUPIA カバーを顔出しでアップしたのも、俺という人間を認

知させて警戒を解くことが目的でした。曼荼羅P としてボーカロイドの活動を始め

たのも、あなたがボーカロイドPだから、その方向からも近付いて殺す機会を増やす

為だったんです」

「そうだったのか……」

「そして、俺はあなたに殺された史明の頭文字をとって、FMAKというハンドルネ

ームを名乗った。じすさん、あなたは史明を殺して、FMAKに殺されるんですよ」

「話は分かってきた……だが、なぜ最初に出会った時に、僕を殺さなかった!!!?

それ以降もいくらでもチャンスはあっただろう!!!!!?」

じすさんが叫ぶ。先ほどからすでに1時間くらい全員サウナに入っている。

意識も体力も限界に近いのだろう。俺もそうだった。

俺の目からは、サウナ汁があふれ出した。


「好きになってしまったからだよ!!!!!!!あんたを!!!!!!

あんたらを!!!!!!!!!」


俺は握りしめたナイフを落としそうになる。


「最初のプチオンリーの時、俺は、今と同じように、肛門にナイフを隠し持って、会

場に向かいました。会場の熱気はすごいものでしたよ、この場にいる皆さんとも、そ

の日に初めて会ったので、皆さんも知っているはずだ、あの空間はAMファンにはた

まらない空間だったんだ…………俺は、史明が死んで、AMのことを恨んで、調べま

くりましたよ。ベクターにアップされていたゲームは全てやりました。史明の遺品の

中にあった、LUPIA LIVE DVD も、生前にデータを史明からもらっていたので観ま

した…………俺はあなたを恨むと同時に、ファンにもなっていたんだ…………第一回

プチオンリーであなたを殺そうとしていた時、俺は躊躇していました、殺しても史明

のためにはならない……そんなことは知っていました、でも俺はあなたを殺さないと

先には進めないんだ、史明の死んだあの日から……そんな時でしたよ、あなたがブー

スの向こうから歩いてきたのは。俺の記憶ではsunna さんやはなまめさん達5人く

らいで行動していたと思います、俺は肛門に手を伸ばしてナイフを取り出そうとしま

した。そんな時、あなたは俺に気づいた。俺はLUPIA カバー動画で顔をさらしてい

ましたからね、あなたは俺の方に向かって歩いてきた……俺はナイフをあなたに突き

刺そうとした、でも、あなたは笑顔で、俺に手を差し出してきた……「はじめまして!FMAKさん!」って……俺は、あなたを殺せなかった。俺の右手に握りしめていたナイフは肛門に戻して、俺はあなたの左手を握ってしまったんだ……その日、俺はあなたを殺せなかった。その翌年から、俺はあなたを殺すために、頻繁にAMオフに参加するようになった、でも、俺はあなたを殺せなかった…………AMわくわくライブも、あなたをステージ上で殺すために企画しました、そのほかのライブも全てそうです、でも、俺は、あなたを殺せなかった……あなたを好きになってしまっていたんだ……」


「ふみあき君…」


「まだ、俺のことをふみあき君と呼んでくれるんですね、ありがとうございますじす

さん、俺も、俺がだれなのか分からなくなる時がありますよ、俺はFMAKなのか?

FMAKは仮面だったんじゃないのか?って、もうよく分かりません、もう10年以

上FMAKとして生きてきましたからね、もしかしたら俺はFMAKなのかも知れま

せん」


意味不明なことを言っていた。俺はこんなことを言いたかったんじゃないのに。

サウナに長時間入りすぎていて、俺もそろそろ限界を迎えそうだった。


「じすさん、今日、ここであなたを殺そうとしたのには理由があります。俺は来週、

アケローンにコンバートされる予定だった、だから最後のチャンスだったということ

もありますが……俺は、じすさんを簡単に殺したくはない、苦しんで死んで欲しいん

だ」

「そのナイフに刺されるよりも……苦しい死に方…?」

「そうです、このナイフは重本さんを人質にする為に持ってきました、あなたには使

いませんよ……」

「一体、何をするっていうんだ……?」


じすさん。

ルシファー。


「じすさん、史明は、LUPIA のファンでした。広島でLUPIA LIVE DVD をすりき

れるほど観て、ルシファーに憧れて音楽を始めた。生前、あいつは俺に言っていまし

た、LUPIA のライブが観たいなって……だから、俺は、あいつの願いを叶えます」

「どういう……ことだ……!?」


「じすさん、あなたにはこれから、ここで、ルピアライブをやって貰います」


続く



次回予告

サウナ内で、ついにルピアのラストライブが始まった。

Blast my head、地球のH、SF、MAZZIN……

裸のルシファーが股間のルシファーを振り回し、サウナ内はライブハウスと化す。

命を削ったLUPIA のライブは、俺の心を変えることは出来るのか?

次回、最終話、「L.N.E」

観て下さい!!!!!!!




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オレとジスさんと時々SF‐後編

作:緑のエメラルド



注意:本作品はフィクションです。誇張された表現が頻出しますので、ご注意ください。


前回のあらすじ

2013 年4 月17 日、ジスカルドの自転車の荷台に乗り、日暮里舎人ライナー・扇大橋駅に向かっている途中、気が付くと、1999 年7 月1 日にタイムスリップしていた。色々あって、1999 年に発行されていたと言われる古のレガシー、ロボット新聞を手に入れるため、1999 年7 月14 日、大阪芸術大学へ乗り込んだ私は、ロボット新聞を発見できなかったものの、1999 年時間軸のジスカルドを発見する。そんな喜びも束の間、2022 年時間軸のジスカルドと名乗るジスカルドが突如あらわれ、ジス(1999)からの緊急離脱を促される。そのジスカルド(2022)から2000 年2 月22 日発刊のロボット新聞を渡された

私は・・・。





「え!すごい!!!!!!!!!!!!!」

「これどうしたんですか!!!!!!!どうやって手に入れたんですか!!!!!」

興奮しながら、渡されたロボット新聞を読み進めていく!こんなの、息を止めても読める楽しさじゃないか!!!と思い、目を血走らせて読んでいると、ふと目が留まる。

「あれ!!!???ジスさん、このロボット新聞、1999 年じゃなくて、2000 年の新聞なんですが!!!!!!」

「エメたん、これはね、2000 年とは書いているが、実は1999 年に書かれた新聞なんだ。」

「僕が良くやる、あれさ」

「なるほど!でも、なんでジスさんがこのロボット新聞を?」

問い返すと、ジスさんが少し考えて答える。

「このロボット新聞はね、実は諸事情あって配布されなかったんだ。この世に2 枚しか存在しない、生原稿のうちの1 枚だよ」

「その意味については、いずれわかるだろう。2013 年に戻ってから、私に聞いてみるといい。」

「さて、そろそろ本題に取り掛かろうか」

そう言いながら、ジスさんは鞄から、更に何かのチラシを取り出す。

「エメたんには、これに出てもらいたいんだ!これに出て、優勝してもらいたい!」

そう言われて、見せられたのは!!!!!!!

な! ! ! ! なんと! ! ! ! ! 1999 年に実施されたミニ四駆大会・グランプ大

阪! ! ! ! ! ! ! じゃないかあああああああああああああああああああ

あ!!!!!!!!!!!!!


わ!忘れていた!!!この時期にGP 大阪が開催されていたことを!!!!

うっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「ジッ!!ジスさん!!!!!!この大会ってまさか!!!」

その反応を見て、ジスさんが気付いたようで

「そうさ!!この大会は、私!竹原社長!中田君!そして飛び入り参加の名前を忘れてしまった人で開催したミニ四駆大会さ!!」

「ガッ!!つまり!!その飛び入り参加が私だと!!!!!」

私が鼻息荒く、興奮気味に椅子から立ち上がって話していると、

「まぁ、たぶん、その人がエメたんだったんじゃないかなぁ」

なんてことだ・・・

私は、知らぬ間にジスさんと遭遇してしまっていたのだ・・・

「ジスさんは1999 年に私と出会っていたことは覚えていないんですか?」

と問いかけてみると、

「全く覚えていないんだ」

「というより、ほかに数人いたな程度にしか覚えていないという意味でだがね」

「今日は7 月14 日、大会は3 日後だ」

「それまでに、僕らはGP 大阪で優勝できるだけのマシーンを組まなくちゃいけない」

そう言われ、ジスさんから、様々な説明を聞いていく

優勝・・・。

ミニ四駆の大会は、公認、非公認と出場したことはあるが、今回のレースは、非公認かつ、レギュレーションもないとのこと。レギュレーション無しという事は、公式のモーター以外も使用可能という事だ。

ゴールドチャンプ、闘魂、コブラどんなモーターでも使用可能。公式ではあるが、大会での使用規制のあるプラズマダッシュも使える。

しかし、ただ速いマシーンを組めばいい訳ではない。当然、スピードを出すことは、そんなに難しいことではない。キットを買って、組んで、高性能のモーターを積めばいい。

ただし、スピードが出る分、安定感は下がり、簡単にコースアウトしてしまう。

そう考えていると、ハッ!とコースのことが浮かび、ジスさんに質問する。

「ジスさん、今回のコースって、確か、昔、ネットに書いていた、レーン無しのテクニカルコースじゃ・・・。」

そう言われて、ジスさんがカバンからパッドを取り出す。

「そう、今回のコースはこれさ」

そう言って見せられたコースは

むむむ・・・。

このコースは・・・。

やはり、レーン無し・・・。

「ジスさん、このコースってどう攻略するんですか・・・」

「エメたん、それは当然、インを走って相手より早く5 周するのさ」

「でもジスさん、ミニ四駆なんで、アウトしか取れなくないですか・・・?」

「レーンがないもんねぇ」とジスさん

お互い押し黙るが、さておき、マシーンを組む必要があることもあり、ジスさんと今から買いに行こうという話になった。向かう先は、大阪芸大から少し離れた千代田駅近くの西友西千代田店。ジスさんが住んでいたマンションの近くにある西友である。

西友店内ホビーショップのミニ四駆コーナーへ向かう。そこには、タミヤのミニ四駆がたくさん並んでおり、2013 年の私と、2022 年のジスさんは昔を思い出したように、どんなマシーンにするか!という話を試遊スペースで座りながら話し出した。

私も、そんなにのめり込んでやり続けていたわけではないので、最適なセッティングなどは言えたような立場ではないが、やはり、そこはダッシュレツゴー世代という事もあり、マシーンと言えば、マグナム、スーパーTZ シャーシにプラズマダッシュを載せ、先ずは走らせてみることに。

試遊スペースにあるコースで仮組みを終え、いざ走行テスト!!

スイッチを入れると、公式戦で使用可能なモーターとは明らかに異なる音が鳴り始める。

シャアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

手にもものすごい振動が伝わってきて、今にも走り出したいという俺四駆の気持ちが伝わってくる・・・。

これからお前を最速にしてやるからな!!

思いを込めて、俺四駆をコースへ送り出す!!

ジス「GO!!!!」

エメ「GO!!!!」

シャアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ものすごい勢いで走って行ったかと思うと、試遊コースに設置された2 連続の小ジャンプセクションから打ち出されるように俺四駆は西友の店内へ飛び出して行ってしまった!!!!!

西友店内を疾走するプラズママグナムをジスさんと二人で追いかけ、ようやく捕まえることに成功し、再度、試遊スペースへ戻ってくる。

プラズマダッシュ恐るべし・・・。

そこで、重量と安定感を持たせるために、スライドダンパーをフロントとリアに取り付け、大径アルミローラーと両サイドにはポール、中空シャフト、真鍮ピニオン、放熱フィン、ベアリングローラーを取り付け、速度と安定感を上げていく。また、フロントとリアステーには、ブレーキパッドを張り、バンクスルー出来るような構成を加えて行く。

以前、見たGP 大阪のコースにバンクは無かったものの、簡単なスロープセクションは存在するので、恐らくそこで何らかの役には立つだろうと考えたのだ。角度は緩めの角度に設定し、先端部分にはタミヤテープを張って滑りをよくする。

そして、再度、試遊スペースにて走行させてみる!!

するとどうだろう、やや、スピードの低下はあるものの、小ジャンプセクションで飛行した後、コースへ戻るようになった。

恐らく、ローラーやダンパーを装備したことにより、車体重量が全体的に上がったこともあるのだろう。

全てのレーサーは必ず、自分のマシーンを完成させると、こう思う事だろう。

完璧だ!俺のプラズママグナムにかなう奴なんているはずがない!

二人で顔を見合わせ、

「「優勝は貰った!!!!!」」

その日から、17 日までは、毎日、ジスさんと試遊スペースで走行テストを行ったり、食事に行ったり、府内の散策をした。

その際に、ジスさんとTS 現象の話をした。

これまでにもTS 現象は知られていたが、実際に自身が巻き込まれる事になるとは思っていなかったこと。

今回、私が2013 年へ戻った際にジスさんにTS したことを知らせることによって今回

の状態が発生しており、何としてでもTS したことを伝えないといけない理由でもあるということだった。

そんなこんなで、GP 大阪当日に!!

当日までにギヤ比も調整し、いよいよ会場へ!!

大阪芸大まではジスさんと向かい、GP 大阪の開催される4 号館近くの半地下スペースの近くまで来ると、ジスさんが歩みを止めて、私に伝えてくる。

「エメたん、私はここまでしか行けないから、ここから見守っているよ!」

その時に、この人たちが竹原社長と中田君だから、見たらすぐにわかるよと言われ、渡された紙がこの人相書きだ。

これで、会場へ行く準備は万全となった反面・・・

「さぁ!このTS でエメたんと話をするのはこれで最後さ」

「頑張るんだぜ!僕らでチューンしたそのプラズママグナムなら必ず優勝できるはず

さ!」

「ジスさん!!!」

そう、これでこの2022 年のジスさんとは最後なのだ!!!!!!!

「ありがとうございました!!!!」

うううう・・・。

涙が出そうだ

「大丈夫だ!2013 年にもジスカルドはいるし、2022 年になれば、私とも会える!」

「いつだって居るんだぜ!」

「いけ!レーサー・エメラルド!!行って!優勝してこい!!」

・・・・・・。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

お!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!」

私は駆け出していた!!!

そして、会場となっている、半地下スペースへ走り込んだ私の目にと見込んできたの

は!!!!!

金髪のジスカルドだあああああああああああああああああああああああ!!!!!!

お、おお、おおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!

ジスカルドからジスカルドへ!!!!!

し、幸せ過ぎる!!!!!

そして、おおおおおお!!!!!!こ、これが噂のGP 大阪の超テクニカルコース!!!

噂通りのダンボール製だ!!!!!

って!あれ!!!!!

ジスさんの書いてくれていた見取り図には無かったセクションが!!!!????

コースを反時計回りする際に、右上の部分から砂時計型にくびれた1台しかミニ四駆が通れないコースになってるじゃねぇかああああああああああ!!!!!!!!!!

超絶、興奮気味に縦ジャンプしていると、金髪のジスさんが話しかけてくる。

「え、参加の人?」

「あ!はい!!参加です!!」

「はい、わかりました。それじゃぁ、これで締め切ります。」

あれ!なんか、冷たい感じだなぁ!!!!!

いや、昔、初めて会った時のジスさんはこんな感じだったような・・・。

この私とは当然初対面だし、当然かと思いながら、落ち着いてあたりを見回してみると、何と、人相書き通りの袋を持った竹原社長とギターをもった中田さんが!!!!

それ以外に1名、メガネの男性が参加しており、私を含めて5 名の参加者がいるようだった。

私は、ミニ四駆を触っているジスさんに近づき、

「あの、香川県の泉さんですよね」

「え、僕のこと知ってるの?」

「はい!!ロボット新聞やアンディーメンテの大大大大ファンです!!」

「今日もそのために来ました!!!」

「うそおおお!!マジか!!え!何かゲームとかやったりしてるんですか?」

1999 年であれば、既に・・・・・。

「はい!アクセスやライジングスターが特に好きです!!!」

「えw、ライジングスター、もうプレイしてくれたの」

ジスさんが少し嬉しそうにしているぞ!!

「はい!アクセスも、送受信を繰り返すと出る、あの演出!!最高でした!!マジで初めて見た時は、感動しすぎて脇汗出まくりました!!」

そんな話をしていると、ジスさんの携帯電話から、アラームが鳴りだした。

「あっ」

「じゃあ、そろそろ時間になりましたので、大会始めたいと思います」

「参加者の人は名前を言った後にミニ四駆を見せてください」

「僕は主催の泉です。マシーンはスティンガーです。」

「じゃあ、次は社長から右回りで」

「竹原 肇です。マシーンはこれ。」

そう言いながら、スパイダーを見せる。

お!おお!!おおおおお!!!!!これが竹原社長!!!!!!!アンディーメンテ

旧体制時代のメンバー!!!後にも先にも、ここで見るのが初めてかもしれない。

じっくり見ておこう・・・。

そして、

「中田です。マシーンはエンペラー」

この人は知らないが、どうやら、ジスさんの大阪芸術大学の同期の方のようだ

そして、私の番が回ってきた!!!

「小﨑です。マシーンはマグナムです!」

コールをして、マシーンを見せる。

「それじゃあ、スタート位置についてくださーい」

各自、ミニ四駆にスイッチを入れていく。

モーター音を聞くに、ジスさんと竹原社長はどうやら公式モーターを使っているらしい音が聞こえるが、中田さんだけはマシーンから明らかに公式大会では使用できない系のモーター音がしている。

こ、こいつ・・・。やってる・・・。

いや、公式の規制はないので、全く問題ないのだが・・・。

そう思っていると、ジスさんが

「ちょっと、中田君、モーター変なの使ってるでしょ!」

「使ってる。これで全員のマシーンをぶち抜く」

「出たよ」

「まぁ、いいけど」

ジスさんがコースのスタート位置にマシーンを構えていく

竹原さんや中田さんもマシーンを構え、いよいよスタートのようだ!!!!!!!

私も、その中に混じり、ジスさんと共同で作り上げたプラズママグナムを構える!!!

「それじゃあ行くよ!」

「3」

「2」

「1」

「スタート!!!!」

全員のミニ四駆が一斉に走り出していく!

マンホール前からコースを反時計回りに5 周する流れだ

先ずは、第一コーナーを曲がるまでにマシーン同士が激しくぶつかりながら、カーブを曲がっていく。プラズママグナムはモーターは公式レース禁止のモーターではあるが、スタビライザーやステーのおかげで、安定して走っていく。しかし、異様なのは、中田さんのエンペラーだ。やたらと速い。

早々に砂時計ゾーンに入り、1台分しか通れないコースへ入って行った。その後、私のプラズママグナム、ジスさんのスティンガー、竹原社長のスパイダーと続く。

そんな中、1 車線ゾーンを抜けたエンペラーが右から左のコースへ抜けて行った後、直線からのカーブでコースから吹き飛んでいくのが見えた!!!!!!!

「うおおおお!!!俺のエンペラァー!!!!!!!!」

心の中で歓喜の声を上げるのも束の間、私のマシーンもかなりのスピードが出ているので、全く安心できない。しかも、右から左へ移る際は、1車線からフリーコースになり、壁へ激突するような格好でコーナーへ突入することもあり、コースアウトの危険度がかなり高くなっているのだ!!

そんな中、私のプラズママグナムが1 車線ゾーンを抜け、壁へと直進してく!!!!

踏ん張ってくれええええええ!!!

俺のプラズママグナムゥ!!!!!!!!!!ああああああああああああ!!!!!

心の祈りが通じたか、マグナムはぶつかりながらも、コースを回っていき、ものすごい勢いで、スタート地点を通り過ぎ、2 週目へ入って行った!!!!!!!

うおおおおおお!!!!!!!!これは貰ったぞ!!!!!!基本的に2 週目になっ

てスピードが載って来るに従い、コースアウトの危険性は高まってくるのだが、先ずは1 週、なんとか走り切り、最もヤバイライバルだったエンペラーもコースアウトしたからには、かなり優勝に期待が高まる!!!!

ジスさんのスティンガーと竹原社長のスパイダーともそれなりに差はある!

行ける!行けるぞ!!!

そんな思いが通じたのか、プラズママグナムは最終ラップに突入する!!

凄い!!行けるぞ!!

「ちょっと!あのマグナム早すぎだろw」

そう言っているのが横から聞こえてくる!!!

最後の1 車線ゾーンを抜け!カーブも曲がり切り!ホームストレートへ戻ってく

る!!!!!!!!!うおおおおおおお!!!!!!!!!!!

カッ跳べえええええええええ!!!!!!プラズマトルネェエエエエエエエエド

ォ!!!!!!!!!!!!!

そう叫んだが先か、プラズママグナムの車体がバウンドの後にフワリと浮き、私の立っているところへと突っ込んでくる!!!!!!

うっ!!!うわあああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああ

あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

マシーンが私の体にぶつかった瞬間、私の視界がどんどんと、白く包まれていく!!!

「エメたん!!!!」

後ろから声が聞こえて、振り返ると、ジスカルド1999 からは見えない位置に、ジスカルド2022 の姿が見える!!!!

「ジスさん!!!!」

「エメたん!!!2022 年で待っているぞ!!!!!」

そういって、ジスさんの姿が発光して消える!!

手を伸ばした瞬間、ジスさんからもらったロボット新聞が落ちてしまう!!

あっと思い、手を伸ばそうとしたが、間に合わないっ!!!!

私も!!消え・・る・・・。

ハッ!!!!!!

こ!ここは!!!!!

自転車の荷台の・・!!!!!

ジスさんの背中が目の前に

アッ!!!

「ジスさん!!!」

「どうしたのエメたん!?」

「ジ!ジスさん!!今、タイムスリップしてきました!!!!」

「え!どういう事!?」

「いや、今、一瞬の間に、タイムスリップして・・・。」

「嘘だよぉ!」

「いや、本当なんです!!」

「ジスさんの誕生日は9 月9 日ではなく、9 月19 日!」

「これならどうですが!!」

「え!?」

「えええええ!!!!!!!本当にタイムスリップしてきなの!!!!!!!!」

「そ!そうなんですぅうううううう!!!!」

「「ええええええええええええええええええ」」

3 か月後にカモメ旅行が迫っていたそんな春の出来事だった。


つづく

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