第20話 寺院

我々はさらに十数里進んでも人家の姿は見えず、空は次第に暗くなり、辺りは荒涼とした塞外の原野が広がっていた。途中で遭遇した怪しげな二人組のこともあり、心中は不安でいっぱいだった。その時、突然、驢馬の御者が喜びの声を上げて指さした。「あっちを見てください!」


指さした方向には、まばらな木々に覆われた小さな山があり、その山腹に古びた寺院が見えた。急いでその山へ向かい、山麓に驢車を止めた後、御者と私は山を登って寺院に宿を求めた。長い間、寺院の門を叩いたが、やっと中から老婦人の力強い声が聞こえてきた。「寺の門は開いているから、自分で押して入りなさい。」


門を開けて中に入ると、老婦人が出迎えてくれた。彼女は私たちを見て、疲れた顔に微笑みを浮かべ、「ここで一晩お休みください」と言った。


その時、遠くから馬の蹄の音が急に止んだ。若くて経験が浅い私には、その音が武侠小説に出てくる荒野の盗賊を思い起こさせ、一瞬身震いした。驢車の上から振り返ると、二人の騎馬客が近づいてきた。一人は四十代の中年男性、もう一人は三十代の壮年男性で、どちらも魁梧な体格をしており、腰には剣の鞘が見え隠れしていた。


「まさか、彼らが盗賊か…?」心配しながら見守っていると、突然、冷たい風が吹き抜け、二人の騎馬客は驢車の前に出て、こちらを振り返りながらも急ぎ去った。彼らの顔には驚きの表情が浮かんでいたが、すぐに馬を駆り、寒風と黄砂の中に消えていった。


私たちは寺院の中に入り、老婦人の指示に従って一晩の宿をとることにした。外の寒風と黄砂に比べれば、寺院の中は静かで穏やかだった。私は不安を胸に秘めつつも、この夜が無事に過ぎることを願った。

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