第2話 十万の黒衣の兵士

夕暮れの川辺には五、六隻の船が停泊していたが、その中でも特に目立つ船があった。新しい船で、その船上には奇妙な一団がいた。


船窓には竹のすだれが垂れ下がり、夕陽が船室に差し込んでいた。船室の中央には白髪の老婦人が座っており、右手にはドラゴンヘッドの杖を持ち、左手は袖の中に隠されていた。痩せこけた顔には無数の傷跡があり、片耳が欠け、片目を失っていたが、残った目からは鋭い光が放たれていた。


彼女の隣には二人の美しい少女がいた。一人は控えめで内気な雰囲気を持ち、もう一人は自信に満ち溢れた態度を取っていた。


その時、川の向こうから不気味な音が聞こえてきた。地鳴りのような重い音が次第に大きくなり、黒い影が現れた。それは十万の黒衣の兵士たちであった。彼らは整然とした隊列を組み、腰には光を放つ環首唐刀を装備していた。


「見てください、あの黒衣の兵士たち!彼らは何かの目的でここに来ているに違いありません」とフロリオが驚きの声を上げた。


「確かに…彼らの動きは異常だ。一旦動き出したら、片時も待たずに全てを破壊してしまうだろう」とシュリオも同意した。


黒衣の兵士たちが徐々に近づくにつれて、その威圧感は一層増していった。彼らの目には冷酷な光が宿り、全身からは冷気が漂っていた。


ビアンカ・フロレンティーナはその光景を見つめ、微かに笑みを浮かべた。「これは試練の時だ。モンターニャ・アルティスティカの力を見せる時が来たようだ」と静かに言った。


その言葉を聞いた少女たちは一斉に立ち上がり、魔法の杖を握りしめた。ビアンカは立ち上がると、その杖を高く掲げ、強力な魔法の力を呼び起こした。


「我々は決して屈しない!モンターニャ・アルティスティカの誇りを守るために!」と叫ぶと、彼女の体から光が放たれ、周囲の空気が震えた。


黒衣の兵士たちは一瞬立ち止まったが、その後一斉に突撃を始めた。大地が震え、空が暗くなり、戦いの幕が開けた。


ビアンカはその場に立ち、冷静な目で敵を見据えた。「我が弟子たちよ、恐れることはない。私たちの力を信じ、共に戦おう」と言い放ち、魔法の力を全開にした。


少女たちはその言葉に勇気を得て、一斉に魔法を放ち始めた。火の玉が空を飛び、水の刃が敵を切り裂き、風の槍が敵を貫いた。黒衣の兵士たちも容赦なく攻撃を仕掛けてきたが、ビアンカとその弟子たちは一歩も引かず、互いに力を合わせて戦った。


戦いは激しさを増し、どちらが勝つか予測もつかない状況となった。しかし、ビアンカの冷静な指揮と弟子たちの結束力が次第に勝利を引き寄せていった。


最後には、黒衣の兵士たちは次々と倒れ、戦いはビアンカたちの勝利で幕を閉じた。モンターニャ・アルティスティカの力と誇りが再び証明された瞬間であった。

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