5_20170614執筆分
「あ、来た」
背後から声がしたので振り向いてみる。
あの女の子だ。マンホールに入った時の。
いつの間に先回りしたのだろう。
その疑問を口にするより前に、僕を咎めるように拗ねた口調でその子が言う。
「友達、探してくれなかったの?」
ぎくりとして、僕は咄嗟に、「探したよ」と答えた。
「でも、見つからなかったんだ」
「うそばっかり。忘れてたくせに」
お見通しらしい。実際、マンホールの長い梯子を降りている途中あたりから、
この子の言う「友達」、おそらくは僕の探している彼女の妹――を探すことなど、
すっかり忘れてしまっていた。
どうも、少し前からひどく忘れっぽくなっている気がする。
少し前に考えていたことが、すぐに記憶から雲散霧消してしまう。
今度こそ探すよ、と僕は、少女の信頼を取り戻すために、小指を差し出しながら言った。
「この指なに? はりせんぼん?」
「飲むよ。嘘をついたら」
「きっとだよ。約束だよ」
「ああ。それじゃ、一緒にお友達を探そうか」
僕は少女の手を繋いで、当てもなく歩き出した。
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